企業の成果向上を図るために、データ分析の実施を検討している方は多いのではないでしょうか。データ分析を活用すれば、それぞれの顧客に最適化したマーケティング施策が可能です。しかし、どのようにデータ分析を実施すればよいのか、わからない方も多いかもしれません。
そこで本記事では、データ分析の実施の流れやメリット、成功に導くためのポイントを解説します。データ分析の方法を知りたい方や、企業でデータ分析チームを作って本格的に実施したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
データ分析とは収集した情報を整理・加工・統合し分析すること
データ分析とは、収集した情報を整理・加工・統合した後に、分析することです。データ分析を活用すれば、根拠が不確かな経営層の勘や経験に頼らずに、合理的な意思決定を可能にします。
スマートフォンやインターネットの普及により、消費者の情報収集の方法や、商品やサービスの購入方法が多様化しています。経営層の勘や経験に頼った判断では、多様化する消費者の価値に合わせたマーケティングの実施は難しいのが現状です。データ分析は、消費者1人ひとりのニーズを満たした施策の実行を可能にします。分析で得られた結果をもとに、合理的な意思決定を下せば、変化の激しい消費者のニーズにも対応できます。
データ分析を行う企業は増えており、今まで収集できなかったデータも活用して、マーケティングに活かされています。時代の変化に対応しながらビジネスの成長を続けるには、データ分析を活用した意思決定がポイントになるでしょう。
ビジネスに活用される代表的な4つのデータ
ビジネスにおけるデータ分析で活用される代表的なデータは、以下の4つです。
- POSデータ
- 行動データ
- 位置データ
- 属性データ
POSデータ
POSデータは、POSシステムで収集できる店舗での顧客の来店や購入に関するデータです。POSシステムは、POSデータを店舗で収集し、管理できるシステムの総称です。POSシステムで収集できるデータには、以下のようなものがあります。
- 購入された商品名
- 個数
- 値段
- 日時
- 店舗
- 購入した顧客の性別
- 年齢層
POSデータの活用方法には、仕込み量や仕入れ量の最適化や売上予測、キャンペーン時期や内容の検討などがあります。過去の売上実績をもとに、仕込み量や仕入れ量の最適化を行えば、過剰在庫や廃棄する食材の削減が可能です。特定の期間での売上予測が可能になり、人材の配置も最適化できます。
また、売上が下がる時期が把握できれば、キャンペーンを行う効果的な時期も検討しやすくなります。
行動データ
行動データは、顧客のさまざまな行動をデータ化したものです。Web上での閲覧履歴や検索履歴、購入履歴などのデータを指します。行動データは、「アクセスログ」とも呼ばれ、Webマーケティングの最適化に役立つデータです。例えば、Web広告のターゲティング(誰に向けて広告を配信するか)に活用できます。
Webマーケティングの最適化には、行動データを用いた顧客行動の可視化が有効です。顧客行動の可視化によって、商品やサービスの購入プロセスが把握できれば、最適なタイミングで顧客に合ったアプローチができます。また、行動データをもとに、マーケティング施策の評価や改善もできます。
位置データ
位置データは、スマートフォンやタブレットなどから取得されるユーザーの位置がデータ化されたものです。位置データを可視化すれば、対象のエリアにどのような年齢層や性別の人が訪れているのか、どこからどこに向かって移動しているのかなどを把握できます。
新規店舗出店やエリアマーケティング(店舗がどのエリアのどのような人物をターゲットとしているのか)の判断材料として役立つデータです。また、位置データは、商業施設や駅のデジタルサイネージ広告にも活用できます。位置データをもとに、デジタルサイネージの周辺に集まった人の情報を収集して、広告効果の検証が可能です。
属性データ
属性データは、ユーザーの特性に関する情報をデータ化したものです。具体的には以下のようなものです。
- 性別
- 年齢
- 家族構成
- 世帯年収
- 職業
分析すれば、商品やサービスを利用している顧客層が把握できます。これにより、マーケティングで設定した顧客層に対して適切にアプローチできたのか確認でき、施策の評価と改善が可能です。
また、ターゲットに設定している顧客層が訪問している場所も確認できます。例えば、ターゲットが10〜20代の女性であれば、属性データを用いて一番訪問しているSNSを特定します。同じ年齢・性別の人がよく使用するSNSを特定できるとマーケティング施策が検討しやすくなり、施策効果の向上や広告費の削減が可能です。属性データは、新規顧客開拓のためのマーケティング施策の材料にもなり、重要な役割を果たします。
