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HR 5183

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
HR 5183
星座 おとめ座[1]
見かけの等級 (mv) 6.30[2]
分類 G型の恒星
位置
元期:J2000
赤経 (RA, α) 13 46 57.12[3]
赤緯 (Dec, δ) 06 21 01.35[3]
固有運動 (μ) 赤経:-510.4 mas/年
赤緯:-110.2 mas/年[3]
年周視差 (π) 31.7568 ± 0.0390ミリ秒[3]
(誤差0.1%)
距離 102.7 ± 0.1 光年[注 1]
(31.49 ± 0.04 パーセク[注 1]
物理的性質
半径 1.53 0.06
−0.05
R[2]
質量 1.07 ±0.04 M[2]
表面重力 log g = 4.02 ±0.1 (cgs)[2]
自転速度 3 ±1 km/s [2]
スペクトル分類 G0V[3][4]または G0[2]
有効温度 (Teff) 5794 ±100 K[2]
金属量[Fe/H] 0.10 ±0.06[2]
年齢 77 14
−12
億年[2]
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HIP 67291
見かけの等級 (mv) 10.025[5]
分類 K型主系列星
位置
元期:J2000
赤経 (RA, α) 13 47 28.80[3]
赤緯 (Dec, δ) 06 18 56.367[3]
固有運動 (μ) 赤経:-509.4 mas/年
赤緯:-111.0 mas/年[6]
年周視差 (π) 31.9166 ± 0.0459ミリ秒[6]
(誤差0.1%)
距離 102.2 ± 0.1 光年[注 1]
(31.33 ± 0.05 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) 7.545 ±0.023[5]
物理的性質
半径 0.632 ±0.012 R[5]
スペクトル分類 K7Ve[6]
有効温度 (Teff) 4421 K[5]
金属量[Fe/H] 0.06[5]
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HR 5183とは、太陽系から103光年の距離にあるスペクトル分類がG型の恒星である。この星は付近にあるK型主系列星HIP 67291と距離の離れた連星系を構成している可能性があることが言及されている[2]。またHR 5183の周りには2019年に太陽系外惑星HR 5183 bが発見されている[2]

本項目ではHIP 67291や惑星についても併せて記述する。

HR 5183

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大きさの比較
太陽 HR 5183
太陽 Exoplanet

HR 5183はおとめ座にある6等星である[1]Vバンドにおける見かけの等級は6.3で[2]、スペクトル型はG0に分類されている[3][2]。この星は一般的な主系列星と比べて光度や半径が大きく、年齢は77 14
−12
億年と推定され、恒星の進化段階を少し進んだ状態にあると考えられている[2]。2003年のGrayらの研究や、それを引用したSIMBADの項目ではこの星をG0V型のG型主系列星に分類している[3][4]。一方で惑星の発見を報告した2019年のBluntらは、光度階級を付けずに単にG0型の恒星としている[2]

HR 5183は銀河面から200パーセク(約600光年)以上離れることのない軌道で銀河系中心を公転しており、厚い円盤英語版に属する可能性が高いとされる[2]。2014年の研究ではその運動に基づいて銀河ハローのメンバーかもしれないとされていたが[7]、年齢や金属量はハロー星の特徴に一致しておらず、2019年のBluntらの研究でガイア衛星のデータをもとに運動を再分析したところ、ハローではなく厚い円盤のメンバーという結果になった[2]

HR 5183の名は輝星星表に基づく。別名として、HD 120066(ヘンリー・ドレイパーカタログ)、HIP 67246(ヒッパルコス星表)、BD 07 2690(掃天星表), LHS 2798(ルイテンの固有運動カタログ), TIC 379117362(TESSのインプットカタログ)などがある[3]

HIP 67291

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大きさの比較
太陽 HIP 67291
太陽 Exoplanet

HIP 67291 はHR 5183の伴星と考えられている天体で、K型主系列星である[6]。伴星かどうかは確認されていないが、仮に伴星なら、現在HR 5183から1万5000天文単位以上離れた位置にあり、近点距離はおよそ1万天文単位と推定されている[2]。距離が離れすぎているため、後述する惑星HR 5183 bには直接的な影響は及ぼしていないと考えられている[2]

