chmod
chmod(change mode、チェンジモード)は、UNIXおよびUNIX系オペレーティングシステムにおけるシェルコマンドの一種である。ファイルやディレクトリのファイルモード(ファイルパーミッションなど)を変更するのに使われる。
歴史
[編集]chmod コマンドは、AT&T の最初の UNIX(Research Unix V1)に既に備わっており、今も UNIX 系オペレーティングシステムで使われている。
使用法
[編集]chmod コマンドのオプション形式は次の通り。
$ chmod [options] mode file1 ...
現在のパーミッション設定を見るには、次のように入力する。
$ ls -l
オプション
[編集]主なオプションとして、次のものがある。
- -R: 再帰的にディレクトリとその配下のファイル群のモードを変更する。
- -v: Verbose(冗長)モード。処理中の全ファイル名をリスト表示する。
文字列によるモード指定
[編集]chmod では、全パーミッションと特殊モードを mode パラメータで表現する。ファイルやディレクトリのモードを指定する1つの方法としてシンボリックモードがある。シンボリックモードは、3つの部分からなる文字列で表される。
$ chmod [references][operator][modes] file1 ...
references はクラス(ユーザ、グループ、その他)を指定するのに使われる。references が指定されない場合、全クラスを意味する。以下の文字を使って指定する。
Reference | クラス | 説明 |
---|---|---|
u | ユーザ | ファイルの所有者 |
g | グループ | 所有者が属するグループ |
o | その他 | グループ以外の全ユーザ |
a | 全て | 上記3つ全て。ugo と指定するのと同じ |
operator はモードの処理方法を指定する。
Operator | 説明 |
---|---|
指定されたモードを指定されたクラスに追加する。 | |
- | 指定されたモードを指定されたクラスから削除する。 |
= | 指定されたモードが指定されたクラスの正確な内容となる。つまり、指定されなかったモードは削除され、指定されたモードだけが付与される。 |
modes はモードを指定する。基本パーミッションに対応して3つの基本モードがある。
Mode | 名称 | 説明 |
---|---|---|
r | リード | ファイルを読み出し可能、ディレクトリ内容を参照可能 |
w | ライト | ファイルやディレクトリに書き込み可能 |
x | 実行 | ファイルを実行可能、ディレクトリに移動可能 |
X | 特殊実行 | パーミッション自体ではないが、x の代わりに使うことができる。ディレクトリについては現在のパーミッションに関係なく実行パーミッションを付与するが、ファイルについては(クラスに関係なく)現在のパーミッションで実行パーミッションが設定されている場合のみ実行パーミッションを付与する。operator が ' ' で、-R オプションを使う場合のみ便利である。 |
s | setuid/gid | 後述 |
t | sticky | 後述 |
これら3要素で構成される文字列がシンボリックモードでのパーミッション指定として認識される。複数の変更があるときは、それらをカンマで連結して指定すればよい。
例
[編集]次の例は、sample という名前のファイルまたはディレクトリについて、ユーザクラスおよびグループクラスのリードパーミッションとライトパーミッションを付与するものである。
$ chmod ug rw sample
$ ls -ld sample
drw-rw---- 2 unixguy unixguy 96 Dec 8 12:53 sample
次の例は、全パーミッションを削除するもので、sample は読み出すことも書き込むことも実行することもできなくなる。
$ chmod a-rwx sample
$ ls -l sample
---------- 2 unixguy unixguy 96 Dec 8 12:53 sample
次の例は、ユーザおよびグループのパーミッションをリードと実行だけに設定する(ライトは不可とする)。
コマンド実行前の sample のパーミッション
$ ls -ld sample
drw-rw---- 2 unixguy unixguy 96 Dec 8 12:53 sample
$ chmod ug=rx sample
$ ls -ld sample
dr-xr-x--- 2 unixguy unixguy 96 Dec 8 12:53 sample
八進数によるモード指定
[編集]chmod コマンドは、三桁か四桁の八進数でモードを指定できる。これを絶対モード指定と呼ぶ。例えば、次のように指定する。
$ chmod 0664 sample
sample というファイルの setuid、setgid、sticky ビットが設定されていない場合、これは以下と等価である。
$ chmod 664 sample
あるいは
$ chmod r,-x,ug w sample
特殊モード
[編集]chmod コマンドは、ファイルやディレクトリの追加パーミッション(あるいは特殊モード)も変更可能である。シンボリックモードでは s が setuid と setgid モードを表し、t が sticky モードを表す。それぞれ、特定のクラスでのみ有効である。詳しくはファイルパーミッションを参照されたい。
多くのオペレーティングシステムでは絶対モードでの特殊モード指定が可能だが、一部では不可能なOSもあり、その場合はシンボリックモードでしか指定できない。
例
[編集]- chmod r file – 全てのリードパーミッションを付与
- chmod -x file – 全ての実行パーミッションを削除
- chmod u=rw,go= file – 所有者にはリード/ライトパーミッションをセットし、グループおよびその他については全パーミッションを削除
- chmod rw file – 全てのリード/ライトパーミッションを付与
- chmod -R u w,go-w docs/ – ディレクトリ docs とその配下の全ファイルについて、ユーザ(所有者)にはライトパーミッションを付与し、それ以外からはライトパーミッションを削除するよう変更
- chmod 666 file – 全てのリード/ライトパーミッションを付与
- chmod 0755 file – u=rwx (4 2 1),go=rx (4 1 & 4 1) と等価。0 は特殊モードを指定しないことを意味する。
- chmod 4755 file – 4 は setuid を意味する。
- find path/ -type d -exec chmod a-x {} \; – path/ 配下の全ディレクトリについて、a-x を設定する(ファイルのみの場合は '-type f')
- find path/ -type d -exec chmod 777 {} \; – path/ 配下の全ディレクトリについて、全パーミッションを付与する
- chmod -R u rwX,g-rwx,o-rwx <directory> – 所有者パーミッションはディレクトリについては rwx、ファイルについては rw を設定し、それ以外のパーミッションは --- とする。]
- chmod 777 file - すべての利用者にすべての権限を付与[1]
脚注
[編集]- ^ 「パーミッションなどを設定する!chmodコマンドの詳細まとめ【Linuxコマンド集】」2023年6月6日閲覧。
関連項目
[編集]- ファイルパーミッション
- chown - ファイルやディレクトリの所有者(ユーザ)を変更するコマンド
- chgrp - ファイルやディレクトリのグループを変更するコマンド
- cacls - Microsoft Windows NTおよびその後継OSでの類似コマンド。アクセス制御リスト (ACL) の変更を行う。
- ユーザー識別子とグループ識別子
外部リンク
[編集]- chmod(1) - Linux JM Project
- chmod(1) - OpenBSD(英語)
- chmod(1) - HMUGリファレンスマニュアル(英語)
- chmod(1) - Debianリファレンスマニュアル(日本語)
- GNU "Setting Permissions" manual
- Solaris 9 chmod man page(英語)
- Mac OS X chmod man page - アクセス制御リストもサポートしている。
- CHMOD-Win 3.0 — Windows の ACL と CHMOD のコンバーター(フリーウェア)