RAD Studio
開発元 | エンバカデロ・テクノロジーズ |
---|---|
対応OS | Microsoft Windows 11[1] |
対応言語 | 日本語、英語、フランス語、ドイツ語 |
種別 | 統合開発環境 |
ライセンス | プロプライエタリ・ライセンス |
公式サイト | www.embarcadero.com/jp/products/rad-studio |
RAD Studioは、エンバカデロ・テクノロジーズ社のDelphi/C 統合開発環境である。同社の代表製品である「Delphi」を中心に、C/C およびHTML開発機能を備えたRADツールで、フォーム上に各種ソフトウェアコンポーネントやGUIウィジェット(部品)を貼り付けていくスタイルの直感的なユーザインタフェース設計を可能としている。
特徴
[編集]長所
[編集]- 単一のコードベース、単一のプロジェクトチームでマルチデバイス (Windows、macOS、iOS、Android、Linux) のサポートが実現できる。
- RAD対応環境であり、かつVisual Basicのようなランタイムライブラリの別途配布も不要(実行ファイルに結合可能)である。
短所
[編集]- 開発環境としてサポートされるのはWindowsのみ。IntelliJ IDEAやEclipseなどとは違い、macOSやLinuxは使えない。
- ランタイムライブラリを結合すると実行ファイルが大きくなる。
歴史
[編集]RAD Studio 以前
[編集]Delphi のバージョン 7 で初めて Studio の名称が用いられた。ただしエンバカデロ・テクノロジーズによる再販版では Studio の文言はなくなっている。
その後、Delphi 8、Delphi 2005 を経て、2006 で C Builder と統合された「Borland Developer Studio」が登場した。これが「RAD Studio」の前身となる。
なお、インストール時のフォルダ名などに見られる RAD Studio の内部バージョンは BDS の通算バージョンである。
バージョン | 製品 |
---|---|
1.0 | C# Builder 1.0 |
2.0 | Delphi 8 .NET |
3.0 | Delphi 2005 |
4.0 | Borland Developer Studio 2006 / Turbo Delphi / Turbo Delphi for .NET / Turbo C / Turbo C# |
RAD Studio 2007
[編集]2007年9月6日に 「RAD Studio 2007」(内部バージョン: 5.0)が発表された。
Windows Vista に対応。Delphi 2007 for Win32、C Builder 2007、Delphi 2007 for .NET が含まれる。
RAD Studio 2009
[編集]2008年12月2日に 「RAD Studio 2009」(内部バージョン: 6.0)が発表された。
Delphi 2009、C Builder 2009、Delphi Prism 2009 (.NET) が含まれる。
RAD Studio 2010
[編集]2009年8月25日に 「RAD Studio 2010」(内部バージョン: 7.0)が発表された。
Windows 7 に対応。Delphi 2010、C Builder 2010、Delphi Prism 2010 が含まれる。開発環境をインストールできる OS として Windows 2000 以前はサポートされなくなった。
RAD Studio XE
[編集]2010年9月2日に 「RAD Studio XE」(内部バージョン: 8.0)が発表された。
XE は「Cross Platform Edition」の略である。Delphi XE、C Builder XE、RadPHP XE、Delphi Prism XE が含まれる。
Starter 版とアカデミック版を除き、旧バージョン (Delphi 7, C Builder 6, RAD Studio 2007, 2009, 2010) のライセンスが付属するようになった。ただし、RAD Studio 2007 に含まれる Delphi for .NET のライセンスは付属しない。
RAD Studio XE 2
[編集]2011年9月1日に 「RAD Studio XE 2」(内部バージョン: 9.0)が発表された。
Delphi XE2、C Builder XE2、RadPHP XE2、Prism XE2 が含まれる。新たに FireMonkey フレームワーク[2]を導入したことにより、HD や 3D に対応した高品質な UI の設計や、マルチプラットフォームアプリケーションの開発が可能になった。Delphi に Windows 64bit、OS X 用の各コンパイラが追加され、iOS 開発用の Free Pascal (FPC) ツールチェインが用意された。C Builder にも OS X 用のコンパイラが追加された。また、製品エディションとして Enterprise と Architect の間に Ultimate が追加された。
RAD Studio XE 3
[編集]2012年9月4日に 「RAD Studio XE 3」(内部バージョン: 10.0)が発表された。