この恒星の存在自体は古くから認知されており、マックス・ヴォルフの固有運動星カタログにも記載されている。この星とHR 5183は固有運動年周視差が近いため、いくつかの文献でHR 5183の伴星と推測されてきた[2]。2019年のBluntらの研究ではガイア衛星のデータを用いてHIP 67291が重力的にHR 5183に束縛されているかどうか調査を行った。単純にデータの誤差のみを考慮した計算では、その確率は44%に留まった。

これらの現象が起きる事前確率が低いことを考えると、HIP 67291が伴星である事後確率は44%よりずっと高いはずだとされている[2]

別名としてBD 07 2692、LHS 2801、ウォルフ504 (Wolf 504) [6]、LDS 3101[7]などがある。

HR 5183 b

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HR 5183b
分類 太陽系外惑星
軌道の種類 HR 5183を公転
発見
発見年 2019年[2]
発見者 Blunt, S. ら[2]
発見方法 視線速度[2]
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 18 6
−4
au[2]
近点距離 (q) 2.88 0.09
−0.08
au[2]
離心率 (e) 0.84 ±0.04[2]
公転周期 (P) 74 43
−22
[2]
近点引数 (ω) 340 ±2 度[2]
前回近点通過 2018年1月2日±12日[2]
準振幅 (K) 38.25 0.58
−0.55
m/s[2]
HR 5183の惑星
物理的性質
質量 3.23 0.15
−0.14
MJ[2]
平衡温度 (Teq) 50-171 K[注 2][2]
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HR 5183 b は2019年にカリフォルニア工科大学のSarah Bluntらの研究チームによって視線速度法に基づいて発見が報告された太陽系外惑星で、HR 5183の周りにある[2][1]下限質量は3.2木星質量あり、公転周期が74 43
−22
年、軌道長半径18 6
−4
天文単位軌道離心率0.84±0.04の極端な楕円軌道を公転している[2]。この惑星の軌道を太陽系に当てはめると、近点と遠点の間で小惑星帯から海王星の軌道を往復することに相当する[1]。視線速度法で発見された惑星としては発見時点で最も公転周期が長い天体の1つであった[2]

HR 5183 bは2017年末か2018年初めに近点を通過し、観測される視線速度に大きな変動をもたらした。これに前後して行われた集中的な観測で下限質量、近点距離や離心率などの詳しい値が判明した[2]。近点通過時点でHR 5183は約20年間に渡って視線速度の追跡が行われており、数年前から惑星が存在する兆候がとらえられていた[1]

脚注

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  1. ^ a b c d パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ アルベドを0.5と仮定した場合の遠点と近点それぞれの理論上の平衡温度。

参考文献

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  1. ^ a b c d e “長楕円の軌道を描く系外惑星HR 5183 b”. アストロアーツ. (2019年9月3日). https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10815_hr5183b 2021年2月14日閲覧。 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak Blunt, S. et al. (2019). “Radial Velocity Discovery of an Eccentric Jovian World Orbiting at 18 au”. The Astronomical Journal 158: 181. arXiv:1908.09925. Bibcode2019AJ....158..181B. doi:10.3847/1538-3881/ab3e63. 
  3. ^ a b c d e f g h i j HR 5183”. SIMBAD, CDS. 2021年2月14日閲覧。
  4. ^ a b Gray, R. O. et al. (2003). “Contributions to the Nearby Stars (NStars) Project: Spectroscopy of Stars Earlier than M0 within 40 Parsecs: The Northern Sample. I.”. The Astronomical Journal 126: 2048. arXiv:astro-ph/0308182. Bibcode2003AJ....126.2048G. doi:10.1086/378365. 
  5. ^ a b c d e Houdebine, E. R. et al. (2019). “The Mass-Activity Relationships in M and K Dwarfs. I. Stellar Parameters of Our Sample of M and K Dwarfs”. The Astronomical Journal 158: 56. arXiv:1905.07921. Bibcode2019AJ....158...56H. doi:10.3847/1538-3881/ab23fe. 
  6. ^ a b c d e HIP 67291”. SIMBAD, CDS. 2021年2月14日閲覧。
  7. ^ a b Allen, C. and Monroy-Rodríguez, M. A. (2014). “An Improved Catalog of Halo Wide Binary Candidates”. The Astrophysical Journal 790: 158. arXiv:1406.5164. Bibcode2014ApJ...790..158A. doi:10.1088/0004-637X/790/2/158.