供する
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日本語
[編集]動詞
[編集]供する (きょうする)
- (他動詞, 文章語) 供物として捧げる。供える。神事などで犠牲・生贄として使う。
- 1889年、井上円了「欧米各国 政教日記」[1]
- 宗派異なればその名目また異なり、ヤソ教の祭式に一杯のブドウ酒と一片のパンを神前に供し、読経祈請の後、これをヤソの血と肉なりといいて衆人に配与することあり。
- 1930年、高楠順次郎「東洋文化史における仏教の地位」[2]
- それで毎年マホメット教の祭の時には牛を殺すのであるが、その殺す前に意地悪く、これを今夜殺して犠牲に供するのであるといってインド人の町を牽いて歩いて皆に犠牲になる牛を見せるのであります。
- 1931年、喜田貞吉「奥羽地方のシシ踊りと鹿供養」[3]
- その行事としては、その熊を祭場に引き出し、その前にてアイヌの第一の嗜好物たる酒を供して神を祭り、結局ここに盛大なる歌舞宴楽を催すのである。
- 1889年、井上円了「欧米各国 政教日記」[1]
- (他動詞, 文章語) (「犠牲に供する」の形で、神事とは無関係に一般的に)ある目的のために代わりとして何かを駄目にする。犠牲にする。
- 1910年、大隈重信「余が平和主義の立脚点」[4]
- 今の武装的平和の今日、国際道徳の個人道徳よりも低き今日、我が国民の世界を第一位に置くため、我が民族の発展のために、また来るべき大平和の時代を迎うるがために、時と場合に依っては小平和を犠牲に供するのは当然である。
- 1925年、江戸川乱歩「心理試験」[5]
- 彼はナポレオンの大掛りな殺人を罪悪とは考えないで、寧ろ讃美すると同じ様に、才能のある青年が、その才能を育てる為に、棺桶に片足をふみ込んだおいぼれを犠牲に供することを、当然だと思った。
- 1934年、岡本かの子「仏教人生読本」[6]
- しかし犠牲に供せられる植民地や属国の農民達こそいい面の皮です。私はこんな政策を不当と思います。
- 1910年、大隈重信「余が平和主義の立脚点」[4]
- (他動詞, 文章語) 提供する。渡す。差し出す。
- (他動詞, 文章語) 役立てる。使う。
- 1924年、谷崎潤一郎「痴人の愛」[10]
- 男の児が中学で幾何や代数を習うのは何の為めか、必ずしも実用に供するのが主眼でなく、頭脳の働きを緻密にし、練磨するのが目的ではないか。
- 1927年、菊池寛「「小学生全集」について」[11]
- 曾て、自分は「小学童話読本」八巻を編輯した。清新にして健全なる童話を精選して、児童の読物に供するつもりであつた。
- 1947年、野村胡堂「奇談クラブ〔戦後版〕」[12]
- 大正の末頃、彦根屏風が上野の美術館でたった一日だけ展観に供された時、二人の若い美術学生があの屏風の前に立って、朝から夕刻まで、全く食わず呑まずに、文字通り一寸も動かずに頑張って、主催者側を、持て余さしたり、驚嘆さしたりしたことがあります。
- 1924年、谷崎潤一郎「痴人の愛」[10]
活用
[編集]サ行変格活用 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
供 | し せ さ |
し | する | する | すれ | せよ しろ |
意味 | 語形 | 結合 |
---|---|---|
否定 | 供しない | 未然形 ない |
否定 | 供せず | 未然形 ず |
自発・受身 可能・尊敬 |
供される | 未然形 れる |
丁寧 | 供します | 連用形 ます |
過去・完了・状態 | 供した | 連用形 た |
言い切り | 供する | 終止形のみ |
名詞化 | 供すること | 連体形 こと |
仮定条件 | 供すれば | 仮定形 ば |
命令 | 供せよ 供しろ |
命令形のみ |
関連語
[編集]註
[編集]- ↑ 青空文庫(2012年8月31日作成。底本:「井上円了・世界旅行記」柏書房、2003(平成15)年11月15日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/files/50117_48691.html
- ↑ 青空文庫(2009年1月18日作成。底本:「高楠順次郎全集 第一巻」教育新潮社、1977(昭和52)年2月25日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001222/files/49616_34171.html
- ↑ 青空文庫(2010年10月26日作成。底本:「先住民と差別 喜田貞吉歴史民俗学傑作選」河出書房新社、2008(平成20)年1月30日初版)https://www.aozora.gr.jp/cards/001344/files/49805_41320.html
- ↑ 青空文庫(2017年12月26日作成。底本:「大隈重信演説談話集」岩波文庫、岩波書店、2016(平成28)年3月16日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001879/files/58085_63531.html
- ↑ 青空文庫(2016年1月1日作成。底本:「江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者」光文社文庫、光文社、2004(平成16)年7月20日初版1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/files/56646_58241.html
- ↑ 青空文庫(2013年11月5日作成。底本:「仏教人生読本」中公文庫、中央公論新社、2001(平成13)年7月25日初版)https://www.aozora.gr.jp/cards/000076/files/52342_51795.html
- ↑ 青空文庫(1998年11月19日公開、2008年10月5日修正。底本:「ちくま日本文学全集 夏目漱石」筑摩書房、 1992(平成4)年1月20日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/772_33100.html
- ↑ 青空文庫(2006年11月17日作成。底本:「石川三四郎著作集第二巻」青土社、1977(昭和52)年11月25日発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/001170/files/45522_25646.html
- ↑ 青空文庫(2010年7月18日作成、2011年4月4日修正。底本:「黒船前後・志士と経済他十六篇」岩波文庫、岩波書店、1981(昭和56)年7月16日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001263/files/50363_39816.html
- ↑ 青空文庫(2017年6月25日作成。底本:「痴人の愛」新潮文庫、新潮社、2011(平成23)年2月10日126刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001383/files/58093_62049.html
- ↑ 青空文庫(2004年5月18日作成。底本:「菊池寛全集 第二十四巻」高松市菊池寛記念館、文藝春秋、1995(平成7)年8月30日発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/000083/files/43057_15656.html
- ↑ 青空文庫(2015年2月17日作成。底本:「野村胡堂伝奇幻想小説集成」作品社、2009(平成21)年6月30日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001670/files/56115_56008.html