食性
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食性(しょくせい、feeding behaviours、food habit)とは、動物[注釈 1]の食物に関する性質のことである。動物は個体維持のために食物を食べるが、その種類や様式(食べ方)は、動物の種類によって異なり、非常に多様である。
食性による動物の分類
[編集]食物の種類を区別する食性(food habit)と摂食の方法を区別する採食習性(feeding habit)があるが、これらはしばしば混同され「食性」としてひとくくりにされる[1]。
食性(食餌性)の違いによる動物の分類と、それに対応する摂食食物を示す。
英語の接尾辞 -vore はラテン語の vorāre (ウォラーレ。「eat、食う、むさぼる」の意)を語源とし、動物の食性(食餌性)の種類(食性による分類)を示す名詞を形成する。同様の意義の形容詞を形成するのには、接尾辞 vorous を使用する。
左から順に、和名(不明なものあり)、英語名、対応する摂食食物、備考(※)である。
食性 | 英語 | 食物 | 補足 | |||
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食べ物による分類(狭義の食性[1]) | ||||||
動物食動物(広義の肉食動物) | carnivore | 動物全般 | ||||
(狭義の)肉食動物 | carnivore | 四肢動物 | 鳥獣食動物[1]、flesh eater[2]。 | |||
魚食動物 | piscivore | 魚類 | ||||
虫食動物 | insectivore | 昆虫など | ||||
molluscivore | 軟体動物 | 貝食性[1]。 | ||||
血食動物 | sanguinivore | 血液 | ||||
spongivore | 海綿動物 | |||||
ophiophagy | ヘビ | |||||
lepidophagy | 魚の鱗(うろこ) | 鱗食魚[3]。 | ||||
植物食動物(広義の草食動物) | herbivore | 植物全般 | ||||
(最も狭義の)草食動物 | graminivore | イネ目などの草本 | ||||
葉食動物 | folivore | 葉 | ||||
xylophagy | 木本 | シロアリ等による木食い。材食性[1]。 | ||||
花粉食動物 | palynivore | 花粉 | ||||
蜜食動物 | nectarivore | 蜜 | ||||
樹液食動物 | mucivore | 樹液、茎液 | ||||
果実食動物(果食動物) | frugivore | 果実 | ||||
穀物食動物(穀食動物) | granivore | 種子、穀物 | ||||
藻食動物 | algivore | 藻類 | ||||
雑食動物 | omnivore | 動物と植物 | ||||
土食動物 | limnivore | 土、泥 | ||||
デトリタス食動物 | detritivore | デトリタス | ||||
菌食動物 | mycovore | 真菌 | ||||
細菌食性生物 | bacterivore | 真正細菌 | ||||
腐食動物 | saprophagy | 死体や排出物など | 食糞など。 | |||
腐肉食動物(屍肉食動物) | scavenger | 腐肉(自ら殺していない動物) | 肉食の一部。 | |||
食べ方による分類(採食習性[1]) | ||||||
捕食動物 | predator | 自ら殺した動物 | 肉食の一部。 | |||
濾過摂食動物 | filter feeder | プランクトン、デトリタス | ||||
非選択的採食型(粗飼料食型、グレーザー、グレイザー) | grazer | 低質の植物(牧草など) | 草食の一部[4]。 | |||
選択採食型(濃厚食選択型、ブラウザー) | browser | 高質の植物(芽、若草、花など) | 草食の一部。グレイザーとブラウザーの中間型もある[4]。 |
- トロファラクシス(栄養交換) ‐ アリなどの昆虫にみられる口移しなどによる栄養の受け渡し。
- 繊毛粘液摂食、粘液摂食
- 乳、素嚢乳、乳離れ
- ペドファジー ‐ 若い動物や卵を選んで食す食性
- 胎盤食
- 異食症 - 動物にもみられる。Stone chewing(石食)
- オステオファジー(骨角食、骨噛み)
- 動物生薬学 ‐ 動物の生薬利用について[5]。
研究
[編集]85%の節足動物、6%の軟体動物、5%の脊椎動物を含む比例的にサンプリングされた1087分類群では、63%が肉食、32%が草食、3%が雑食で肉食性の分類群が多い[6]。この研究の筆頭著者の研究者は、最初の動物は肉食性であったとし、肉食性から草食への進化は、腸内で草を発酵させる腸内細菌叢(後腸発酵)、牛のように4つの胃をもつなどの特殊な内臓の進化、反芻・食糞などが必要であり、進化のハードルが高いことを示唆しているとしてる[7]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f 浦本昌紀「食性」『改訂新版 世界大百科事典』 。コトバンクより2024年1月3日閲覧。
- ^ 浦本昌紀「肉食動物」『改訂新版 世界大百科事典』 。コトバンクより2024年1月3日閲覧。
- ^ 落合明・尼岡邦夫「鱗食魚」『日本大百科全書(ニッポニカ)』 。コトバンクより2024年1月3日閲覧。
- ^ a b 板橋久雄・石橋晃「飼料学(31)―V. 産業動物 VI. 反芻動物(1)」『畜産の研究』第60巻第10号、養賢堂、2006年、1100-1108頁。
- ^ 大東, 肇 (1998). “チンパンジーの薬用植物利用に関する化学的・生態学的解析”. 質量分析(Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan) 46 (3): 173–177. doi:10.5702/massspec.46.173. ISSN 1340-8097 .
- ^ Román-Palacios, Cristian; Scholl, Joshua P.; Wiens, John J. (2019-08-01). “Evolution of diet across the animal tree of life” (英語). Evolution Letters 3 (4): 339–347. doi:10.1002/evl3.127. ISSN 2056-3744. PMC PMC6675143. PMID 31388444 .
- ^ The world's first animal was probably a carnivore サイト:サイエンス
関連事項
[編集]- phagy :英語版
- 捕食 / 捕食-被食関係
- 食物網(食物連鎖) / 生態ピラミッド / ニッチ(生態的地位)
- 蓼食う虫も好き好き
- くちばし ‐ 食性によって嘴の形状がかわる。
- 歯列 ‐ 食性によって歯の形状や摩耗がかわる。
- 労働寄生
- 食物選好テスト(選択採食性)
- 藻類食者(藻食動物)
- セストン(懸濁物) ‐ Suspension feeder(懸濁物食者)について