女子ゴルフ界を席巻する黄金世代から、さらに若いプラチナ世代が大暴れです。19歳最後の日に見事にツアー初優勝を呼び込んだのは、東京出身の稲見萌寧(もね)。
昨年夏にプロテスト合格した21人のルーキーで、は5人目のツアー優勝。前週、サマンサタバサで21歳の小祝さくらが初優勝したのに続く若者の台頭。
小学4年でゴルフを始め、中学生になってからこれまで、1日も練習を休んだことがないという練習の虫。最終日、最終18番で、3メートルのバーディーパットを決めて初Vをつかみ取った稲見の肝っ玉は見上げたもの。
「センチュリー21レディス」(埼玉・石坂GC)。20歳の誕生日を自ら前祝いした萌寧は、その足で次週の山梨・鳴沢GCに移動。誕生日の29日も練習ラウンドをこなす″努力の女〝です。
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最終日、後続と2打差の単独トップで出た稲見。前半は入れごろのパットが決まらず3ボギー(2バーディー)。後半へターンしたときは首位を明け渡す苦しい戦いでした。
流れを変えたのは11番(パー4)の第2打で放った9番アイアンでした。ピン1㍍弱につけたナイスバーディー。続いて15番(パー4)ではグリーン奥エッジからの8メートルをねじ込み、再び3人トップへと並びかけました。
萌寧(もね)がいいます「私のゴルフの生命線はアイアンショット。それを見てください」と。たゆまない練習で培った萌寧の鋭いアイアン。11番で流れを取り戻した9Iは、勝負のかかった最終18番(パー4)でも炸裂します。
イ・ナリ(韓)と青木瀬令奈が、同じ8アンダーで先に上がって待ち受けます。フェアウェイからの残りは130ヤード。萌寧の運命をかけた9Iは、3メートルのバーディーチャンスにつきます。外れたら3人プレーオフです。1年前の最終プロテスト。
勝負のパットが同じだったことを思い出したという。「あのときのプロテストの緊張度に比べたらまだ大丈夫!」初優勝のかかった3メートルは見事に決まりました。
天にも届けとばかり。右手を真上に高く突き上げるガッツポーズでした。「絶対に勝ってやろうという気持ちだけでした。きょうは自分の全力を出し切ることだと思っていました。95%ぐらいはできたかなという感じです。
毎日、おいしいおにぎりを作ってくれた親に、ありがとうといいたいです。力になりました。これからもまだ毎週試合が続くので、全試合優勝目指して頑張りたいです。これからも迫力あるアイアンショットで優勝を目指すので応援してください」
欠かさなかった1日10時間の練習。たとえ体調を崩そうとも一日も欠かさずにクラブを振りました。
「世界一になるためには、世界で一番練習するという気持ちです」と萌寧。たぐいまれな練習量。それで身につけた「アイアンショット」は他の追随を許しません。定評のあるフェースコントロールでパーオン率はイ・ミニョン(韓)らと常に上位で争っています。
今季は現在11試合に出場してトップ10に6回。予選落ちは3回。11試合目で初優勝。賞金ランクは14位に上昇です。
昨年、プロテストに合格したあと、萌寧にも最初のカベがぶつかってきました。年末の最終予選会(QT)で103位と振るわず、今季の前半戦は限られた試合にしか出られませんでした。
オフの12月には新たにコーチを代え、ショットはじめパターやメンタル面の見直しを行い、再出発した矢先の初優勝のご褒美でした。これからは出場試合も増えそうですからまだまだチャンスはやってくるでしょう。将来的には米ツアー参戦を夢見ていますが「まだまだ実力不足。まずは日本で1番になることです。
賞金ランクで私より上の人が何人もいます。休んでなんかいられません。1秒も無駄にできない。次週からはもう気持ちを切り替えてまた優勝争いができるようにしたいです」。
稲見萌寧(もね)20歳の誕生日は、生涯忘れらえない記念の日になったことでしょう。166センチ、58キロと恵まれた体躯。それでいてバックスイングはコンパクトに抑えて打つ ショットは安定感にあふれています。
黄金世代の1人といわれる原英莉花(20)とは5ヵ月違いで同じ20歳。173センチで大きなスイングをする原とは好対照で比較されます。
萌寧(もね)の名前はフランスの印象派画家、クロード・モネと同じ読み方ですが「それより、世界に出てもだれにでも覚えてもらえるようにつけてもらった名前です」という。だれよりも強い意志で、最高峰を目指す頼もしいニューヒロインの登場といえるでしょう。
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