「ラディアン・ワン」の完成イメージ。
Radian
- 「スペースプレーン」が現実のものになるかもしれない。
- ラディアン・エアロスペースは、今後数年のうちに同社のスペースプレーン「ラディアン・ワン」をテストする。
- これは複数のステージで構成されるコストの高いロケットとは異なり、宇宙旅行の安価な選択肢になる可能性がある。
アメリカ航空宇宙局(NASA)が取り組んでいた、人間や小型の荷物を低コストで宇宙に運び、再利用ができる「スペースプレーン」を製造するという計画を復活させようとしている企業がある。
NASAは1990年代にスペースプレーン(打ち上げ設備を必要とせず、自力で滑走し離着陸できる)のプロトタイプ「X-33」の開発を検討したが、技術的な問題から2001年にその計画を中止した。
それを、シアトルに拠点を置くラディアン・エアロスペース(Radian Aerospace)が、「ラディアン・ワン(Radian One)」によって完了させようとしている。ラディアン・ワンは、100回再利用でき、最大5人の宇宙飛行士を一度に運ぶことができるスペースプレーンとして開発が進められている。
NASAでX-33のプログラムマネージャーを務めていたリビングストン・ホルダー(Livingston Holder)が、現在ラディアン・エアロスペースのCTO(最高技術責任者)を務め、この取り組みを監督している。
ホルダーはCNNに対し、2001年以降に状況が変化したことで、スペースプレーンの開発がより現実的な目標になったと語っている。
「以前よりも軽く、丈夫で、広範な温度変化に耐えられる複合材料が手に入るようになった。燃焼効率が向上し、システムが軽量化したことで、これまでにない推進力を実現している」
同社はラディアン・ワンを製造するために2022年に2800万ドル(約40億円)近くを調達し、2024年にはスケールモデルのテストを行う予定だという。
なぜスペースプレーンが必要なのか
NASAが提案していたスペースプレーン「X-33」。
NASA
衛星は気象予報やGPSなどを実現するのに欠かせない技術であり、そのようなものを宇宙に打ち上げる需要はますます高まっている。打ち上げに最適な方法は、依然としてロケットではあるが、NASAによるとロケットは「極めて非効率で高コスト」だという。
一般的なロケットは複数のステージで構成されているため製造コストが高く、1回使っただけで廃棄されることも多い。
スペースX(SpaceX)などの企業はロケット技術を革新し、再利用可能な「ファルコン9」といったロケットを開発することでコストを削減してきた。
しかしスペースプレーンは、ロケットよりも燃料が少なくて済み、複数のステージも不要であるため、より安価で快適な宇宙旅行の手段となる。
ラディアン・ワンはいかにして低コストを実現するのか
ラディアン・ワンは3200mのレールをロケット動力のそりに引かれて離陸する。
Radian
垂直に発射するロケットとは異なり、ラディアン・ワンはロケット動力のそりを使用して離陸する。
3200mのレールに沿ってそりに引かれたラディアン・ワンは、時速864kmに達してから宇宙に向けて離陸する。その後、搭載したエンジンで残りの行程を飛行する。ラディアンのウェブサイトによると、そりを使用して離陸速度に到達することで、搭載する燃料の量を減らすことができる。
この飛行機のような離陸によって、乗客にとってより快適な乗り物になるという。宇宙飛行のコストが削減されることも、ラディアンは期待している。
国際宇宙ステーション(ISS)に荷物を送るには、1ポンド(約453g)あたり1万ドル(約145万円)のコストがかかるとされている。ラディアン・ワンによってそのコストがどの程度削減されるのかまだ分からないが、参考までにNASAはX-33のプロジェクトでそのコストを1000ドル程度に削減しようとしていた。
しかし、ラディアン・ワンはすべてのロケットに代わるものになるわけではない。
ホルダーによると、ラディアン・ワンは、小さな荷物を運ぶピックアップトラックのような役割を果たすようになるとしている。そのため、従来型のロケットは、大型トラックのようにより重い荷物を運ぶために残る可能性が高いという。
実物サイズのラディアン・ワンが空を飛ぶのは2028年以降で、それが軌道に乗るのはまだ先になる。しかしうまくいけば、ラディアン・ワンは成長著しい宇宙旅行の安価な選択肢になるかもしれない。