展示会への投資を無駄にしないために 失敗例と成功する4つの要素

展示会への投資を無駄にしないために 失敗例と成功する4つの要素

3万米ドル以上の投資が無駄に

ある大阪の企業の社長とお会いする機会がありました。ここでは、その企業をイロハ(株)とさせていただきます。シカゴ展示会の出展にイロハ(株)は、3万米ドル以上の投資を行いました。ちょうど、私とのミーティングの3ヶ月前のことです。

展示会では、イロハ(株)の製品の評判は非常によく、250件以上の問い合わせがありました。その内、取引の可能性のある問い合わせが約50件ありましたが、残念ながら、ビジネスにつながる事はありませんでした。社長は頭を抱え、私にアドバイスを求めてきたのでした。

背景:

  • イロハ(株)は創業45年で、アメリカの市場への参入を開始したばかり。日本では、利益のあるニッチ市場を独占している。
  • アメリカにオフィスはないが、経験、知識共に豊富なセールス・チームを持ち、チームには平均以上の英語力を持つ者が1、2名いる。
  • リサーチも行っており、アメリカの市場構成、競合企業についての知識もあった。また、ターゲットとする自社製品のユーザーについても特定済みであった。

状況:

  • 展示会開催期間である3日間、イロハ(株)の幹部層がブースを担当した。
  • 展示場閉場後毎日、幹部層が問い合わせに関して話し合い、セールスに繋がる可能性を基準とした分類を行った。
  • 日本に帰国後、イロハ(株)の営業部がこれらのリードに対してフォローアップを行った。フォローアップには、メール、カタログの郵送、そして、電話でのコンタクトに重点が置かれた。
  • メールへの返信はほとんどなく、カタログについても相手先に届いているのか、または読まれているのかもわからない状況であった。
  • 進展がないまま数週間が過ぎ、最も可能性のある潜在顧客に対して、もっと激しくアプローチをするように、社長は営業部に求めた。
  • 複数回にわたるアプローチもむなしく失敗に終わり、営業部は行き詰ってしまった。

私からのアドバイス:

  • 海外で展示会に参加する場合、自社のビジネス及び市場を理解しているネイティブスピーカーを少なくとも一人、ブースに用意すること。ネイティブスピーカーでなければ分かりづらいニュアンスがあり、潜在顧客の意図を正確に把握できない場合がある。
  • 問い合わせの分類は、数種類用意すること。「最高」「普通」「最低」などの分類方法及びその定義を展示会前に事前に決めておく。そして、問い合わせがある度に、すぐに分類を行う。
  • メールでのフォローアップは効率が悪い場合がある。特に、展示会の後は、各社メールの量が通常より増えるため、その傾向が強い。メールの開封状況、またはファイルがダウンロードされたかどうかなどが分かるようなサービスを利用し、メールが読まれたかどうかの判断基準とすることもできる。
  • 多くの企業が過剰にメールに頼っているため、電話でのコミュニケーションにより好印象を残せる可能性もある。電話でのコミュニケーションをさらに効果的に行うため、潜在顧客と同じまたは近くのタイムゾーンのネイティブスピーカーにフォローアップを任せる。しかし、電話にも欠点はある。

効果を引き出す電話でのフォローアップ

アメリカ企業は過去に例のないほど多忙を極めており、用件を迅速かつ簡潔に伝える必要があります。第二言語で、短時間で問題なく用件を述べたりプレゼンテーションを行うことが如何に難しいか、第二言語が話せる方は、ご存知かと思います。それが電話でなら、なおさらで、ほぼ不可能と言えるでしょう。

電話をかけた相手が席をはずしている場合が良くあるはずです。また、留守番電話に短いメッセージを録音させ、対応するかどうか判断している場合もあります。録音するメッセージでは、トーン、抑揚、言葉の使い方、ペースなどが、潜在顧客の気を引きつける重要な要素になります。

また、電話をかけなおしてもらう必要がある場合、電話をかけた人物の電話番号が、同じまたは近くのタイムゾーンのものである必要があり、当然電話をかけた人物が応対する必要があります。

海外市場に参入する場合、展示会への参加は重要な第一歩です。投資から最大限の利益を得るには、自社製品の展示のことはもちろんのこと、展示会開催中及び展示会終了後の営業展開についての戦略も必要です。展示会参加のための莫大な経費を活かすためにも、問い合わせに対する展示会後のフォローアップの具体的なプランを含めるべきでしょう。効果的なフォローアップ・プランがなければ、出費を抑えるためにも、展示会への参加はお勧めできません。

 

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