近年のマーケティング業界は、個人情報保護の意識が強まり、サードパーティーデータの規制がより厳格になりつつあります。このような環境下では、顧客との直接的な接点のなかで情報を取得する、ファーストパーティーデータの重要性が高まっています。
しかし、いざマーケティングにファーストパーティーデータを活用しようにも、「取得データが膨大で分析に手間がかかる」「利用中のシステムが多くて情報を拾い切れない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回ご紹介するCDP(Customer Data Platform)が効果を発揮します。
CDPは、社内にある複数のシステムから顧客情報を集約できるため、データを抽出するために外部システムへとアクセスしたり、データ連携のためのシステムを開発したりする必要がありません。また、整形・加工したデータを別の分析ツールに出力できるので、顧客の課題やニーズを特定する際にも役立ちます。
本記事では、CDPの仕組みやメリット・デメリット、導入時の注意点を解説します。本記事を読めば、よりスムーズなデータ連携により、マーケティング活動のパフォーマンス向上につながります。
CDPとは顧客のデータを収集・分析できるプラットフォーム
CDP(Customer Data Platform)とは、複数のシステムに散在する顧客情報を1ヶ所に集約し、データ加工やセグメント作成などを行うためのプラットフォームです。
CDPは、顧客属性や行動履歴など、顧客との直接的なコミュニケーションで取得した情報を収集できます。このような情報を「ファーストパーティーデータ」といいます。ファーストパーティーデータは、複数のシステムに保管されているケースも多く、データの抽出や加工を行うには、それぞれのデータベースにアクセスしなければなりません。
その点、CDPを活用すれば、受注管理システムやECカート、アクセス解析ツールといった幅広いシステムと連携できるため、スムーズなデータ収集が可能です。さらに、収集したデータをCDP内で統合・加工し、MAやBIツールなどへ出力できます。
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このように、顧客に関するあらゆる情報を一元管理し、よりスムーズなマーケティング活動を実現できるのがCDPのメリットです。CDPを導入すれば、煩雑なデータ管理の負担が緩和されるほか、分析データの活用によって効果的な施策の実行につながります。
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CDPの具体的な使用法3選
CDPには、顧客情報の収集・統合・分析という3つの機能が搭載されています。こうした機能を活用すれば、複数のシステムから集めた顧客情報をセグメントに分け、より詳細なターゲティングデータを構築できます。
CDPの具体的な活用方法をイメージするためにも、各機能の特徴を押さえましょう。
顧客情報を収集
社内に散在するさまざまな顧客情報を、1つのシステムに集約する機能です。対応する外部システムであれば、APIを使ってスムーズに連携できるため、スクラッチ開発のコストや工数を最小限に抑えられます。
CDPで収集できる顧客情報には、次のような種類があります。
- 属性データ:
- 氏名や担当者名、所属部署
- 居住地や会社の所在地
- 電話番号やメールアドレスなどの連絡先
- 行動履歴データ:
- 商品やサービスの購入履歴
- Webサイトの訪問・閲覧履歴
- メールやSNSでのコミュニケーション履歴
- アンケートの回答履歴
- 問い合わせや資料請求、ホワイトペーパーダウンロードなどの行動履歴
また、CDPによっては、テキスト・画像などの非構造化データや実店舗のPOSデータを取得できるものもあります。
収集できるデータの種別は、連携可能なシステムの種類によって異なります。そのため、CDPの各製品を比較し、どのようなシステムと連携できるのかを確認することが大切です。CDPと連携できる代表的なシステムには、基幹システムや受注管理システム、CRMツール、広告統合管理ツールなどの種類があります。
顧客情報を統合
収集した顧客情報を統合し、一元管理できるのもCDPの特徴です。
具体的には、顧客の属性データや行動履歴データを1つのIDに紐付けて、顧客ごとにプロファイル(顧客一人ひとりの詳細情報)を作成できます。さらに、類似のプロファイル同士をセグメントに分類できるため、それぞれの顧客の関係性や相関性が一目でわかります。
CDPを活用せずに顧客情報を統合する場合、スクラッチ開発でいちからシステムを構築したり、エクセルで複雑な数式を組み上げたりと、膨大な工数が必要です。一方のCDPは、データテーブルの自動作成や統合データの自動計算などの機能を活用することで、システム開発にかける工数を大幅に短縮できます。