データ分析を行う4つのメリット
データ分析を行えば、自社の事業活動において以下のメリットが得られます。
- 数値に基づいた意思決定が可能になる
- スピーディーな経営判断ができる
- 今まで気が付かなかった発見ができる
- 顧客一人ひとりに合わせたマーケティングを展開できる
データ分析を自社に導入するイメージが沸かない方は、ぜひ参考にしてください。この章では、
それぞれについて詳しく解説します。
数値に基づいた意思決定が可能になる
データ分析を活用すれば、データに基づいた根拠のある意思決定が可能です。今までは、経営層の勘や経験をもとに意思決定を行う場合が多くありました。しかしデータ分析では、経営層の勘や経験といった個人の主観が入ったものではなく、データをもとに高い精度で現状分析や将来予測が可能です。
またデータドリブンは、人の勘や経験、度胸に頼りきらずに、データの分析結果を根拠とした意思決定や施策立案を行う業務プロセスを指す言葉です。人の勘や経験、度胸をもとにした意思決定は、経営を不安定にする恐れがありますが、データドリブンな意思決定を行いながら組織を牽引すれば、状況に応じた適切な行動が取れます。企業として多様化する消費者のニーズを満たすには、信頼できるデータをもとにした意思決定が重要です。
スピーディーな経営判断ができる
経営判断の根拠になるデータ分析から導き出された結果は、経営判断をより早く的確なものにします。迅速な経営判断は、ビジネスを成功に導くための重要なポイントです。市場の移り変わりが早い現代では、企業にはより早く適切な経営判断が求められます。意思決定に時間がかかれば、ビジネスの機会損失を招く恐れがあり、事業継続にも影響を及ぼします。
経営層の勘や経験に基づく経営判断では、根拠が曖昧な場合が多く、ほかの経営陣への説明に時間が必要です。データ分析として市場の動向やリアルタイムの売上、トレンドなどを分析すれば、客観的で信頼性の高い情報が得られます。信頼できるデータは、経営判断の明確な根拠になり、行動の早さにもつながるでしょう。
今まで気が付かなかった発見ができる
データ分析によって、新たなインサイト(購買行動のもととなる動機)を発見できます。さまざまな形式や場所で保管されているデータを収集、整理、分析して、データの因果関係や相関関係を導き出せるため、今まで気が付かなかった顧客行動に気づけます。
例えば、「A商品とB商品を一緒に購入している人が多い」「今まで需要が少ないと思っていた地域から、直近1年間でWebサイトへの訪問が増加している」などの情報が得られます。データ分析により得られた新たなインサイトは、今後のマーケティングを変える重要なポイントです。単体では意味をなさないデータであっても、社内外に散らばっているデータを統合すれば、価値のあるデータへと昇華できる可能性もあります。
顧客一人ひとりに合わせたマーケティングを展開できる
データ分析によって、One to Oneマーケティングの実現が可能です。One to Oneマーケティングは、顧客1人ひとりに合わせたマーケティングを意味する言葉です。社内で収集した顧客行動をもとに、特定の顧客の興味がある情報や商品、サービスを提案できます。
例えば、サービスのヘルプページへの訪問数が多い顧客は、「サービスの使い方がわからない」「現状導入しているサービスに不明点が多い」などの課題を抱えている可能性があります。適切なカスタマーサポートにつなげれば、顧客のサービスの継続率向上や有料サービスへのアップグレードが期待できるでしょう。One to Oneマーケティングでは、それぞれの顧客に合った適切なアプローチの選択が重要です。
データ分析の流れ【5STEP】
データ分析は、主に以下の5つの手順で実施します。
- 分析の目的を明確にする
- 仮説を立てて優先順位を決定する
- 分析方法を定義する
- データを収集する
- 分析を実施する
データ分析の流れを理解して、社内での実施に役立ててください。
STEP1 分析の目的を明確にする
データ分析ではじめに行うのは、目的の明確化です。データ分析を行った結果、どのような課題を解決したいのかなどの目的を明確にします。例として、新規事業の成功や顧客単価の最大化、売上の最大化などが挙げられます。
データ分析には、時間とコストが必要です。目的が曖昧なまま始めれば、かけた時間とコストが無駄になる可能性があります。目的を明確にしておくことは、時間とコストに見合った成果を得るための重要なポイントです。
