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LaTeX

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
LaTeX
The LaTeX Project logo
作者 レスリー・ランポート (2.09 まで)
開発元 The LaTeX Project (2ε から)
初版 1984年 (40年前) (1984)
最新版
LaTeX2ε
最新評価版
LaTeX3
リポジトリ ウィキデータを編集
プログラミング
言語
TeXプリミティブ、expl3
対応OS クロスプラットフォーム
サポート状況 開発中
種別 組版処理、TeX マクロパッケージ
ライセンス LPPL英語版
公式サイト www.latex-project.org
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LaTeX(ラテフ、ラテックなど。詳細は後述)とは、レスリー・ランポートによって開発されたテキストベースの組版処理システムである。電子組版ソフトウェアTeXにマクロパッケージを組み込むことによって構築されており、単体のTeXに比べて、より手軽に組版を行うことができるようになっている。LaTeXと表記できない場合は「LaTeX」と表記する。

TeX の各派生エンジンに対しても LaTeX と同等なフォーマットが提供されていることがほとんどであり、多くの場合において LaTeX という名称はそれらも含めた総称として用いられている。

専門分野にもよるが、学術機関においては標準的な論文執筆ツールとして扱われている。

変換の様式。日本においてはdvipdfmではなくその拡張版のdvipdfmxを用いる場合が多い。

読み方

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LaTeXの生みの親レスリー・ランポートは、LaTeXの発音について自著の中で、

LaTeXを使っていくうえでの難問の1つに、どう発音するかという問題がある。しかし、これについては、私は何もいわないことにする。名前というのは規則や命令によって決められるものではなく、使われているうちに自然に決まってくるものだからである。TeXはふつう“テック”と発音されているので、論理的に考えれば、LaTeXは“ラーテック”や“ラテック”、“レイテック”などが妥当といえる。しかし、言葉というものはつねに論理的であるとは限らないので、“レイテックス”と発音してもあながち間違いとはいえないだろう。

—レスリー・ランポート(『文書処理システム LaTeX 2ε』[1]より)

と述べている。日本語では「ラテフ」や「ラテック」などと呼ばれる[2]

成立の背景と開発者

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LaTeX以前に、“TeX”という名の数式の処理に優れる組版ソフトウェアがあり、そのTeXを使ってもっと簡単に論文やレポートを作成したいという要望があった。LaTeXはその要望に応えて開発されたものであり、レスリー・ランポートがTeXの上にマクロパッケージを組み込むことで構築したものである。さらにLaTeXでは、TeXの煩雑な部分の修正も行っている(たとえば、累乗根分数の設定方法など)。またTeXやそれを基にしたLaTeXは主に米国での表記法を基に作られたもので、日本の初等教育中等教育での数式の書き方とは一部異なる[注 1][注 2]。例を挙げれば、日本の初等教育・中等教育では等号附き不等号として、「≦」と「≧」が、近似記号として「≒」が、相似記号として「」が用いられる。一方でTeXやLaTeXの標準では、等号附き不等号として「」(\leqまたは\le)と「」(\geqまたは\ge)が、近似記号として「」(\approx) や「」(\sim)が、相似記号として「」(\sim) が用いられる。日本で使われる記号を使う必要がある場合は、amssymbパッケージを用いることで「」(\leqq)、「」(\geqq)、「」(\fallingdotseq) が使用できる。

動作環境と各種バージョン

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LaTeXソフトウェアは、LaTeX Project Public License英語版 (LPPL)[3]に規定されたライセンスで提供されたフリーソフトウェアである。現在、macOSSolarisなどのUNIXLinux OSBSD系OSOpenSolarisなどのUNIX 互換OS、そしてMicrosoft Windowsなど、多くのオペレーティングシステム上で利用できる。

現在のバージョンは1993年にリリースされた LaTeX2ε(ラテック・トゥー・イー)である[4]。組版処理による表記ができないプレーンテキスト電子メールなどの場合には“LaTeX2e”と表記する[5]