顧客情報を分析
ほとんどのCDPは、単独で顧客情報を分析できる機能はありませんが、API連携を活用して機能を拡張できます。データ分析機能を搭載したMAやBIツールなどと連携すれば、CDPで統合した顧客情報を出力し、精度の高い顧客分析を行えます。
代表的な顧客分析手法は次の通りです。
- デシル分析:
商品やサービスの購入金額に応じて、顧客を10種類のパターンに分類する手法。売上に対する貢献度によって、柔軟に施策を使い分けたい場合に効果的。 - RFM分析:
直近の購入日や購入頻度、購入総額の3つの指標で顧客を分類する手法。優良顧客や顧客の購買力を正確に分析できるのが特徴。 - コホート分析:
属性データや行動履歴データをもとに、顧客をコホート(条件が類似するグループ)に分ける手法。顧客同士の相関性にもとづいて適正な施策を実施できる。
そのほか顧客分析に関する記事もございますので、よろしければそちらもご参考ください。
ここまでにお伝えした3つの機能を見れば、CDPはあくまでデータを集積するためのプラットフォームであることがわかります。
基盤となる顧客情報を取得するほか、その情報を分析して有効活用するには、外部システムとの連携が必須です。そのため、特にCDPは、システム連携の種類や数が重要な要素となります。
CDP導入による2つのメリット
CDPを導入するメリットは次の通りです。
- 顧客情報を一元化して作業効率のアップ
- 顧客一人ひとりに対応できる
あらかじめ導入メリットを意識しておくと、目標の策定や費用対効果の検証を行いやすくなります。
顧客情報を一元化して作業効率のアップ
本来、効果的なマーケティング施策を立案できるように顧客情報を加工するには、膨大な手間と時間がかかります。特に、顧客の行動履歴データを収集する場合、アクセス解析ツールや広告統合管理ツールなど、さまざまなシステムから情報を抽出しなければなりません。
一方、CDPを活用すれば、顧客情報の収集・統合にかかる手間や時間を大幅に削減できます。
例えば、CDPのなかには、Webサイト上に計測タグを設置するだけでアクセスデータを集計できるものがあります。さらに、SQL言語を記述する必要がなく、簡単な操作のみでデータの統合や加工ができるCDPも存在します。
複数の外部システムを行き来せずとも、ワンストップでデータ収集・統合業務を完結できるのがCDPのメリットです。
顧客一人ひとりに対応できる
CDPを導入すると、顧客一人ひとりの詳細なプロファイルを作成できます。個別のIDに氏名や性別、年齢、連絡先、行動パターンといった事細かな情報が登録されるため、顧客の課題やニーズを明確にできるのがメリットです。
さらにCDPでは、外部システムにデータを出力し、高度な顧客分析を行えます。CDPで作成したプロファイルをもとにデータを解析し、適切なセグメント設定や仮説検証を実施することで、より効果的なアクションプランを策定できるでしょう。
CDP導入によるデメリット
CDP導入によって発生するデメリットは、情報セキュリティの問題です。
幅広い顧客情報を取り扱うCDPでは、サイバー攻撃やヒューマンエラーによる情報流出リスクと常に隣り合わせだといえます。ひとたび顧客の個人情報が流出すれば、企業のイメージが失墜してしまう可能性があります。
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最近では、高度なセキュリティ対策を施したCDPが増えていますが、ツールの導入前にその内容を確認しておきましょう。二段階認証やアクセスログの監視機能、権限設定など、セキュリティ対策に注力しているCDPを選ぶことが大切です。
また、利用者の過失や油断によって情報が流出しないよう、事前に対応策を検討するのも良いでしょう。情報セキュリティに関するセミナーや勉強会を開催するほか、安全に利用するためのマニュアルを整備する方法が効果的です。
CDPとDMPの違いは収集方法
CDPには、「DMP(Data Management Platform)」というよく似た言葉が存在します。DMPもCDPと同様、複数の外部システムから情報を収集・統合できるため、いずれも同じような役割を持ちます。
DMPの基本を知ろう!種類からメリット、導入方法までわかりやすく解説
DMPには2つの種類があり、「プライベートDMP」と「パブリックDMP」に分かれます。
そのうちプライベートDMPは、自社によって取得した顧客の属性データや行動履歴データを集約できるのが特徴です。顧客に関するファーストパーティーデータを収集できることから、CDPとプライベートDMPはほとんど同じツールとして認識されています。
CDPと大きな違いがあるのは、パブリックDMPです。
CDP | パブリックDMP | |
---|---|---|
