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果菜類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
果菜から転送)
さまざまな果菜

果菜類(かさいるい、: fruit vegetables[1])とは、果実やそれに含まれる種子が食用部位となる野菜のことであり、キュウリカボチャインゲンマメエンドウナストマトピーマンオクラなどがある。実もの野菜、成り物野菜ともよばれる。メロンスイカイチゴはふつう果物として扱われるが、草本に実るため生産分野では野菜とされ、その中で果菜や果実的野菜(果物的果菜)に分類される。

以下では野菜の一型としての果菜類について解説するが、より広い意味で、果物野菜を合わせたものを果菜とよぶこともある[2]

定義

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野菜のうち、果実やそれに含まれる種子を食用部位とするものは果菜類とよばれる[3][2][4][5]。実もの野菜[6][7]、成り物野菜[8]とよばれることもある。果菜は、ナス類(ナス科; トマトピーマンなど)、ウリ類(ウリ科; キュウリスイカなど)、マメ類または莢菜類(マメ科; インゲンマメエンドウなど)、その他(オクライチゴなど)に分けられることもある[9][10][5][11]

野菜の定義は国や分野によってやや異なり、日本の生産分野では、草(草本植物)に由来するもののうち主食とはされず、低加工で利用されるものを野菜としている[10][12]。そのため、メロンスイカイチゴも野菜であり、その中では果菜に分類される。これらの果実は甘く、利用分野では野菜ではなく果物として扱われるため、特に「果実的野菜」や「果物的果菜」とよばれることがある(下表★)[10][13]。一方で、ウメワサビノキの果実は木(木本植物)に実るが甘くなく副食として利用されるため、野菜(果菜)として扱われることがある[14][15]

また、マメ科の作物のうち、未熟な果実種子野菜(果菜)とされるが、完熟した種子はしばしば主食的に扱われたり加工品原料とされ、ふつう穀類豆類として野菜とは分けて扱われる[10][4][16][17](下表は完熟利用のものも含む)。トウモロコシも熟した果実は穀類として扱われるが、広く食用とされるスイートコーンの未熟果は果菜とされ、また未熟な花穂(ベビーコーン、ヤングコーン[18])も利用される[10][4]

果菜は果実種子を食用とするが、トマトスイカイチゴなど成熟した果実を利用するものと、ピーマンキュウリエンドウサヤエンドウ)、オクラのように未熟果実を利用するものがある[4]

おもな果菜

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果菜に分類されることがある野菜には、下表のようなものがある[10][4][9][13][5][16]ナス科ウリ科マメ科のものが多い。★は甘く、消費分野ではふつう果物として扱われるが、日本の生産分野では「果実的野菜」(果物的果菜)に分類されるものを示す[10][13]。***は日本における指定野菜(消費量が多く、収穫量と出荷量が毎年調査される)、**は特定野菜(指定野菜に準ずる野菜; 特定地域に限るものもある)、*は地域特産野菜生産状況調査(調査は隔年)の対象種である(2024年現在)[19][20]

