コース: マーケティングの基礎

顧客を実践的に定義する

顧客は、マーケティングにおける 重要な基本要素のひとつです。 以前、航空会社の コンサルタントをしていた際、 事業カテゴリーを一緒に考えたあと、 担当者に 「御社の顧客は誰ですか」 とたずねました。 シンプルな質問に意表を 突かれた様子でしたが、 すぐにその場にいた1人が 「もちろん弊社の飛行機に 搭乗してくださる方全員です」 と答えました。 そこで私は「いつもマイルを利用して 飛行機に乗っているので、 別の航空会社を使うことが多いのですが、 私は御社の顧客ですか」と聞きました。 顧客は企業にとって 最も重要な経済的資産です。 顧客はブランドの成長に不可欠で、 大きく2つに分けられます。 新規顧客とリピート顧客です。 新規顧客を獲得するにせよ、 既存顧客を維持するにせよ、 ブランドが成長するには投資が必要です。 マーケティングを効果的に行うには、 顧客を投資として扱う必要があります。 どのような顧客関係に 投資するかという判断は きわめて重要です。 なぜなら顧客の獲得と維持では、 必要とされる取り組みが異なるからです。 顧客の獲得は、新しい商品やサービスを 紹介すればよいので比較的シンプルですが、 顧客を維持するには、既存商品を 改良し続けなければなりません。 新規顧客と既存顧客では、広報活動、 価格設定、販売方法も変わってきます。 マーケティングリソースを 配分するにあたり、ブランドの顧客を 特定する必要があります。 顧客が個人ではなく企業だとしても、 相手は人であり、重要であることに 変わりはありません。 顧客を定義するには どうしたらよいでしょうか。 顧客を定義するにあたっては、 行動を基準にします。 理由は2つあります。 行動に関するデータは集めやすいことと、 行動を基準にすると顧客の利益に 直結することです。 興味深いことに、カスタマーという単語は、 習慣を意味するカスタムと 同じ語源を持ちます。 つまり、顧客とは、ブランドと 習慣的な関係がある人を指します。 会社に利益をもたらしてくれる人が 顧客なのです。 具体的な行動に基づいて、 顧客かどうかを判断しましょう。 ブランドの商品をどのくらいの頻度で、 どのくらいの量または金額を 買ってくれますか。 顧客を定義するにあたって、 顧客の考えも知る必要があります。 関係というのは相手がいて 成り立つものです。 顧客と長く良好な関係を築き、 定着率を高めるには、双方が関係を 築くために努力しなければなりません。 定着率とは、本人の意思でブランドとの 関係を継続してくれる 顧客の割合を示します。 高い定着率は、そのブランドが 長く生き残る可能性が高いことを 意味します。 また、企業を相手とする場合は、 ブランドの選択において 重要な意思決定を行うすべての人を 顧客として考えなければなりません。 具体的には、交渉を行い契約を結ぶ 購買担当者、予算を管理する経理担当者、 実際に商品を使用する相手企業の担当者、 最終的に商品の恩恵を享受する消費者、 さらには、途中のさまざまな場面で 関わってくる可能性のある、 影響力のある関係者、 スタッフ、クライアントなどです。 このような人々はまとめて、 顧客関係者と呼ばれます。 顧客マーケティングでは、 次の点を常に意識する必要があります。 第1に、相手企業の中で 意思決定を行うのは誰か。 第2に、彼らは何に基づいて 決定を下すのか。 第3に、意思決定権が特に強いのは誰か。 第4に、 自社はそれぞれの意思決定者に対して どのくらい影響力があるのか。 最後に、先の4つの質問に応じて リソースの配分を見直す必要があるかです。 顧客への投資を管理し、健全な顧客関係を 構築および維持することは、 マーケティングの 成功を左右する重要な要素です。

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