雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道
作者 | ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー |
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製作年 | 1844年 |
種類 | 油彩、キャンバス |
寸法 | 91 cm × 122 cm (36 in × 48 in) |
所蔵 | ナショナル・ギャラリー、ロンドン |
『雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道』(あめ じょうき そくど グレート・ウェスタンてつどう、英: Rain, Steam and Speed – The Great Western Railway)は、イギリスの画家ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーが1844年に描いた絵画。ロンドン、ナショナル・ギャラリーに収蔵されている。『雨、蒸気、スピード――グレート・ウェスタン鉄道』とも表記される[1]。
作品
[編集]雨が横殴りに降り、霧が一面に立ちこめる中で、本作が製作された当時、世界で最大の鉄道として名をとどろかせていたグレート・ウェスタン鉄道の黒色の蒸気機関車が、テームズ川に架かる鉄道橋の上を猛スピードで疾走してくる様子を、極端な遠近法で描いている[2][3][4]。
機関車の車体の前面に、実際には見えない位置にあるはずのボイラーの赤色の火を描き入れることによって、エンジンの力強さがいっそう強調されている[2][4]。機関車の上には、エンジンから出る蒸気がもくもくと立ちのぼっており、霧の向こうに消えている[4]。
本作に描かれているのは、ロンドンから西へ50キロメートルほど行ったところにあるメイデンヘッドの付近の情景である。2つの大きな楕円形のアーチで構成されたレンガ造りの橋は、技師イザムバード・キングダム・ブルネルの設計に基づいて工事が行われ、1839年に完成した[5]。
ターナーは、ヴァーニシング・デー[注釈 1]の折に、機関車の前を全速力で駆ける野ウサギを描き入れた。ウサギは、逃げ足が速いことから、スピードを表すシンボルとされる[5][6]。
この機関車が引っ張っている客車は、座席や屋根がない三等列車である[5]。
影響
[編集]版画家のフェリックス・ブラックモンは、1874年に開催された第1回印象派展に、ターナーによる本作を模写した銅版画『機関車、ターナーにもとづく』を出品している。
画家カミーユ・ピサロは、1870年から1871年にかけてロンドンに滞在し、ターナーによる本作をじっくり研究した際に、油彩画『ロードシップ・レーン駅、ダリッジ』を描いている[2]。
山下達郎は、1991年のアルバム『ARTISAN』で本作を題材とした楽曲『ターナーの汽罐車 -Turner's Steamroller-』を発表している。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 展覧会のオープニングに先立ち、会場内に搬入された作品に最後の手直しを行ったりするために設けられた期間。
出典
[編集]- ^ “「新しい表現を求めて-ターナーとセザンヌ」”. 静岡市美術館. 2019年3月23日閲覧。
- ^ a b c 『もっと知りたいターナー』 2017, p. 63.
- ^ “デジタル大辞泉プラスの解説”. コトバンク. 2019年3月23日閲覧。
- ^ a b c 浅井智誉子 (2015年7月). “【今月の1枚】ターナー《雨、蒸気、速力:グレート・ウェスタン鉄道》”. 大塚国際美術館. 2019年3月23日閲覧。
- ^ a b c 『もっと知りたいターナー』 2017, p. 62.
- ^ 『もっと知りたいターナー』 2017, p. 44.
参考文献
[編集]- 荒川裕子『もっと知りたいターナー 生涯と作品』東京美術、2017年10月。ISBN 978-4-8087-1094-1。