現在、ドナルド・クヌースによるオリジナルの TeX 処理系が使われることはほとんどなく、pTeXLuaTeX のような派生処理系が多く用いられる[注 3]が、ほとんどの派生処理系には、それぞれ対応して pLaTeX や LuaLaTeX のように LaTeX と同等のフォーマットが提供されており、LaTeX という名称は大抵それらの総称として用いられる[注 4]

特徴

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LaTeX には以下のような特徴がある。画面操作(GUIベース)による一般的なワープロソフトとの違いは多い。

  • ファイル作成時に記述するファイル形式と閲覧ファイル形式が異なる。
    • ソースコードを作成してコンパイル[注 5]を行うことで、初めてDVI[注 6]PDF[注 7]のような閲覧用のファイルを得ることができる。
    • 一度コンパイルを行わないとどういった出力が得られるかがわかりにくい。
    • ソースコードをインクルード[注 8]することで、過去の文章を簡単に再利用できる。また、大規模な文書の場合に作業を分割して並行作業することが容易である。
    • 一般的なプログラミング言語におけるライブラリに当たる、スタイルファイルを用いることで文書の表現力を拡張しやすい。
    • PerlLuaなどのプログラミング言語と連携させることがワープロソフトで作成されたファイルと比べて容易である。
  • 組版性能が高い。DTPシステムとして使用される場合もある。
    • 一般向けの出版物の作成にも充分に耐えられるものであり、実際の出版例もある[6]
    • 数式の入力のためのコマンドが豊富に組み込まれており行いやすい。更に数式組版の性能は特に高い。
  • コマンドライン(CUI)の操作やソースコード作成に関する知識が必要となる点で、コンピュータ初心者にとって難易度が高いと感じることが多い。
  • ページ数が多い場合、画面操作(GUIベース)による文書作成に対して、ソースコードに基づく自動的組版は、非常に効率的である。ソースコード方式では、文書のページ数が幾ら膨大であっても、事前に文書スタイルさえ定義されていれば、CUI上のコマンド入力で一括して全てを組版することが可能である。従って、この利点を知っている研究者技術者からの受けは良い。
  • 図やイラストなどはtgif英語版を使って作成し、Encapsulated PostScript形式で保存することで、dvi2psコマンド実行時に単一のPostScript形式ファイルに変換することが出来る。

数式組版性能が非常に高いという特徴から、自然科学・応用科学系の中でも数学を多用する分野では学会提出の資料の標準形式として広く用いられている。雑誌に掲載するための体裁を整えたテンプレートの配布を行っている学会もある[注 9]。ただし、自然科学・応用科学系でも化学式を多用する分野では、Office Open XML形式(.docx)などが使われる場合がある。ただし、LaTeXにはXϒMTeXmhchem のように化学式の入力を支援するパッケージも存在する。

入力と出力の具体例

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以下はLaTeX用の入力の例[7]

\documentclass[12pt]{article}
\title{\LaTeX}
\date{}
\begin{document}
\maketitle \LaTeX{} is a document preparation system for the \TeX{} 
typesetting program. It offers programmable desktop publishing 
features and extensive facilities for automating most aspects of 
typesetting and desktop publishing, including numbering and 
cross-referencing, tables and figures, page layout, bibliographies, 
and much more. \LaTeX{} was originally written in 1984 by Leslie 
Lamport and has become the dominant method for using \TeX; few 
people write in plain \TeX{} anymore. The current version is 
\LaTeXe.
\newline
% This is a comment, it is not shown in the final output.
% The following shows a little of the typesetting power of LaTeX
\begin{eqnarray}
E &=& mc^2                              \\
m &=& \frac{m_0}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}
\end{eqnarray}
\end{document}

上記のソースコードをLaTeXで処理することで、以下のような出力が得られる。

LaTeX出力例

拡張機能

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LaTeXには多くのマクロパッケージが存在する。一例を挙げる。

