コース: サプライチェーンの基礎

物流のラストマイル

バスケのフリースローは 定位置からゴールに投げるため、簡単です。 落ち着いて投げる時間もあります。 多くの人は、練習すれば 上手に入れられるようになります。 プレイ中のゴールはもっと困難です。 お互いに動いていて、邪魔も多く、 仲間との連携が必要になります。 パスやシュートのタイミングと方法を、 瞬時に判断する必要があります。 この2つと同じような違いは、 ロジスティクスの上流側、 つまり仕入先から物流センターへの配送と、 下流側、つまりセンターから店舗や 顧客への配送にも見られます。 決まった仕入先から物流センターや 工場への配送は、 フリースローに似ています。 決して楽な仕事ではありませんが、 日々の配送を繰り返すうちに、 経済効率が高く安定的に続けられる 貨物の量やスケジュールが つかめてくるはずです。これに対して、 物流センターから先は別次元です。 細かく分けて 発送しなければならない店舗が、 大手チェーンなら数千に上り、 それぞれが必要としている商品も、 店ごとに、さらに日ごとに変わるのです。 アマゾンの場合は、 家庭や事業所に直接届けるため、 万単位の動く標的を毎日相手にします。 サプライチェーンではこれを 「ラストマイル問題」と呼んでいます。 顧客がその商品を今、 店頭で欲しいのか、配達希望なのか、 いつ欲しいのか、 通常便と速達のどちらにするのか、 配達先は市街地なのか郊外なのか、 一軒家なのかマンションか、 確定していない要素が無数にあるのです。 その点で、物流のラストマイルは 1本のシュートミスが 敗戦につながる僅差の試合に似ています。 1本もミスできない上に、 少ない時間でより多くのシュートを 求められるとしたらどうでしょう。 急速にグローバル化する サプライチェーンのラストマイル担当も、 これと同じです。 サプライチェーンマネージャーは、 倉庫、トラック、店舗、人、データ、 ロボットなどを駆使して、 ラストマイル問題に挑んでいます。 あなたもオンラインショッピングで、 配送方法や配達日時を指定したり、 配送先を自宅にするか、勤務先にするか、 子供の下宿先にするかといった 選択肢を考えるでしょう。 その選択は、物流のラストマイルに どう影響するでしょうか。 シュートの難度は上がりますか。 下がりますか。

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