コース: 財務の基礎

ベータ:概念

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ベータ:概念

[ケイ]おそらく最も有名な財務モデルである 資本資産価格モデル、 通称キャップエムについて説明します。 このモデルはいくつかの要素に基づきます。 人はリスクを嫌うため、 リスクを引き受けてもらうには 代価を支払う必要があります。 分散によって排除できる リスクもありますが、 排除できないリスクもあります。 このようなリスクを システマティックリスクと呼びます。 経済に非常に大きな動きがあると、 全員が同じ方向に影響を受けます。 2000年から2002年にかけて、 インターネットバブルがはじけた結果、 皆が経済状況の悪化を感じました。 あらゆる人が影響を受けたため、 分散によってリスクから 身を守ることはできませんでした。 同様に、2008年と2009年には 世界的な景気の後退があり、 世界中の人が影響を受けました。 これを回避する方法はありませんでした。 このように、皆が影響を受けると、 分散でリスクを 回避できないことがあります。 分散で回避できないリスクを ベータリスクと呼びます。 ベータの値は、 企業と市場のリターンの共分散を、 市場のリターンの分散で割って算出します。 数学的、統計的な説明は難しく 感じるかもしれませんが、 考え方はシンプルです。 ベータは、皆が影響を受けるため 分散によって排除できない、 市場全体のリスクを測る値です。 例を挙げます。 現金のベータはゼロです。 説明しましょう。 1ドル札があるとします。 インフレや為替レートの変動の影響は ここでは無視して、1ドルのままです。 経済が好調な年も1ドル札には、 1ドルの価値があります。 経済が低迷した年でも、 1ドルの価値があります。 つまり、この紙幣への投資は、 大きな経済勢力の変動には影響されません。 現金のベータはゼロです。 次に、幅広いポートフォリオで 投資しているとします。 ある企業に少し、ほかの企業に少しと、 多くの企業に投資しています。 景気が上向くと、 投資ポートフォリオも上向きになり、 景気が下向くと、 投資ポートフォリオも下向きになります。 つまり、投資ポートフォリオのベータは 1です。 市場が15%上昇すると、 投資も15%上昇します。 では、企業のベータが1を上回るとは どういうことでしょう。 例として、住宅建築業界のベータは 1を上回ります。 地域経済が好調な時は、 あちこちで住宅が建設されます。 地域経済が少し上向きになると、 住宅建築業者は恩恵を受けます。 その一方で、 地域経済が少し下向きになると、 建設の動きも鈍くなります。 建築業者は、 幅広い経済の変動に非常に敏感です。 それが数字に反映され、 建築業者のベータが1を上回るわけです。 ベータの値は、市場リスクと 連動する企業のリスクの度合いを 反映しています。

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