コース: 財務の基礎

長期的な資金調達について

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長期的な資金調達について

アメリカの国勢調査によると、 2018 年6月に販売された新築住宅の 販売価格の中央値は 31 万ドルでした。 さて、企業財務の重要な論点は、 資産を購入する資金の調達方法、 つまり借入金と企業の所有者による 投資の組み合わせ方が 資産価値に影響するかどうかです。 この観点を資本構成と呼びます。 住宅の購入コスト 31 万ドルを例に、 資本構成について説明しましょう。 2つの資金調達方法があるとします。 1つ目は、貯金を使って 全額を現金で支払う方法です。 住宅ローンは一切使わないので、 抵当権の設定なしに住宅を所有します。 2つ目は、一部を貯金から、 たとえば3万ドルほど出して、残りの大部分 28 万ドルを住宅ローンで賄う方法です。 自分のことだと思って考えてください。 この家には、資金の調達方法によって、 どのような違いが生じますか。 住宅ローンを一切使わない方法と、 28 万ドルものローンを組む方法です。 家の住み心地や間取り、窓から見える景色、 毎月の光熱費はどうですか。 何か違いが生じるでしょうか。 ありませんよね。 地域の学校のレベルや、 ご近所との関係はどうでしょうか。 ローンを組んだことで、 影響があるでしょうか。 ないですよね。 住む場所としての家は、 抵当に入れずに購入しても、 多額のローンを組んで購入しても同じです。 ほかに違いはありますか? はい。 ローンを組んだ場合は、財政難に陥ると、 家を失う可能性がはるかに高くなります。 返済が滞ると、いずれは家を失うでしょう。 全額自分で購入していれば 返済の心配はありません。 つまり、借入は少ないほうが いいというわけです。 その一方で、少なくともアメリカでは、 住宅ローンの金利分が 税金控除の対象になります。 住宅ローンの金額が多いほど、 毎年の所得税の額が少なくなります。 つまり、多額のローンを組んだ方が 有利ということになります。 これらは相反する要素です。 住宅ローンの金額は、少ないほうが 財政難で家を失うリスクは低くなり、 多いほうが所得税の金額は少なくなります。 同じ家でも、購入資金の調達方法で 総合的な価値が変わります。 これを企業の資産購入の資金調達方法に あてはめたものが、資本構成の議論です。 企業財務で最も重要な要素の1つです。

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