コンテンツにスキップ

現住建造物等浸害罪

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
現住建造物等浸害罪
法律・条文 刑法119条
保護法益 公共の安全
主体
客体 現に人が住居に使用しまたは現に人がいる建造物、汽車、電車または鉱坑
実行行為 出水させて浸害
主観 故意犯
結果 抽象的危険犯
実行の着手 -
既遂時期 浸害した時点
法定刑 死刑または無期もしくは3年以上の懲役
未遂・予備 なし
テンプレートを表示

現住建造物等浸害罪(げんじゅうけんぞうぶつとうしんがいざい)は、日本刑法119条に規定された犯罪。出水させて、現に人が住居に使用しまたは現に人がいる建造物、汽車、電車または鉱坑を水浸しにする行為を内容とする。法定刑は死刑無期懲役、3年以上の有期懲役である。

解釈

[編集]

「出水させて」の意義

[編集]

「出水させて」とは、「人によって管理・制圧された水力を解放して氾濫させること」を指す[1]

「浸害」の意義

[編集]

「浸害」は水による被害のことで、建造物等損壊罪における「損壊」と同様、効用喪失させる一切の行為が含まれる。現住建造物等放火罪と同様、本罪についても人命の損失は問われないし、殺意の有無も問われない。

「浸害」の定義は、「客体が浸水することにより、その効用を減失・減損すること」[2]、あるいは「水力による客体の流出、損壊、その他の効用喪失」[1]などとされている。効用の喪失は一時的なものであっても差し支えないと解されている[1][2]

備考

[編集]

過失によるときは、本条ではなく、122条の過失建造物等浸害罪が適用される。

関連項目

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ a b c 高橋則夫『刑法各論』(第2版・2014、成文堂)469頁
  2. ^ a b 伊東研祐「ロー・クラス 刑法各論で考える(22)社会法益に対する罪3――公共危険罪3(放火罪3[延焼罪]・失火罪・出水罪・往来妨害罪1)」 法学セミナー 54(7), P106-111, 2009-07