コース: 財務の基礎

資本資産価格モデル(CAPM)とは

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資本資産価格モデル(CAPM)とは

[ケイ]要素の説明は以上です。 それでは、資本資産価格モデルの 全体像を確認します。 リスクフリーレートは、 投資で得られる最小限のリターンです。 企業の株への投資は、それより 高いリターンでなければなりません。 この差が株式リスクプレミアムです。 リターンがどの程度高くなるかは、 投資に伴うリスク、つまり回避できない ベータリスクによって異なります。 分散によって回避できる リスクもありますが、 ベータリスクは経済の全体的な動きに 関連するため、分散では回避できません。 具体的な数値を使って説明します。 フォードモーター社を例にします。 もしこの会社に投資するなら、 リスクフリーレートである5%以上を 期待できなくてはなりません。 株式リスクプレミアムも必要です。 標準的な株式リスクプレミアムは6%ですが、 フォードモーターは経済全体の動きに とても影響を受けやすい企業なので、 ベータ値が非常に高くなります。 ベータ値は1.8です。 標準的なリスクプレミアムである 6%に1.8を掛けた10.8%が 株式リスクプレミアムになります。 私がこの会社に投資するなら、 少なくとも、5%のリスクフリーレートと 10.8%の株式リスクプレミアムを足した 15.8%のリターンを期待します。 15.8%のリターンが得られないと思ったら、 私は投資しないでしょう。 これが資本資産価格モデルの考え方です。 ベータリスクの低いウォルマートは どうでしょうか。 ウォルマートの経済状況は、 経済の全体的な動きに ほとんど左右されないため、 ベータリスクが低くなります。 ウォルマートに投資する場合も、 リスクフリーレート5%に 株式リスクプレミアムを加えます。 かなり低い値です。 標準的な株式リスクプレミアム6%に ウォルマート社のベータ値0.36を掛けると、 ウォルマートに期待すべき 株式リスクプレミアムは2.2%になります。 つまり、リスクフリーレート5%に 株式リスクプレミアム2.2%を足した 7.2%が、期待するリターンです。 計算が単純すぎて、 実際には使っていないのでは、 と思うかもしれません。 しかし、数年前、私が数千万ドルが絡む 訴訟について2週間にわたって 裁判所で議論した時には、 実際にその期間中ずっと、 資本資産価格モデルでどの数値を使うかを 話し合っていました。 資本資産価格モデルに従うと、 投資の見返りとして期待すべきリターンは、 リスクフリーレートと、ベータ値を掛けた 株式リスクプレミアムを足したものです。 これで、資本資産価格モデル、 キャップエムについて おわかりいただけたと思います。

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