コース: クリティカルシンキング

ビジネスの手法を見直す

コース: クリティカルシンキング

ビジネスの手法を見直す

経営を改善するために 新しいアイデアを生み出すには、 現状を批判的な視点で考える必要があります。 ここでは、ビジネスモデル、収益、コストの 3つのブローアップについて説明します。 ビジネスモデルについては、市場への 展開方法を根本から見直します。 対象としている市場についても見直し、 商品やサービスの提供方法に関する ビジネスモデル全体を再検討します。 収益のブローアップでは、商品、価格、地域、 ターゲットを大幅に拡張する方法を考えます。 コストについては、ビジネスモデルや 経費の使い方を再検討します。 ビジネスの障壁を根本から取り除き、 効率を大幅に高めるには どうすればよいでしょう。 ビジネス、コスト、収益の根本的な ブローアップを実現した企業の一例として、 スカイバス航空が挙げられます。 数年前まで、航空会社はどこも 似たようなサービスを提供していて 大差ありませんでした。 航空券には食事など すべてのサービスが含まれており、 運用モデルも料金も横並びでした。 そこへスカイバス航空が参入しました。 「今までの常識を打ち破る」と宣言し、 挑戦的で新しいビジネスモデルを ウェブサイトで公開しました。 「食事や飲み物が必要なら 現金をお持ちください」 以前は食事が必要でない人も 費用の負担を強いられていましたが、 これからは必要な人だけがその場で 現金で支払うことになりました。 「電話しないでください」同社は、 運用コストが高いコールセンターを廃止し、 「すべてネットでどうぞ」と言って 顧客サービスモデルを刷新しました。 搭乗口の係員の数も減らしました。 空港への人員配置には 多大なコストがかかるので、 乗客の搭乗に関わる既存の 人員配置モデルを変えることにしたのです。 また払い戻しはできません。 予約変更にも多大なコストがかかるため、 航空券の払い戻しに応じないことにしました。 そして主要都市の大規模な空港への 乗り入れも行いませんでした。 コストが高いからです。 乗り入れるのは近隣都市の空港で、乗客は そこから車で移動することになります。 スカイバスがビジネスモデルを 批判的な視点から考えて実現した、 これらの変革の効果は絶大でした。 航空券は片道 10 ドルか 20 ドルほどで 販売できるようになりました。 搭乗日が近づくと 200 ドルに なることもありましたが、 各サービスを別料金として計算する 料金モデルと 全体的なコスト構造の縮小により、 他社との差別化に成功しました。 私も恩恵を受けました。 家族でオハイオから カリフォルニアに行った時、 片道の合計はわずか 200 ドルでした。 以前なら数千ドルはしたはずです。 スカイバスの変革は画期的で リスクもありました。 リスクを取れば常に良い結果が 待っているわけではありません。 ある日、スカイバスの革新性や優れた ビジネスモデルを講義で取り上げました。 帰宅してスカイバスの航空券を 予約しようとしたら、 経営破綻の通知が表示されました。 スカイバスは大きなリスクを冒し、 サービスの提供方法を抜本的に変え、 その結果、競合他社の変革も促しました。 長期的には成功できませんでしたが、 クリティカルシンキングで ビジネスを別の角度から見ることで、 業界を一変させました。 現在はどの航空会社でも、 運賃とサービスは別料金だと思います。 追加の荷物には 25 ドルから 50 ドルほど、 予約の変更には 75 ドルから 200 ドルほどかかるでしょう。 機内食には9ドルほど、 座席指定には 12 ドルから 25 ドルほど かかるのではないでしょうか。 スカイバスが新しい視点でビジネスを 捉えたことで、他社も追随を迫られました。 スカイバスと競うため、料金体系の 変更を余儀なくされたのです。 これはクリティカルシンキングが 大規模な業界を大きく変革した例です。 クリティカルシンキングの手法を 活用する時に、 自身に問いかけるとよい質問を紹介します。 ビジネスモデルの場合です。 やり直せるとしたら何を 変えるかを問いかけます。 同じ事業をはじめからやり直すとしたら、 今と何を変えるか。 もし、会社もお客様もインドや中国に移転して 同じ事業を展開するとしたら、 経済状況や法規制が異なる環境で競争力を 高めるために どのような構造改革が必要でしょうか。 最も重視している指標を2年で 倍増させるにはどうすればいいか。 倍増というのは高い目標ですが、ビジネスの 見方を変えるきっかけになります。 収益の場合です。 自社の顧客により高い価値を 提供できる企業はどこかを考えます。 より優れた企業を探すことで視野が広がり、 自分たちのやり方を見直すことができます。 5年以内に収益や利益を3倍にするには どうすればいいか。 こうした極端な数値を掲げると、現在の制約を いくつか取り除くことができます。 また、現在は提供していないが 提供すべき商品を 10 種類考えます。 顧客が求めているのに、自社では 提供できていないものは何でしょうか。 コストの場合です。 3分の1の人員で同じ事業を 運営する方法を考えます。 新しいプロセスや新しい技術、 新しいやり方が必要になります。 大幅な削減を想定することが、ビジネスの 見方を変えるきっかけになります。 自分の仕事をなくすにはどうすればいいか。 すべての仕事を思い浮かべましょう。 自分の仕事がなくなると考えるのは 不安ですが、この自問によって、 自分の仕事を批判的な視点から 捉えることができます。 どの仕事をやめるべきか。 チームのほかのメンバーに 任せるべき仕事はどれか。 自動化できる仕事は何か。 この質問は挑発的ですが、 自分の職務を批判的な 視点で考えるきっかけになります。 そして、最後の質問です。 組織が取り組んでいる最も無駄なことは何か、 またそれをやめられない理由は何か。 無駄がどこにあるかは皆が 知っていることです。 何が無駄なのか、 そしてそれをやめられない理由がわかれば、 ビジネスの効率と効果を高める 新しい解決策を見出せます。 皆さんの組織に目を向け、ビジネスモデル、 収益、コストをブローアップ、 つまり抜本的に改革する方法を 考えてみてください。 批判的な視点に立った質問への答えを 考えることで、 ビジネスの競争力と有効性を高める 新たなチャンスを見出すことができます。

目次