病気に強い新種のバナナ、イエロウェイ・ワン。
Chiquita
- 研究者たちがイエロウェイ・ワンと呼ばれる、病気に強い新種のバナナを開発した。
- イエロウェイの研究者が使ったのは在来型の品種改良技術であり、遺伝子組み換えではない。
- イエロウェイ・イニシアチブは、苦境にあるバナナ市場の改善を目指している。
オランダは、バナナの栽培地としては意外に思えるかもしれない。だがそこが、研究者たちが新たな品種、イエロウェイ・ワン(Yelloway One)を生み出した場所だ。
イエロウェイ・ワンは、食料品店で見かけるバナナに似てはいるがそれとは違うものだ。世界中でバナナを壊滅させている2つの病気に耐性を持つ世界初の食用バナナで、未来のバナナの栽培と消費を変える可能性がある。
2020年、果物のグローバル企業、チキータ(Chiquita)が、キージーン(KeyGene)、ムサラディックス(MusaRadix)、ワーゲニンゲン大学(Wageningen University & Research)と提携し、イエロウェイ・イニシアチブ(Yelloway Initiative)を立ち上げた。バナナ業界を悩ませる、ある問題を解決することが目的だ。
キャベンディッシュ(Cavendish)は、最も広範囲に輸出されているバナナで、おそらくあなたの台所にもある品種だが、これが困ったことになっている。致命的な真菌による病気で、このバナナは絶滅の危機に瀕しているのだ。
研究者はイエロウェイ・ワンが、こうした病気に強く、なおかつ、おいしいバナナが見つかるきっかけになることを期待している。
「キャベンディッシュの代わりになろうとは思っていない」とチキータのサステナビリティー担当部長のピーター・ステッドマン(Peter Stedman)はBusiness Insiderに語った。
「だが、そうすることもできるという証拠であり、もうすぐそこへ到達できるという証拠でもある」
より良いバナナの構成要素を見つける
キャベンディッシュが困難に陥っているのは、種がなく自力では繁殖することができないせいでもある。
Chiquita
イエロウェイのプロジェクトは、在来型の品種改良技術(遺伝子組み換えではない)を使って、新種のバナナを作った。
その過程で大変だったのは、キャベンディッシュには種がなく、他の強い品種と単純に掛け合わせることはできないということだった。
代わりに研究者たちは、キャベンディッシュの味と丈夫さに合うような別のバナナを探している。
イエロウェイは150種類のバナナのDNAを研究して、家系図のようなものを作成しているとキージーンのバナナ品種改良プログラムのトップ、フェルナンド・ガルシア-バスティダス(Fernando García-Bastidas)はBusiness Insiderに語った。
研究者たちは未来のバナナを、気づかれないほどにキャベンディッシュに近づけたいと思っている。
Chiquita
バナナの耐病性、色、収穫高その他の特徴についての情報をレゴ(Lego)のように使ったとガルシア-バスティダスは述べた。
「特定のバナナのタイプを再現または改善するのに必要なブロックを見つけることができる」と彼は述べている。
遺伝子解析を用いて、イエロウェイ・ワンとかけ合わせることができるキャベンディッシュの近縁種も探している。
バナナを栽培している国は、立ち枯れ病を広めないよう、注意しなければならない。
Jeffrey Greenberg/Universal Images Group via Getty Images
イエロウェイ・ワンは花が咲き、バナナが実るようになってきてはいるが、まだ、店先に並ぶ準備はできていない。
次のステップは、病気の蔓延している土地でいかに育つことができるかのテストだ。研究者らがイエロウェイ・ワンを栽培することになるのは、フィリピンとインドネシアだが、そこはトロピカル・レース4(TR4)と呼ばれる真菌が、バナナの木を減らしている場所だ。
歴史が三度繰り返されないために
真菌に襲われたバナナ農園。コロンビア、リオアチャ。
AP Photo/Manuel Rueda
キャベンディッシュが世界で最も食べられるようになったのは、20世紀後半に入ってからのことに過ぎない。それ以前は、グロスミッチェル(Gros Michel)種がトップに君臨していた。
だが1950年代になると、トロピカル・レース1(TR1)と呼ばれる真菌が、グロスミッチェルを絶滅させた。キャベンディッシュはTR1に強く、栽培者の新たな主力品種となった。
TR4が広まっている今、栽培者と科学者は1種のみに頼るという、同じ過ちを再び繰り返したくはない。
それがイエロウェイが他のバナナの品種改良にも関与している理由だ。
「ただキャベンディッシュを改良しようとしているだけではない」とステッドマンは述べた。
「強さとともに種の多様性を生み出そうという試みだ」
バナナを枯らす菌を研究しているマサチューセッツ大学アマースト校(University of Massachusetts Amherst)の生化学教授、イジュン・マ(Li-Jun Ma)も、1種のみに頼るべきではないという意見に同意している。
「市場の多様性を高める方法を探さなければならない」とマ教授はBusiness Insiderに語った。
イエロウェイの研究者たちは最終的に、店舗に複数の品種のバナナが並ぶ未来を思い描いている。キャベンディッシュが棚に並ぶ店もまだあるだろうが、選択肢はそれだけではなくなるだろう。