思考パターンとエグゼクティブプレゼンス

奴隷制度に終止符を打った南北戦争が、 米国史上最も多くの戦死者を出して 終結すると、 エイブラハム・リンカーン大統領は 傷痍軍人のグループを ホワイトハウスに招きました。 演説の名手である大統領が 直接彼らの軍功を称えて、 式典は終わりかと思われた時です。 ここで、エグゼクティブプレゼンスに秀でた リンカーンの思考パターンが発揮されます。 偉大なリーダーの振る舞い方から 学べるすばらしい教えを、 ぜひ受け取ってください。 リンカーンは、出席者たちを 別の部屋に案内しました。 そこにはたくさんのおもちゃが 置かれています。 「地元の子どもたちに贈ってください」と 大統領は言いました。 プレゼンスに優れた人の思考パターンです。 その時に果たすべき役目や 目の前の相手に集中するだけでなく、 優れたリーダーは、さらに先のことや 関係者全体のことを考えます。 関係者とは、いま手がけている課題に 関係している個人や集団のことです。 大統領の思考は独創的でした。 しかもその深い思考から生まれたのが、 おもちゃを持ち帰らせるという 簡単な工夫でした。 傷痍軍人らの将来と、 地元で出会う人たちのことを考えたのです。 大統領からの表彰は名誉ではありますが、 一時的なものです。 退役した彼らにとって、 もっと切実な問題は、 傷ついた心身で 地元の日常生活にどう戻るかでした。 戦後の焼け跡で、新たな生き方を 模索しなければならないのです。 子どもたちへの贈り物は、 地元の人々との接点になり、 彼らの帰郷に、美辞麗句だけではない 確かな意義と目的を与えてくれます。 困窮家庭の子どもの手を取って 渡すおもちゃが、 互いを結びつけるのです。 地域の子どもたちへの贈り物は、 帰還兵たちが地域に心を開く 助けにもなります。 さらにこの運動は、 国中に「戦争は終わった。 さあ、武器ではなく贈り物を」 というメッセージになりました。 偉大なプレゼンスを発揮する リーダーには深い思考と、 広い視点があります。 目の前の現実を見つめつつ、 その先のことや関係者全体のことも 考えます。 開拓民の家に生まれ、 数々の困難を経験したリンカーンは、 努力を積んでこうした思考習慣を 独自に身につけたのです。 先ほどのエピソードを含めて、 リンカーンは今なお多くのことを 教えてくれます。 「未来のいいところは、…