ブルウイップ効果に対処する

一流アスリートの身体は、筋力、スタミナ、 スピード、柔軟性に、 練習で磨きをかけています。 選手たちが投げ、走り、 スイングし、キックする動作は、 無駄のない完璧な動きです。 そのテクニックは、足、膝、腰、上体、腕、 さらに首や頭といった各部の運動が 最適に統合されることで発揮されます。 ごく小さな故障が、ほかの部分に次々と 影響を及ぼしてもっと深刻な症状を 引き起こすこともあります。 足裏の小さな異常でランナーの フォームがわずかに変化し、 ストライドが変わることで 膝に負担がかかり、 膝で支えられる腰、そして背中へと、 連鎖的に故障が悪化していくのです。 ランナーの我慢強さがこの問題を 深刻にしている点に、注意が必要です。 痛みを我慢して走り続けるより、 身体の声を聴いて 休んだ方がよかったのです。 無理を続けると、故障に次ぐ故障で 選手生命さえ脅かされるからです。 サプライチェーンの世界でも、 ブルウィップ効果という現象があります。 店舗が立てる販売動向の予測は 当たることが少なく、 思わぬ在庫切れを防ごうと、 店は必要以上の在庫を発注してしまいます。 ここでは、不確実性が痛みに相当します。 需要の不確実性が多めの在庫につながり、 その分、購入と保管のコストも膨らみます。 卸売業者は、店からの注文の不確実性に 備える必要があります。 消費者と店、２重の不確実性は、 痛みも２重です。 その痛みをかばうには、 さらに多くの在庫が必要になります。 商品の供給元は、卸売業者からの 注文動向がわかりません。 ３重の不確実性で、強い痛みです。 膨大な在庫で対処しなければなりません。 痛みの連鎖で、 在庫が雪だるま式に拡大します。 サプライチェーンの上流側ほど 在庫が膨らむこの現象が、 ブルウィップ効果です。 アスリートの故障には、 初期段階の休養と治療が有効です。 そして、ブルウィップ効果による在庫の 肥大を防ぐ対策の鍵も、実はシンプルです。 コミュニケーション、つまり小売データと 顧客需要の変化を共有したり、 自社の主な仕入先との 戦略的提携を結んだり、 サプライチェーンマネジメントの責務を 分担したりすることです。 アスリートが療養中も筋力維持に 努めるように、 各社の基幹業務はしっかり継続します。 サプライチェーンパートナーとの連携や…