イギリス、バッキンガムシャーで発見されたローマ時代の斬首された遺骨。
HS2
- イギリスの高速鉄道の建設現場から、ローマ時代後期の墓地が発掘された。
- 埋葬されていた遺骨のうち40体は首を切られており、頭蓋骨の多くは足の間に挟まれていた。
- 斬首されたと見られる遺骨は、犯罪者等であった可能性があると考古学者は述べている。
イングランド南部で発掘されたローマ時代後期の墓地から425体の遺骨が発見され、そのうちの約40体は首が切られていた。
現在建設中の高速鉄道「ハイスピード2(HS2)」のルート上にあるイギリス・バッキンガムシャー州エールズベリー近郊のフリート・マーストンで、約50人の考古学者から成るチームがこれらの遺骨を発見したと、工事を担うHS2リミテッド(High Speed Two Ltd.)が発表した。
発見された遺骨のうち、約10%にあたる40体の首が切られており、その頭蓋骨の多くは足の間や横に置かれていた。
考古学者によると、斬首はローマ時代後期には「限定的にしか行われなかったものの、一般的な埋葬儀礼」だが、犯罪者か追放された者だったという解釈も可能だという。
今後数年にわたって発掘された遺骨の調査が行われ、ローマ時代の生活様式、食生活、信仰についてより多くの知見が得られるはずだ。
HS2リミテッドの遺産担当責任者ヘレン・ウォス(Helen Wass)は「発掘されたすべての遺骨は、尊厳と配慮と敬意を持って取り扱われ、得られた知見は地域社会と共有する」と述べている。
チームはまた、1200枚以上の硬貨と、この地域が貿易と商業の中心地であったことを示す分銅も発見している。
スプーン、ピン、ブローチなどの家庭用品の他、サイコロ、鐘なども見つかっており、この地域で賭博や宗教活動が行われていたことがうかがえる。
ローマ帝国は西暦43年から410年までイギリスを支配していた。
発掘されたブローチ(左)とサイコロ(右)。
HS2
発掘調査組織COPAのシニアプロジェクトマネージャー、リチャード・ブラウン(Richard Brown)は「この発掘は、ローマ都市の特徴を明らかにしたとともに、そこに住んでいた人々に関する調査も可能にした点で意義がある」と述べている。
ロンドンからバーミンガムにかけてのHS2路線の建設が2018年に始まって以来、100カ所以上の遺跡が見つかった。フリート・マーストンはそのうちの1つだ。
考古学者はこの発掘調査によって、約2000年前のローマ時代におけるイギリスの生活を明らかにすることができた。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)