Delphi XE3、C Builder XE3、HTML5 Builder、Prism XE3 が含まれる。Windows 8 に対応。新たに「Metropolis UI」を導入したことにより、タッチ対応、ライブタイルサポートなどを実装した Windows 8 デスクトップアプリケーションの開発が可能になった。ただし WinRT には対応しない。Delphi XE2 にあった FPC ツールチェインによるiOS開発環境は廃止されている。開発環境をインストールできる OS として Windows XP 以前はサポートされなくなった。
2012年12月10日にリリースされた Update 1 により、C Builder に Windows 64bit 用のコンパイラ (Clang ベース) が追加された。
RAD Studio XE 4
[編集]2013年4月22日に 「RAD Studio XE 4」(内部バージョン: 11.0)が発表された。
Delphi XE4、C Builder XE4、HTML5 Builder が含まれる。DelphiにiOSデバイス用およびシミュレータ用のコンパイラが追加された。Prism は含まれなくなった。
RAD Studio XE 5
[編集]2013年9月11日に 「RAD Studio XE 5」(内部バージョン: 12.0)が発表された。
Delphi XE5、C Builder XE5、HTML5 Builder が含まれる。DelphiにAndroid用コンパイラが追加された。
2013年12月11日にリリースされた Update 2 により、C BuilderにiOSデバイス用のコンパイラ (Clang ベース) が追加された。
アカデミック版にも旧バージョンのライセンスが付属するようになった。
RAD Studio XE 6
[編集]2014年4月16日に 「RAD Studio XE 6」(内部バージョン: 14.0)が発表された。
Delphi XE6、C Builder XE6、HTML5 Builder が含まれる。Windows 8.1 に対応。C BuilderにAndroid用コンパイラ (Clang ベース) が追加された。
RAD Studio XE 7
[編集]2014年9月2日に 「RAD Studio XE 7」(内部バージョン: 15.0)が発表された。
Delphi XE7、C Builder XE7、HTML5 Builder が含まれる。開発環境をインストールできる OS として Windows Vista 以前はサポートされなくなった。
RAD Studio XE 8
[編集]2015年4月7日に 「RAD Studio XE 8」(内部バージョン: 16.0)が発表された。
Delphi XE8、C Builder XE8、HTML5 Builder が含まれる。DelphiにiOSデバイス用 64bit コンパイラが、C Builder用にもClangベースのiOSデバイス用 64bit コンパイラが追加された。
RAD Studio 10 Seattle
[編集]2015年9月1日に 「RAD Studio 10 Seattle」(内部バージョン: 17.0)が発表された[3]。
Delphi 10 Seattle、C Builder 10 Seattle、HTML5 Builder が含まれる。Windows 10 に対応。C BuilderにClangベースの新しい Win32 用コンパイラが追加された。これにより、Win32 / Win64 でほぼ同一のコードを書くことができるようになった。従来のWin32用コンパイラである BCC32 も引き続き利用することができる。
RAD Studio 10.1 Berlin
[編集]2016年4月20日に 「RAD Studio 10.1 Berlin」(内部バージョン: 18.0)が発表された[4]。
Delphi 10.1 Berlin、C Builder 10.1 Berlin、HTML5 Builder が含まれる。このバージョンからUltimateエディションが廃止されている。
2016年8月22日以降、DelphiとC Builderの Starter Edition が 無償で入手できるようになっているが、RAD Studio の Starter Edition は存在しない。ただし、DelphiとC Builderを同一 IDE 内にインストールすることは可能である[5]。
Update 2 で Windows 10 の Anniversary Update に正式対応したため、Update 2 には「Anniversary Edition」という名称がついている。
RAD Studio 10.2 Tokyo
[編集]2017年3月22日に 「RAD Studio 10.2 Tokyo」(内部バージョン: 19.0)が発表された[6]。
Delphi 10.2 Tokyo、C Builder 10.2 Tokyo、HTML5 Builder が含まれる。Enterprise 以上の SKU にDelphi用 LLVM エンジンベースの Linux 64ビット (X64) コンパイラが追加された (Ubuntu 16.04 LTS / RedHat Enterprise Linux 7 対応)。
2017年12月13日にリリースされた Release 2 (10.2.2) において、Enterprise 以上の SKU で RAD Server の単一サイト/単一サーバー配置ライセンスが含まれるようになった。