画像 名称[英名] 分類群[21][22] 果実の型
[その他の利用部]
利用[食用以外の利用]
ナス[9]***
eggplant
ナス科ナス属
Solanum melongena
漿果[23] 煮物炒め物揚げ物焼き物漬物など[9][24]
トマト[9]***
tomato
ナス科ナス属
Solanum lycopersicum
漿果[25] 生食、ソーススープケチャップジュースなど[9][26]
ペピーノ[9]
pepino
ナス科ナス属
Solanum muricatum
漿果[27] 生食など[9][28]
ナランジラ[9]
naranjilla
ナス科ナス属
Solanum quitoense
漿果[25] 生食、ジュースなど[9][29]
タマリロ[9](キダチトマト)
tamarillo
ナス科ナス属
Solanum betaceum
漿果[25] 生食など[9][30]
ジロ[31](アオナス、カザリナス、ヒラナス)
scarlet eggplant
ナス科ナス属
Solanum aethiopicum
漿果[25]
[葉]
煮物、蒸し物、漬物など[31][32]
テリハナス[33]
African eggplant
ナス科ナス属
Solanum macrocarpon
漿果[25]
[葉]
生食、スープ、など[34]
トマティーヨ[9](オオブドウホオズキ、ホオズキトマト)
tomatillo
ナス科イガホオズキ属
Physalis philadelphica
漿果[23][注 1] 生食、煮物、炒め物、ソースなど[9][35]
ブドウホオズキ[9](シマホオズキ、キボウホウグーズベリー)
Cape gooseberry
ナス科イガホオズキ属
Physalis peruviana
漿果[23][注 1] 生食、ジャム、ジュースなど[9][36][注 2]
ショクヨウホオズキ[5]
[strawberry tomato][38]
ナス科イガホオズキ属
Physalis pruinosa
漿果[25][注 1] 生食、煮物、砂糖漬け、酢漬けなど[39]
ピーマン[9]***[bell pepper
パプリカ[9]*
シシトウガラシ[9]**
トウガラシ[9][注 3]*[chili pepper
ナス科トウガラシ属
Capsicum annuum
漿果[23]
[葉]
生食、炒め物、煮物、揚げ物、香辛料など[40][41]
キュウリ[9]***
cucumber
ウリ科キュウリ属
Cucumis sativus
ウリ状果[25] 生食、漬物、炒め物など[42]
ニシインドコキュウリ[43](ガーキン)
West Indian gherkin
ウリ科キュウリ属
Cucumis anguria
ウリ状果[25] 生食、漬物など[44]
メロン[9]★**[melon
マクワウリ[9]oriental melon
シロウリ[9]*[oriental pickling melon
ウリ科キュウリ属
Cucumis melo
ウリ状果[25] 生食、漬物など[45][46][47]
スイカ[9]★**
watermelon
ウリ科スイカ属
Citrullus lanatus
ウリ状果[25](種子) 生食、種子を炒るなど[48]
ユウガオ[9]かんぴょう*)
ヒョウタン[9]bottle gourd
ウリ科ヒョウタン属
Lagenaria siceraria
ウリ状果[25] 煮物、和え物、寿司など
[容器、観賞用][49]
トウガン[9]*
wax gourd
ウリ科トウガン属
Benincasa pruriens
ウリ状果[25] 煮物、炒め物、漬物など[50]
ヤサイカラスウリ[51]
little gourd
ウリ科ヤサイカラスウリ属
Coccinia grandis
ウリ状果[25] 生食、煮物、砂糖漬けなど[51]
カボチャ[9][注 4]**[pumpkin
 ミニカボチャ*
 ズッキーニ*[zucchini
ウリ科カボチャ属
Cucurbita spp.
ウリ状果[25] 煮物、揚げ物、スープなど
[飼料、観賞用][9][52]
メロコトン[53]
cassabanana
ウリ科シカナ属[54]
Sicana odorifera
ウリ状果[25] 生食、スープ、煮物、ジャムなど[55]
ヘチマ[9]
sponge gourd
ウリ科ヘチマ属
Luffa aegyptiaca
ウリ状果[25] 酢の物、和え物、炒め物など
繊維、観賞用][56]
トカドヘチマ[57]
angled luffa
ウリ科ヘチマ属
Luffa acutangula
ウリ状果[25]
[葉]
煮物、カレーなど
[繊維、薬用][57]
ヘビウリ[16]
snake gourd
ウリ科カラスウリ属
Trichosanthes anguina
ウリ状果[25] スープ、炒め物など[58]
ハヤトウリ[9]
chayote
ウリ科アレチウリ属
Sicyos edulis
ウリ状果[25]
塊根、茎葉][59]
漬物、酢の物、煮物など[60][薬用、飼料、繊維][59][61]
ヤセイキュウリ[62][63][62](キクランテラ・ペダタ)
caigua
ウリ科バクダンウリ属
Cyclanthera pedata
ウリ状果[25] 生食、肉詰めなど
[薬用][62][63]
ニガウリ[9]**(ツルレイシ、ゴーヤ)
bitter melon
