A、ゴルフ場倒産とその後の会員権
今日多くのゴルフ会員権が、安価になった。
バブル経済崩壊以降長きに渡りデフレ経済が進行する中で、ゴルフ会員権も又その経済動向の一環として、影響を多分に受けた。
多くのゴルフ場は預託金制度を採用しており、会員が退会申請した場合、速やかにゴルフ場より預託金返還を受ける事が出来たならば、会員権相場はその預託金額以下に下落する事も無かったであろうし、ゴルフ場に対する大きな信用崩壊には至らなかったものと思われる。
残念ながら原始会員が預けた預託金に付いては、ゴルフ場自体でその償還原資を持ち合わせていないケースが多かった事から、民事再生法が施行された2000年4月以降雪崩をうつかの如く、預託金償還に苦しむゴルフ場の多くが、法的整理へ舵を切る事になったのである。
法的整理をしたゴルフ場は、1991年以降2015年12月現在でその数747企業、931コースとなっている。
所謂倒産に関する参考資料は、下記の通り。
1991年 2 企業 _ 0 コース
1992年 3 企業 _ 3 コース
1993年 6 企業 _ 5 コース
1994年 3 企業 _ 2 コース
1995年 6 企業 _ 6 コース
1996年 4 企業 _ 2 コース
1997年 9 企業 _ 29 コース
1998年 11 企業 _ 14 コース
1999年 27 企業 _ 20 コース
2000年 25 企業 _ 26 コース
2001年 55 企業 _ 63 コース
2002年 97 企業 _ 130 コース
2003年 79 企業 _ 132 コース
2004年 82 企業 _ 110 コース
2005年 71 企業 _ 80 コース
2006年 52 企業 _ 59 コース
2007年 41 企業 _ 48 コース
2008年 30 企業 _ 32 コース
2009年 26 企業 _ 29 コース
2010年 26 企業 _ 27 コース
2011年 26 企業 _ 27 コース
2012年 26 企業 _ 44 コース
2013年 10 企業 _ 10 コース
2014年 13 企業 _ 14 コース
2015年 17 企業 _ 19 コース
(一季出版株式会社資料より)
ではこの様な結果、法的整理を経たゴルフ場のゴルフ会員権は、その後どの様な変遷を遂げて行ったのであろうか。それは次の5パターンに分類される。厳密には特殊な例もあるのだが、傾向を捉える為には最大公約数でくくる事が大切であると判断し、下記の様に敢えて分類した。
① 無額面のプレー会員権
② 弁済率に合わせた預託金を有する従来通りの会員権
③ 中間法人を新たに設立し、新クラブシステムへ移行した会員権
④ 株主制へ移行したクラブの会員権
⑤ 永久債となった会員権
B、会員組織の発展へ
会社更生法或いは民事再生法と言うゴルフ場経営会社による明確な法的手続きに対しては、義憤に駆られて真っ向勝負に挑む会員が多いのも事実だが、なし崩し的説得工作に対しては、明確な反対のビジョンをもって、その御旗のもとに会員が結集して運動を展開する事例を、筆者はあまり知らない。
これは単に民族性や国民性などで、説明出来るものではない様に思える。
いずれにしてもバブル経済崩壊は、日本でゴルフ場が開発・導入されてから約80年が経過した時点での、ゴルフ文化のターニングポイントとなった。それから更に約20年の歳月を要したこの間は、新たに日本に於けるゴルフ場の在り方、会員組織の在り方が問われた年月であった様な気がする。
それはある意味次の成長パターンを模索する、生みの苦しみの期間と言えなくも無いだろうか。
日本人はゴルフ100年の歴史をもって、それを自らの生活の一部として、スポーツとして、娯楽として、コミュニケーションツールとして取り入れて来た。模倣から始まり、それを噛み砕いて、自らの文化までに昇華させた日本人だが、今後更に発展させる術が、今問われている様に思える。
ゴルフ会員権も又その渦中にあり、手さぐり状態と言える。生みの苦しみから脱却出来る日は、何時になるのだろうか。
2016年7月14日 東京神田神保町にて