コース: サプライチェーンの基礎

グローバル化のメリットとリスク

開発や販促を担わない サプライチェーンは、 会社という身体の頭脳ではなく、 筋肉や骨の部分にあたる働きを しているといえるでしょう。 一流のサプライチェーンは、 鍛え抜かれた体操の代表選手のように、 強靭で、素早く、柔軟で、 俊敏な肉体を持ち、 どんな動きにも対応できます。 ここに、わずか5フィートと小柄でも、 全身を鍛え上げた体操選手がいるとします。 ある日、目を覚ますと身長が 6フィートに伸びていました。 では実力はというと、 元のままとはいかないでしょう。 身体の変化に順応できないからです。 同じことは、サプライチェーンを グローバル展開する時にも起こります。 従業員は、新しく増えた人員や 取引先に慣れていません。 サプライチェーンが 持っていた安定性が揺らぎ、 それまではスムーズだった 取引先との連携も、 異国の取引先が相手だと一苦労です。 それまでの交渉や管理の方針を見直したり、 相手国の法令、慣習、 言語を新たに勉強したり、 取引先との情報共有に不可欠の信頼を 確立したりしなければなりません。 互いの距離が遠いほど、 資材や完成品をやりとりしたり 仕入先と工場の稼働状況を 確認したりするのは難しくなります。 それならなぜ、と言われそうですが、 サプライチェーンのグローバル化による メリットはいろいろあります。 原料や燃料、労働などのコストが 割安な可能性があること。 良質な人材や技術を 活用できる可能性があること。 サプライチェーンを それまで以上に顧客に近づけたり、 仕入先に近づけたりできることなどです。 サプライチェーンを現地化することで、 高い関税や輸送費の負担を回避したり、 為替の変動による損失を抑えたりできる というメリットもあるかもしれません。 サプライチェーンマネージャーには、 国際マーケティング、財務、通商協定、 言語や文化の知識、 そしてもちろんグローバルな調達、 オペレーション、 ロジスティクスの知識も必要です。 海外展開を急ぎすぎると、 手痛いしっぺ返しを受けることもあります。 急激に成長した体操選手に、 身体を鍛え直して精神面でも支える コーチが必要なように、 サプライチェーンのグローバル展開にも、 自社とパートナーを指導する 優秀なマネージャーが必要です。 あなたの国に輸入されている、 自動車、電子機器、衣料品などの製品と、 それらが手頃な価格で 店に並ぶまでに経てきた、 さまざまな人手や作業のことを 考えてください。 関わった国、会社、 人はどれだけあるでしょう。 誰かの計画と調整がなければ 実現は不可能です。 グローバルなサプライチェーンを 一流の筋骨に育てて維持していく サプライチェーンマネージャーの仕事が、 どれだけ重要で大変かを 想像してみてください。

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