RAD Studio 10.3 Rio
[編集]2018年11月22日に「RAD Studio 10.3 Rio」(コードネーム: Carnival、内部バージョン: 20.0)が発表された[7]。
Professional Edition にあった別売の FireDAC Client/Server Add-on Pack が廃止され、フル機能の FireDAC を利用するためには Enterprise Edition 以上の SKU が必要となった。製品に HTML5 Builder が含まれなくなった。
RAD Server の配置ライセンスが変更になり、Enterprise ではシングルサイト配置ライセンスが、Architect ではマルチサイト配置ライセンスが一つ含まれるようになった。
Delphi 10.3 Rio、C Builder 10.3 Rio が含まれる。Enterprise 以上の SKU には加えて RAD Server が含まれ、Architect にはさらに Sencha ExtJS Professional および Aqua Data Studio が含まれる。
RAD Studio 10.4 Sydney
[編集]2020年5月27日に「RAD Studio 10.4 Sydney 」(コードネーム: Denali、内部バージョン: 21.0)が発表された[8]。
オンライン/オフラインインストーラが統合された。GetIt パッケージマネージャが強化され、パッケージマネージャ上でパッチが提供されるようになった。
Delphi 10.4 Sydney、C Builder 10.4 Sydney が含まれる。Enterprise 以上の SKU には加えて RAD Server が含まれ、Architect にはさらに Sencha ExtJS Professional および Aqua Data Studio が含まれる。
RAD Studio 11.0 Alexandria
[編集]2021年9月10日に「RAD Studio 11.0 Alexandria」(コードネーム: Olympus、内部バージョン: 28.0)が発表された[9]。
IDE が高 DPI に対応。フォームデザイナが VCL スタイルを使用してレンダリングできるようになった。
Delphi 10.4 Alexandria、C Builder 10.4 Alexandria が含まれる。Enterprise 以上の SKU には加えて RAD Server が含まれ、Architect にはさらに Sencha ExtJS Professional および Aqua Data Studio が含まれる。
RAD Studio 12 Athens
[編集]2023年11月8日に「RAD Studio 12 Athens」(コードネーム: Yukon、内部バージョン: 29.0)が発表された[10]。
機能マネージャが刷新されている。
2024年4月5日にリリースされた Release 1 (12.1) において、 エディタの分割が可能となった。
Delphi 12 Alexandria、C Builder 12 Alexandria が含まれる。Enterprise 以上の SKU には加えて RAD Server が含まれ、Architect にはさらに Sencha ExtJS Professional および Aqua Data Studio が含まれる。
脚注
[編集]- ^ RAD Studio: 動作環境 - エンバカデロ・テクノロジーズ
- ^ ちなみに FireMonkey という名前は2016年の丙申 (ひのえさる) に由来している。
- ^ “エンバカデロ、Windows 10対応のマルチデバイスネイティブ開発環境の新バージョン「RAD Studio 10 Seattle」を発表”. 2016年5月7日閲覧。
- ^ “エンバカデロ、マルチデバイス向けビジュアル開発ツールの新リリース「RAD Studio 10.1 Berlin」を本日より販売開始”. 2016年5月7日閲覧。
- ^ “Starter Edition ユーザーのための Delphi / C Builder 10.2 Tokyo Starter Edition (無償!) 入手ガイド [JAPAN]”. 2017年6月3日閲覧。
- ^ “RAD Studio 10.2 is here - Get Delphi Linux Server Support today!”. 2017年3月23日閲覧。
- ^ “エンバカデロ、RAD Studio 10.3を11月22日から提供開始 ~Webアプリ開発のSenchaとの連携性アップや最新OSへの対応強化~”. 2018年11月22日閲覧。
- ^ “エンバカデロ、RAD Studio 10.4 Sydneyを提供開始 4K対応のモダンUI開発やLLDBベースの新しいデバッガ搭載など 新機能追加”. 2020年5月28日閲覧。
- ^ “エンバカデロ、Windows 11やApple M1に対応した 新バージョン『RAD Studio 11 Alexandria』提供開始”. 2021年9月11日閲覧。
- ^ “『RAD Studio 12 Athens』の提供開始”. 2023年11月8日閲覧。