コース: イノベーションを生み出すサステナビリティ

ライフサイクル思考とライフサイクルマップ

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ライフサイクル思考とライフサイクルマップ

もしこのペンが自分の物語を 語ることができたら、どうでしょう。 部品がどこからきて、どのように作られ、 使われ、なくされたあとに どのような旅をするのか。 残念ながら製品は話すことができませんが、 製造や使用において、 どのような影響があるのかを 把握するために、製品の ライフサイクルを知る方法があります。 「ライフサイクル思考」と呼ばれ、 このペンのような日常的な製品の 製造から廃棄までの全体像を把握して、 その影響を特定し、 改善策を考えるものです。 ライフサイクル思考は、製品の環境への 影響を評価するための科学的手法、 ライフサイクルアセスメント、 LCA(エルシーエー)に基づいています。 LCA は、製品やシステム、 サービスに対して実施でき、 異なる製品を比較することで、 その影響を理解し、報告や 改善をおこなうことができます。 LCA の科学的な信頼性を保つために、 国際標準が設けられています。 グーグル・スカラーで検索すれば、 さまざまな製品の LCA を 閲覧することができます。 専門家を雇い、自社製品の LCA を実施することもできます。 誰でもできる簡単な方法が ライフサイクル思考であり、 日常の製品のライフサイクルマップを 作ることで、 隠れた影響を知ることができます。 国連ライフサイクルイニシアチブによると、 ライフサイクルマップとは、 製品やプロセスがライフサイクルに渡って 経済、環境、社会に与える影響を 考慮する考え方です。 つまり、廃棄後などの1点だけでなく、 ライフサイクル全体を捉えるのです。 すべての製品には、 5つのライフステージがあります。 まず、原材料の採取です。 経済活動に必要なものを作るために 資源を自然から採取するか、 育てる必要があります。 すべての原材料は自然に由来しており、 私たちはそれを加工して使います。 小麦は小麦粉に、鉄鉱石は鉄に、 木は紙にといった具合です。 材料を採取したら、 次は製造プロセスを経て、 私たちが購入する製品になります。 このような製品のすべての段階で梱包や、 もちろん輸送も必要になります。 製品が市場(しじょう)に届き、 購入されたあとは、使用段階に入り、 最終的に廃棄されるまで 使用されることになります。 使用後は、リサイクルされるか、 埋め立て地に行くか、 自然に排出されることになります。 こうしたライフサイクルを 視覚化するツールが、 ライフサイクルマップです。 地図と同様、効率的に目的地に着く 手助けをしてくれます。 ライフサイクルマップにより、 全体像を把握し、 より良い設計が可能になるのです。 誰でも作成できます。 エクササイズファイルを使って、 製品のマップを作ってみましょう。 ペンを例にとってやってみます。 まず、製品に使われる 原材料のリストを作ります。 ペンには通常、 3から 10 個の原材料が使われます。 プラスチック、先端の小さな金属、 インクなどです。 次に、これらの原材料が自然の どこから採取されたかを考えます。 その原材料であるさまざまな プラスチックや金属類について、 それらを生産するために必要な エネルギーや資源、排出される 汚染物質などを調べます。 次に、その製品がどのように、 どれくらいの期間使われるのかを考えます。 それから、製品が使用されたあと、 埋め立て処分されるのか、 焼却されるのか、 リサイクルされるのかを考えます。 ほとんどの製品は使用後に 再利用されるよう設計されていないため、 廃棄されることになります。 ライフサイクルマップを作成すると、 今の線形経済が可視化されるため、 再設計が簡単になります。 ライフサイクルマップにより、 製品の影響の評価や、 異なる方法の比較ができ、 環境に優しいデザインや、 改善策の検討が可能になります。 こうした評価は、 循環型経済を実現する秘訣となります。

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