活用シーン | マーケティング活動全般 | 広告配信の最適化に特化 |
対応可能なデータ種別 | ファーストパーティーデータ | サードパーティーデータ |
データの取得方法 | 自社と顧客との間で行われるコミュニケーションによって情報を取得 | 第三者がCookieやIPアドレスを通じて情報を取得 |
設計思想 | プロファイル作成がメイン | セグメンテーションがメイン |
パブリックDMPは、顧客に関するサードパーティーデータを収集できる点に特徴があります。サードパーティーデータは、自社やパートナー企業ではなく、第三者が一般公開しているデータです。例えば、データ収集会社が取り扱う、CookieやIPアドレスなどを通じて取得した消費者の行動データは、サードパーティーデータにあたります。
近年は、個人のプライバシー保護の観点から、サードパーティーデータの取得に関する規制が厳しくなっています。そのため、サードパーティーデータを頼りに広告配信の最適化をはかるよりも、ファーストパーティーデータを最大限に活用し、全般的なマーケティング活動を強化するほうが時代の流れに即すといえるでしょう。
CDPを導入する理由は時代の変化に合わせるため
少子高齢化や競争の激化、広告単価の上昇といったさまざまな要因が重なり、新規顧客の獲得がますます難しくなる昨今。このような環境下で企業が持続的な成長を果たすには、既存顧客との関係を見直すことが重要です。
CDPは、サードパーティーデータのような匿名情報ではなく、特定個人の顧客に紐付いたデータを活用できます。おのずと顧客一人ひとりの課題やニーズを特定しやすくなるため、CDPは既存顧客との良好な関係を築くうえで重要な役割を担っています。
また、企業におけるSaaSの活用シーンが増えたことも、CDPの重要性が高まっている理由の一つです。
顧客情報を取得できるシステムの種類が増えるとともに、社内にさまざまな情報が散乱するケースも珍しくありません。システム間のスムーズなデータ連携ができず、情報がサイロ化すれば、マーケティング活動のパフォーマンスが低下してしまいます。このような組織では特に、一元的なデータ連携を可能にするCDPの仕組みが必要です。
CDP導入で気をつけるべき2つの注意点
CDPを導入する際は、いくつか注意すべきポイントがあります。以下の注意点を意識することで、よりスムーズに導入準備を進められるでしょう。
- リソースの確保
- 外部システムとの連携
リソースの確保
CDPのスムーズな運用を心がけるにあたり、ツールの導入前に十分なリソースを確保することが大切です。
実際にCDPを活用しようと思えば、データの統合や分析にある程度の手間や時間を要します。また、管理責任者や担当者には、連携するシステムの体系的な知識や、データを有効な状態へと加工する技術が求められます。そのため、CDPを使いこなすための時間や人材を確保しなければなりません。
CDPを導入する際は、専門のプロジェクトチームを発足すると良いでしょう。
営業・マーケティング部門だけではなく、経営企画や情報システム、カスタマーサポートなどから必要人員を登用し、部門横断的な協力体制を整えるのが適切です。専門分野の知見やノウハウを持つ人材を登用すれば、適材適所の環境下でCDPをより有効活用できるでしょう。
外部システムとの連携
CDPは、複数のシステムから顧客情報を集約し、整形・加工したデータをさらに別のシステムへと引き継ぐハブのような役割を担います。そのため、データの入力面と出力面において外部システムとの連携が必須
導入したCDPが自社のシステムに対応していないといった失敗を避けられるよう、事前に次のポイントを検討すると良いでしょう。
- CDPへとデータを入力するシステムの種類
- CDPからデータを出力するシステムの種類
- CDPの各製品の連携可能範囲
- データ連携に必要な知識・技術(プログラミングやコーディングなど)
CDPで顧客ニーズを把握してマーケティング施策を実施しよう
CDPは、顧客一人ひとりの課題やニーズを分析するために欠かせないツールの一つです。
CDPを導入すれば、社内に散在した膨大な顧客情報を集約し、データ分析のベースとなるプロファイルやセグメントを作成できます。さらにMAやBIツールなどの連携により、詳細な顧客分析ができるため、マーケティングのパフォーマンスを向上させる、精度の高いアクションプランの策定につながります。
CDPの導入を検討しているものの、「社内にデータ分析ができる人材がいない」「ツールを有効活用できるか不安」といったように悩んでいる方は、電算システムにご相談ください。電算システムでは、データサイエンティストやデータエンジニアなどのスキルを持つ担当者が、データ基盤の構築やシステム開発をサポートします。
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