コンテンツにスキップ

LM-2008

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
LM-2008(71-153)
ЛМ-2008
LM-2008(サンクトペテルブルク
2012年撮影)
基本情報
製造所 ペテルブルク路面電車機械工場
製造年 2008年 - 2012年
製造数 62両
主要諸元
編成 ボギー車(単車、片運転台)
軌間 1,524 mm
電気方式 直流550 V
架空電車線方式
最高速度 75.0 km/h
車両定員 110人(乗客密度5人/m2時)
165人(乗客密度8人/m2時)
着席28人
車両重量 19.5 t
編成長 15,500 mm
全幅 2,550 mm
全高 3,150 mm
床面高さ 350 mm(低床部分)
750 mm(高床部分)
(低床率40 %)
車輪径 620 mm
軸重 4.9 t
最大6.7 t
主電動機 ATD-3.2(誘導電動機
主電動機出力 55 kw
出力 220 kw
制御方式 VVVFインバータ制御IGBT素子)
制動装置 回生ブレーキディスクブレーキ電磁吸着ブレーキ
備考 主要数値は[1][2][3][4][5]に基づく。
テンプレートを表示

LM-2008ロシア語: ЛМ-2008)は、かつてロシア連邦サンクトペテルブルクに存在した輸送用機器メーカーのペテルブルク路面電車機械工場(Петербургский трамвайно-механический завод, ПТМЗ)が製造した路面電車車両バリアフリーに対応した部分超低床電車で、71-153と言う形式番号も有している[1][2][3][4][5]

概要

[編集]

ペテルブルク路面電車機械工場では、2006年に量産が始まった2車体連接車LVS-2005を皮切りに、車内の床面高さの一部を低くしバリアフリーに対応させた部分超低床電車の展開に着手した。その中でLM-2008は1両での運転が可能なボギー車(単車)として設計された形式である[1][2][3][5]

ループ線が存在する路線での運行に適した片運転台の車両で、右側面4箇所にプラグドア方式の乗降扉を有し、そのうち中央の2箇所は床上高さ350 mmの低床部分に設置されている。この低床部分は車内全体の40 %を占めており、幅が広い乗降扉を含めてベビーカー車椅子利用客の利用に適した構造となっている。一方、車内全体の60 %はステップを介する必要がある高床部分となっているが、ボナトランス(BonaTrans)が製造を手掛けた2段サスペンションや弾性車輪を備えた動力台車を用いる事で、旧来の路面電車(950 mm)から床上高さを750 mmに抑えている。車体の外板はポリマー材料によって作られており、多湿な環境下でも腐食を抑え車体の耐久性が向上している[3][5]

各台車には2基の誘導電動機ディスクブレーキが備わっている。制動装置としては回生ブレーキの他、非常用の電磁吸着ブレーキが搭載されている[2][3][5]

車内照明には蛍光灯が用いられ、暖房・換気機能を搭載した空調装置が備わっている一方、運転室には冷暖房双方に対応した空調装置が独自に設置されている。また、車内外には安全対策として監視カメラが設置されている他、乗降扉にも挟み込み防止対策が施されている[2][3][5]

運用・導入都市

[編集]

2008年に認可が下りた事で同年から製造が開始され、サンクトペテルブルク市電を始めロシア連邦ウクライナ各都市へ向けての展開が行われた。基本形式である71-153に加えて総括制御による連結運転が可能な機器を備えた71-153.3も展開され、2010年モスクワ市電向けに21両が製造された。だが、需要減少や資金難により2012年をもって製造は中断し、翌2013年には製造元のペテルブルク路面電車機械工場自体が倒産した。その影響で保守や予備部品確保が困難になった事からモスクワモスクワ市電)に導入された車両については営業運転から離脱し、1両を除いて2018年以降ニジニ・ノヴゴロドニジニ・ノヴゴロド市電)やウリヤノフスクウリヤノフスク市電)への譲渡が行われている[注釈 1]。以下に示す「都市」および「導入車両数」は、この譲渡分を除いた製造当初のものである[1][4][6][7][8]

形式 都市 導入車両数
71-153 ロシア連邦 サンクトペテルブルク
(サンクトペテルブルク市電)
33両
モスクワ
(モスクワ市電)
2両
クラスノヤルスク
(クラスノヤルスク市電)
1両
ニジニ・ノヴゴロド
(ニジニ・ノヴゴロド市電)
1両
トゥーラ
(トゥーラ市電)
1両
ウクライナ マリウポリ
(マリウポリ市電)
2両
ドネツィク
(ドネツィク市電)
1両
71-153.3 ロシア連邦 モスクワ
(モスクワ市電)
21両

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 一部車両は営業運転用ではなく部品取り用として譲渡された。

出典

[編集]
  1. ^ a b c d 服部重敬「定点撮影で振り返る路面電車からLRTへの道程 トラムいま・むかし 第10回 ロシア」『路面電車EX 2019 vol.14』、イカロス出版、2019年11月19日、100頁、ISBN 978-4802207621 
  2. ^ a b c d e Подвижной состав”. ГЭТ Электротранспорт Санкт-Петербурга. 2020年4月14日閲覧。
  3. ^ a b c d e f Вагон трамвайный пассажирский четырехосный с асинхронным тяговым приводом Модель 71-153” (ロシア語). ПТМЗ. 2009年4月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月14日閲覧。
  4. ^ a b c ЛМ-2008 (71-153)”. Трамвайные вагоны – Твой Транспорт. 2018年2月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月14日閲覧。
  5. ^ a b c d e f 11 июня 2008 года состоялась презентация нового трамвайного вагона ЛМ-2008 (модель 71-153) производства ОАО "Петербургский трамвайно-механический завод" (ОАО "ПТМЗ").”. Advis.ru (2018年6月11日). 2020年4月14日閲覧。
  6. ^ МОСКВА ПОДАРИТ НИЖНЕМУ НОВГОРОДУ 22 ТРАМВАЙНЫХ ВАГОНА”. РЕПОРТЁР-НН (2007年12月15日). 2020年4月14日閲覧。
  7. ^ Андрей Сазонов (2018年8月7日). “В Ульяновск поступили 11 низкопольных трамваев”. АО «Коммерсантъ». 2020年4月14日閲覧。
  8. ^ Павел Яблоков (2020年1月20日). “Трамваи не робкого десятка. Нижний Новгород ждёт нового подарка из Москвы”. TR.ru. 2020年4月14日閲覧。