STEP2 仮説を立てて優先順位を決定する
データ分析の目的が決まった後は、目的を達成するための仮説を立てましょう。例えば、売上の最大化が目的であれば、売上が十分に増えていないのが課題です。売上増加を妨げているのは「サービスAの売上減少」「期間限定で販売した商品Bの販売終了」であるなどと仮説を立てます。
仮説は複数になる場合が多く、すべてを検証するには膨大な時間や労力がかかるため、現実的ではありません。複数の仮説の中から優先順位をつければ、施策の打ち手を絞れます。
STEP3 分析方法を定義する
仮説を検証するための分析方法を決定します。検証には、どのようなデータをどれくらい集める必要があるか整理しなければなりません。主に以下の4つを明確に定義しておきましょう。
- 収集するデータの種類
- データの量と収集期間
- データの収集方法
- データの分析方法
分析方法は、設定した目的や優先順位をつけた仮説によって変わります。目的に合わせた適切な分析方法を選択しましょう。分析方法を決定する際には、仮説の検証に必要なデータは何かを洗い出し、抜け漏れなくきちんと整理するのがポイントです。
STEP4 データを収集する
決定した分析方法に使うデータを収集します。必要なデータはさまざまですが、場合によっては、第三者から提供されるサードパーティーデータが必要です。サードパーティーデータは、自社や自社が運営する事業と直接関係のないところで集計されています。
例えば、収集を専門とした企業から提供されたデータや、自治体や国が調査・公開しているデータが挙げられます。データ収集は、鮮度(情報の新しさ)や質にこだわって行うのがポイントです。
STEP5 分析を実施する
データ収集の後は、事前に決めた方法を用いて、分析を行います。仮説の検証を適切に行うために、分析方法を定義する段階で、目的にあった方法を選ぶことが大切です。
分析方法によっては、専門知識を持った業者や専門家のサポートが必要な場合があります。自社で分析を行いたい場合や専門家への依頼が難しい場合は、BIツールを活用すると便利です。BIツールは、データの収集と分析、見える化を行い、意思決定をサポートするツールです。
データ分析を成功に導く2つのポイント
データ分析を成功させるには、データ分析に知見がある人材のサポートを受けることや、分析結果を課題解決に向けた施策に活かすことが大切です。以下の解説を参考にして、データ分析を企業の成果向上に役立てましょう。
知見がある人材を確保する
データ分析は、知見がある人材のサポートがあれば、成功する可能性が上がります。データ分析には、分析結果をイメージして、必要なデータ収集やデータ同士の掛け合わせを検討することが重要です。社内に知見がある人材がいないことを理由に手探りで分析を行うと、誤った結論や打ち手を出してしまう恐れがあります。データ分析を行う際には、知見がある人材の採用や外部の専門家への依頼を検討しましょう。
また、データ分析を終えた後には、分析結果を施策に活かす必要があります。分析結果の活用に長けた人材の確保ができれば、データ分析を成功させる可能性がより高まるでしょう。
分析で終わらず施策につなげる
データ分析は、分析結果を施策につなげるまでが重要です。分析までで終わってしまえば、分析結果が活かされることなく、課題解決につながりません。データ分析によって課題を把握してから、解決に導く施策につなげるまでが重要な動きであると意識しましょう。
分析結果を施策に活用する際には、専門性を問わず複数人を巻き込むことも重要です。必要な時間と労力を分担でき、作業を効率化できます。人材採用や外部への依頼を考えると、専門家でなくてもデータを理解・活用できるBIツールを積極的に活用する方法がおすすめです。
明確な目的を持ってデータ分析を実行しよう
現代では、テクノロジーの発展によって膨大なデータを収集できるようになりました。時代に対応し、ビジネスを加速させるには、経営判断にデータを活用することが求められます。データ分析を実施する際には、必要な情報が得られるように、何を目的として、どのような課題を解決するためにデータ分析を行うのかを明確にすることが大切です。鮮度がよく質の高いデータを収集し、目的に合った適切な方法で分析を始めましょう。また、データ分析に知見がある人材の確保も大切なポイントです。社内に知見がある人材がいない場合は、積極的に外部の専門家に依頼するとよいでしょう。
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