花茎
花茎(かけい、英: scape)とは、草本植物において、花をつけるが普通の葉をつけない茎のことである。花茎はエビネ(ラン科)やイチヤクソウ属(ツツジ科; 図)、タンポポ属(キク科)などさまざまな植物にみられる。このような植物では、葉は地表付近から生じている (根生葉)。
花茎に似た用語として、有花茎(ゆうかけい)と有花枝(ゆうかし)がある。多年生草本において、花をつける茎と決して花をつけない茎がある場合、前者を有花茎とよぶ。また木本において、花をつける枝と決して花をつけない枝がある場合、前者を有花枝とよぶ。有花茎や有花枝は、花をつけない茎や枝とは異なる形態を示すことがある。
花茎
[編集]花茎とは、草本植物において、普通葉をつけず先端に花をつける茎のことである[1]。花茎につく花は単一のこともあるし、複数の花がつく場合もある。花茎をもつ植物では、普通葉は根生葉となっている。
花茎をもつ植物として、エビネ属(ラン科; 下図1a)、ヒガンバナ属(ヒガンバナ科; 下図1b)、オウレン属(キンポウゲ科; 下図1c)、チャルメルソウ属(ユキノシタ科)、スミレ(スミレ科; 下図1d)、カタバミ(カタバミ科)、イチヤクソウ属(ツツジ科; 上図)、オオバコ属(オオバコ科; 下図1e)、タンポポ属(キク科; 下図1f)などがある[1][2]。
オランダイチゴ属(バラ科)やホシクサ属(ホシクサ科)などでは、花序の下に小型の葉がついているが、これらの葉は苞であり普通葉ではないため、花をつけた茎は花茎である[1](下図2a)。またキジムシロ(バラ科)やアズマギク(キク科)において、花をつけた茎には葉がつくが(そのため花茎ではない)、根生葉にくらべて明らかに小型の葉がついており、このような茎は花茎状 (scapoid) とよばれる[1] (下図2b)。
テンナンショウ属(サトイモ科)やガマ属(ガマ科)も花茎をもつが、葉の基部が鞘状に重なった偽茎によって花茎がつつまれている[1]。そのため、花茎ではなく普通葉が生じている茎のように見えることがある (図2c)。
一般的に「ニンニクの芽」とよばれるものはニンニク(ヒガンバナ科)の花茎であり、食用にされる[3](上図2d)。
有花茎
[編集]多年生草本において、花をつける茎と決して花をつけない茎が存在することがある。このような場合、花をつける茎は有花茎 (flowering stem)、花をつけない茎は無花茎 (nonflowering stem) とよばれる[1]。
有花茎と無花茎は、花の有無以外にも、茎の性質や高さ、毛の有無、葉の大きさや形などが異なる。キクザキイチゲ (キンポウゲ科; 図3) では、無花茎は毛を散生するが、有花茎は無毛である[1]。ヤハズハハコ(キク科)では、無花茎の葉が有花茎の葉よりも幅広く、頂端付近にまとまってつく[1]。
多年生草本の中には、発芽後すぐに有花茎を伸ばす種もあるし、当初は無花茎のみが存在し、一定期間後に有花茎を伸ばす種もある[1]。
有花枝
[編集]有花茎・無花茎(上記)と同様に、木本において、花をつける枝と決して花をつけない枝が存在することがある。このような場合、花をつける枝は有花枝 (flowering branch)、花をつけない茎は無花枝 (nonflowering branch) とよばれる[1]。
イロハモミジ (図4) やイタヤカエデ(ムクロジ科)では、無花枝の葉は有花枝の葉よりも大きい[1]。キイチゴ属やバラ属(バラ科)では、地下茎から伸びた最初の枝は無花枝であり、翌年にここから伸びる側枝が有花枝となる[1]。