日常生活において「導電率とは何ですか?」と人から聞かれることや、導電率の話が話題になることはまずないと思います。また、導電率の難しい理論や研究について書かれた専門家のための書物はたくさんありますが、一般向けに書かれた導電率の書物はほとんどないと言ってもいいのではないでしょうか。HORIBAではコンパクト導電率計LAQUAtwinの発売に当たり、一般の方々にこそ導電率計について理解し、利用していただきたいと考え、導電率についての基礎知識をできるだけわかりやすくまとめてみました。これをきっかけに、より深く電気化学を勉強したり、コンパクト導電率計を私たちが今まで考えもつかなかった分野に利用していただければ幸いです。
なおSI単位系の導入により、S/㎝からS/mに単位表記が一般化され、正式名称も「電気伝導率(electric conductivity)」に統一されました。ただし、実社会では今でもなじみのある導電率という名称、およびS/㎝という単位表記も広く使われています。
導電率とはpHと並び、水溶液の性質を知るための重要な指標です。
導電率とは液体中での電気の流れやすさを示す指標です。液体、特に水には種々の物質を溶かす性質がありますが、多くの場合、物質が溶け込むと電気が流れやすくなります。ですから簡単に言えば、導電率とは液体中にどれくらいの物質が溶け込んでいるか(イオン化しているか)を示す指標と言えます。
(注)ただし、砂糖など水に溶けてもイオン化しない物質もあり、その場合は溶液の導電率はあまり変化しません。
私たちの身のまわりの液体として、最も身近に天然に存在する水を例に取ると、塩分がたくさん溶解している海水では、導電率は非常に高くなります。一方で、雨水、河川水、湖水などは本来溶解しているものが少ない水であるため、導電率は非常に低くなります。これら導電率の低い水が汚染されると導電率が上昇することから、導電率は雨水、河川水、湖水に対する汚染の指標にもなっています。
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