脚注

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注釈

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  1. ^ 日本の初等教育・中等教育での数式表記は JIS Z 8201 を基準にしている。2006年1月20日に確認が行われている JIS Z 8201-1981 (JIS Z 8201:1981) と国際標準である ISO 31-11:1992 とでは、表記が一部異なっている。
  2. ^ 日本の初等教育・中等教育での数式用に記号の形を調整するマクロとして、初等数学プリント作成マクロ emath がある。
  3. ^ 他に、日本語の組版のために開発されたものとして NTT JTeX があり、これにも対応する NTT JLaTeX があるが、いずれも現在は更新等されていない。
  4. ^ pLaTeX がリリースされた当初はまだ LaTeX2ε は世に出ていなかったが、1995年に pLaTeX2ε がリリースされた。なお、「pLaTeX2ε」は株式会社アスキー登録商標であり、「ピーラテックツーイー」と読むのが正しいとされている。なお、LuaLaTeX は最初から LaTeX2ε に同等なものとして開発されている。
  5. ^ ソースコードを DVI などの文書ファイル形式に変換すること。
  6. ^ Microsoft Word でしか開くことができなかった旧型式のdocファイルなどとは異なり、処理系に依存しないとされるファイル形式。なお、新形式のdocx (Office Open XML Document) は処理系に依存せず開くことができる。
  7. ^ 処理系に依存しない標準規格。
  8. ^ 他のソースコードの記述を自動的に読み込む仕組み。
  9. ^ 例えば日本数学会電子情報通信学会

出典

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参考文献

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  • 奥村晴彦、黒木裕介『LaTeX2ε 美文書作成入門』(改訂第6版)技術評論社、2013年。ISBN 978-4-7741-6045-0https://books.google.co.jp/books?id=sXcWAgAAQBAJaTeX2ε 美文書作成入門&rft.aulast=[[奥村晴彦]]&rft.au=[[奥村晴彦]]&rft.au=黒木裕介&rft.date=2013&rft.edition=改訂第6版&rft.pub=[[技術評論社]]&rft.isbn=978-4-7741-6045-0&rft_id=https://books.google.co.jp/books?id=sXcWAgAAQBAJ&rfr_id=info:sid/ja.wikipedia.org:LaTeX"> 
  • Lamport, Leslie『文書処理システム LaTeX』Edgar Cooke・倉沢良一 監訳、大野俊治・小暮博道・藤浦はる美 訳、アスキー、1990年。ISBN 978-4-7561-0784-8aTeX&rft.aulast=Lamport&rft.aufirst=Leslie&rft.au=Lamport, Leslie&rft.date=1990&rft.pub=[[アスキー (企業)|アスキー]]&rft.isbn=978-4-7561-0784-8&rfr_id=info:sid/ja.wikipedia.org:LaTeX"> 
  • レスリー・ランポート『文書処理システム LaTeX 2ε』阿瀬はる美 訳、ピアソン、1999年。ISBN 4-89471-139-7aTeX 2ε&rft.aulast=レスリー・ランポート&rft.au=レスリー・ランポート&rft.date=1999&rft.pub=[[ピアソン (企業)|ピアソン]]&rft.isbn=4-89471-139-7&rfr_id=info:sid/ja.wikipedia.org:LaTeX"> 
  • 乙部厳己, 江口庄英:「pLATEX2ε for WINDOWS Another Manual 〈Vol.1〉Basic Kit 1999」、ソフトバンククリエイティブ、 ISBN 978-4797307184 (1998年10月).
  • 乙部厳己, 江口庄英:「pLATEX 2ε for Windows Another Manual〈Vol.2〉Extended Kit」、ソフトバンククリエイティブ、 ISBN 978-4797302677 (1997年5月).
  • 吉永徹美:「LaTeX2ε辞典 増補改訂版」、翔泳社、ISBN 978-4-79815707-8 (2018年8月24日).
  • 奥村晴彦、黒木裕介:「[改訂第9版]LaTeX美文書作成入門」、技術評論社、ISBN 978-4-297-13889-9(2023年12月9日).

関連項目

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外部リンク

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