コース: 財務の基礎

銘柄の値動きを見極めることは可能か

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銘柄の値動きを見極めることは可能か

個人投資家が、 財務データや景気動向を分析し、 値上がりまたは値下がりする銘柄を 見分けることは可能でしょうか。 不可能です。 市場の動きはとても早く、 新しい情報に数分で反応します。 ニューヨークには、 株関連のすべての情報をチェックし、 スーパーコンピューターでデータを分析し、 適正価格でない公開株を見つける 仕事をしている優秀な人々がいます。 公開されている財務諸表の数値を基にした、 実行可能で儲かる取引戦略というのは、 会計や財務の学術研究では 確実なエビデンスが見つけられていません。 分析に基づいて過小評価された 銘柄を見つけるまでには、 1週間から2か月ほどかかり、遅すぎます。 株の売買で儲けている人々はいます。 運によるところもあります。 ラスベガスでも儲ける人はいます。 仕事のコネもあります。 経験豊富なアナリストは、 一般の人が知り得ない業界データに 通じています。 ウォーレン・バフェットは、 儲かる株を見つける能力に 優れていると言われます。 なぜ私にはできないのでしょうか。 バフェットと同じような仕事のコネを築き、 ビジネス、政府、メディアの関係者から 同じような情報を得られるなら できるでしょう。 バフェットは、多数の見込み案件について 毎日検討し、そのすべてから学び、 最終的には、毎年ほんの一握りの 大口取引に投資しています。 繰り返しますが、 市場は新しい情報にすぐに反応します。 業界に関する特別な専門知識がなければ、 十分な速さで評価することはできません。 株の銘柄選びについて、 私の兄の経験をお話ししましょう。 兄と、彼の妻は、 1990 年代の中頃から7年間、 株の銘柄選びの実験を行いました。 彼らはその実験に、通常の貯えとは別の 2千ドルを使いました。 インターネットバブルに乗って 9千ドル近くまで増やしましたが、 バブルがはじけて退場した時には、 1,342 ドルになっていました。 2千ドルでスタートして、 最終的に 1,342 ドルになったので、 658 ドル失ったことになります。 株で儲けている人は、銘柄選びの能力を パーティで自慢しますが、 話すのは成功談だけです。 半分は値が下がっているでしょう。 また、全体で損を出している時は 黙っています。 株で儲けていた時、 兄夫婦はパーティで自慢していました。 つまり、株式市場で 簡単に儲けられるという話は、 幸運が続いている人たちの偏ったサンプルが 元になっていると言えるでしょう。 天才もいないし、確実なこともないのです。 今のところ幸運なだけです。 繰り返します。 個人投資家が分析によって銘柄の値動きを 見極めることはできるでしょうか。 できません。 市場の動きはとても早いのです。

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