コース: エグゼクティブとしての振る舞い方を身につけるには

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偽りと真実

偽りと真実

戦時中、当時の フランクリン・ルーズベルト大統領が、 俳優のオーソン・ウェルズと面会しました。 ウェルズは、現在もなお名作に挙げられる 『市民ケーン』を監督、 主演したハリウッドの超大物スターでした。 当時の米国は、軍備も防衛体制も 非常に心もとなく、 欧州とアジアでは、ナチスや 枢軸国の脅威が高まっていました。 大統領は、国民や同盟国の士気を 鼓舞する演説を続けていました。 「恐れなければならない唯一のものは、 恐れそのものである」という 言葉も有名ですが、 自国の劣勢は本人が 一番わかっていたのです。 ウェルズとの面会では、繰り返し 「君も私も世界最高の役者だ」 と語ったそうです。 優れたエグゼクティブプレゼンスで 広く知られたルーズベルト大統領の この言葉が物語るのは、正直さの問題です。 私が助言するエグゼクティブからは、 よく「自分を偽る必要はあるのか」 と質問されます。 思考や感情や行動のパターンを変えるのは、 嘘にならないかということです。 それは、本人の意識次第なのです。 嘘を押し通せばいいという意識なら、 長続きしません。 うわべだけの虚言は 不測の事態や重圧に弱く、 いずれメッキがはがれます。 他方、ルーズベルトの演説は、 成功するリーダーの見本ともいえる 意識によるものです。 自分や人々の中にある信念を奮い立たせ、 個人の不安や迷いに左右されない、 大きな世界の普遍的な価値を、 自分にも人々にも思い起こさせようとする 意識です。 よりよい未来を作る熱意です。 この熱意を呼び起こせば、恐れに負けず、 本当に大切にする価値に対して 正直な言動が可能です。 時として襲う不安も事実であり、 強烈な感情ですが、 不変の真実はもっと大きく力強いものです。 うわべだけの恐れに 惑わされてはいけません。 ルーズベルトがウェルズに語った冗談には、 正直な胸の内も見て取ることができます。 演説の中にも、彼の思いは滲んでいます。 「恐れるべきは恐れそのもの」の言葉は、 自身に向けたものでもあったでしょう。 当時の世界情勢や職務の重みは、 恐れるに十分なものだからです。 ただ、枢軸国の脅威から米国と同盟国を 救いたいという熱意は、 もっと強いものでした。 不変の真実や大きな善への信念は、 一時的な恐怖よりずっと 大きな意味を持っています。 それは偽りではなく、…

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