菅野徳雄の「日本のゴルフを斬る」 (日刊ゲンダイ 平成28年1月20日掲載) 日本人プロが世界で勝つためにはもっと小技を磨くべきだ
2014~15年米ツアーのドライバー平均飛距離を見ると、300ヤード以上のプロが26人もいる。日本では1、2番の飛距離を誇る松山英樹でさえ294.2ヤードで57位だった。 アメリカでプレーすると日本ほど飛ばないような気がするので日本のプロはみな、最初に「おや?」と思うらしい。 これはどうしてかというと、アメリカのフェアウエーは柔らかい洋芝で、日本のコーライ芝のフェアウエーほどランが出ないからだ。 アメリカの選手は年々体が大きくなって、今や185センチは当たり前の時代。他のスポーツと変わらない190センチ以上の選手もゴルフ界で活躍している。 ジャック・ニクラスやアーノルド・パーマーの時代よりも今の米ツアープロは10センチ以上も平均身長が伸びている。ところが日本の選手はAONの時代より逆に10センチ近くも小さくなっている。アメリカの選手はゴルフだけでなく他にも激しいスポーツを本格的にやっていた選手が多い。 けれども日本のプロゴルファーは、いまだに子供のころからゴルフだけという選手が多いので大型選手はなかなか出てこない。だからスケールの大きいプロゴルファーを育てるには、中学や高校時代は野球やサッカーなどを本格的にやって、その後にゴルフを始めるときは初めから優れたコーチをつけて育てないと、2020年東京五輪でメダルを狙える選手は出てこないとよくいわれる。 しかしそれでも体力的にはかなわないと思うので、世界で勝つためには飛距離よりショットの正確性と、あとはショートゲームしかない。青木功が1978年に世界マッチプレー選手権で勝ったり、83年ハワイアンオープン(現在のソニー・オープン)を、最終ホールのイーグルで逆転優勝したのも世界の誰にも負けない武器(ショートゲーム)を持っていたからだ。彼は米ツアーでバンカーセーブ王に2回輝いている。 ■飛距離よりもショートゲーム あの頃、ボールはまだ糸巻きで、クラブヘッドはパーシモンだった。当時の青木の米ツアーにおけるドライバー平均飛距離は255.50ヤードと発表されている。それでもハワイアンオープンのときは270ヤードぐらい飛んでいて、優勝スコアは通算20アンダーであった。 80年の全米オープンでニクラスと最終ホールまで激しく優勝を争って惜しくも2位になったときのコースは7076ヤード・パー70のバルタスロールGCで、難易度を表すコースレートは75.8。距離も長いコースで、月曜日の練習ラウンドでは何とフェアウエーウッドを14回も使ったと言っている。それでもスコアはトータル通算6アンダー274。ニクラスに2打及ばなかったが、全米オープンの新記録だった。 その後、米ツアーでは丸山茂樹が3勝を挙げているのだが、これもショートゲームで勝ち取った勝利だ。 「飛距離が違い過ぎる」などと泣き言を言わずに、世界の誰にも負けないショートゲームを武器にして金メダルを狙って欲しい。