コース: 財務の基礎
資本コスト:すべて負債またはすべて株式による資金調達
資本構成は、企業の資本コストに 影響する重要な問題です。 資本コストとは外部からの資金調達にかかる コストで、借入れにかかるコストと 株式投資のコストを組み合わせたものです。 借入れにかかるコストは金利です。 株式投資のコストは、投資家が プロジェクトに投資する場合に 期待するリターンです。 株式投資のコストは、 資本資産価格モデルを使って算出します。 資本コストには どんな意味があるのでしょう。 資本コストは、プロジェクトが利益を 生んでいるかを判別する とても重要なものです。 たとえば、資本コストが 11%で、 15%の利益を生む プロジェクトがあるとします。 いいですね。 外部からの融資を 11%のコストで受けて それを 15%の利益を生むプロジェクトに 使うと、4%の黒字になります。 一方、資本コストが 11%で、 プロジェクトの利益が 7%の場合、 それはだめなプロジェクトです。 このように、資本コストによって、 会社にとって良いプロジェクトか どうかが決まるのです。 資本コストの重要性を、 数値を使って説明します。 まず、シンプルな資本構成のケースです。 負債による資金調達が 100%です。 リリーは2億ドル全額を借入れで賄います。 貸し手は 12%の利子を求めました。 つまり、今2億ドルの融資を受けたら、 1年後に2億ドルと 12%の利子を 支払わなくてはなりません。 2億 2,400 万ドルです。 では、このビジネスで予測される キャッシュフローを確認します。 いちごアイスをたくさん作ります。 キャッシュフローは 2億 2,000 万ドルです。 2億 2,000 万ドルにしかならない のであれば、 貸し手にとっては良い話ではありません。 返済に十分なキャッシュフローに ならないので、融資にはリスクが伴います。 プロジェクトで生みだされる利益より、 資本コストが高いのです。 この資本構成ではうまくいきません。 別の方法はどうでしょう。 株式発行による資金調達が 100%です。 リリーは、融資ではなく投資で 2億ドルを出す投資家を見つけます。 投資家は、資本資産価格モデルを使って 算出した 15%のリターンを要求します。 つまり、1年後に 2億 3,000 万ドルを投資家に 渡さなくてはなりません。 投資へのリターンは 15%です。 全額負債の場合の利子 12%より 高いのはなぜでしょうか。 これは、負債による資金調達が 世界中の国の法律で 保護されているからです。 企業に融資した場合、その企業が 返済しなくても貸し手は法律で守られます。 一方、投資家は高いリスクを負います。 利益を得られなくても法律で守られません。 ビジネスのリスクを負うわけです。 貸し手は法律で守られており、 何か残っていれば必ず返金されます。 投資家は賭けに出ており、 企業への投資は、融資するよりも リスクが高いというわけです。 株式投資のリターンが、融資の場合の 利子よりも高くなるのはこのためです。 どちらにしても資本コストが高すぎて、 実現は無理でしょう。 資本コストが高いために、 リリーの夢であるアイスクリーム会社の 実現が阻まれています。