ウリ科ニガウリ属
Momordica charantia
ウリ状果[25] 炒め物、酢の物、漬物など
[観賞用][64]
ツンバカラウイラ[65][66](カックロール)
spiny gourd
ウリ科ニガウリ属
Momordica dioica
ウリ状果[25] カレーなど[65]
エジプトルピナス[67][注 5]
Egyptian lupine
マメ科ハウチワマメ属
Lupinus albus
種子[69] 塩漬けなど[67]
ラッカセイ[70][注 6](ナンキンマメ)
peanut
マメ科ナンキンマメ属
Arachis hypogaea
種子
[茎葉][69]
炒り豆、揚げ物、茹で物、ピーナッツバター、油原料など[71]
クラスタマメ[72][73](グアー)
cluster bean
マメ科クラスタマメ属
Cyamopsis tetragonoloba
豆果、種子
[葉][69][23]
サラダ、増粘多糖など[72][74]
ナタマメ[9]
sword bean
マメ科ナタマメ属
Canavalia gladiata
豆果、種子[69][23] 漬物、煮豆など[9][75]
タチナタマメ[76]
jack bean
マメ科ナタマメ属
Canavalia ensiformis
豆果、種子[69][23] 漬物、煮豆など[77]
ハッショウマメ[9]
velvet bean
マメ科トビカズラ属
Mucuna pruriens
種子[9] など[9][78]
シカクマメ[9]
winged bean
マメ科シカクマメ属
Psophocarpus tetragonolobus
豆果、種子
[茎葉、塊根[23][69][9]
和え物、炒め物、天ぷらなど[9][79]
キマメ[80]
pigeon pea
マメ科キマメ属
Cajanus cajan
豆果、種子
スプラウト、茎葉][69][23]
煮物、ダール、炒め物など
[飼料、薬用、繊維][80][81]
ダイズ[10]soybean
 枝豆**
マメ科ダイズ属
Glycine max
豆果、種子
スプラウト[69][23]
塩茹で、炒め物、揚げ物、豆腐納豆もやし味噌醤油原料など[82][83][84]
ホースグラム[85]
horse gram
マメ科キバナフジマメ属
Macrotyloma uniflorum
豆果
[葉][23][69]
煮豆など
[飼料など][85]
フジマメ[9]
hyacinth bean
マメ科フジマメ属
Lablab purpurea
豆果、種子
[スプラウト][69][23]
和え物、煮物など[9][86]
ササゲ[5]
cowpea
マメ科ササゲ属
Vigna unguiculata
豆果、種子
[茎葉][69][23]
和え物、炒め物、天ぷら、煮物、餡など[87]
アズキ[5]
adzuki bean
マメ科ササゲ属
Vigna angularis
豆果、種子[69][23] 和え物、炒め物、天ぷら、餡、赤飯など[88][82]
ケツルアズキ[89][90](ブラックマッペ、ブラックグラム)
black gram
マメ科ササゲ属
Vigna mungo
豆果
[スプラウト、葉][69][23]
煮食、煮豆、もやしなど
[飼料など][89][84]
ツルアズキ[91][92](シマツルアズキ)
rice bean
マメ科ササゲ属
Vigna umbellata
豆果、種子
[スプラウト、葉][69][23]
煮食、もやしなど
[飼料など][89]
モスビーン[93][94](マットビーン)
moth bean
マメ科ササゲ属
Vigna aconitifolia
豆果、種子[69][23] 煮食など
[飼料など][93]
リョクトウ[5]
mung bean
マメ科ササゲ属
Vigna radiata
豆果、種子
[スプラウト、茎葉][69][23]
スープ、煮豆、ダール、餡、春雨、もやしなど[82][95]
バンバラマメ[96]
Bambara groundnut
マメ科ササゲ属
Vigna subterranea
種子[69] 炒り豆、塩漬け、煮物など
[飼料][96][97]
インゲンマメ[9]
common bean
 サヤインゲン** など
マメ科インゲンマメ属
Phaseolus vulgaris
豆果、種子
[葉][69][23]
和え物、炒め物、揚げ物、煮物、餡など[9][98]
ベニバナインゲン[9](ハナマメ)
runner bean
マメ科インゲンマメ属
Phaseolus coccineus
豆果、種子
塊根[69][23]
煮物、餡など[9][99]
[観賞用][100]
ライマメ[9]
butter bean
マメ科インゲンマメ属
Phaseolus lunatus
豆果、種子[69][23] 煮物、餡など[9][101]
ヒヨコマメ[5]
chickpea
マメ科ヒヨコマメ属
Cicer arietinum
豆果、種子
[茎葉][69][23]
煮豆、ダール、炒豆、スープ、粉食など
[飼料、薬用][82][102]
ソラマメ[9]**
broad bean
マメ科ソラマメ属
Vicia faba
種子[69] 塩茹で、揚げ物、炒め物、煮豆、餡など[9][103]
ヒラマメ[5](レンズマメ)
lentil
マメ科ヒラマメ属
Lens culinaris
豆果、種子
[葉][69][23][82]
製粉、スープなど
[飼料][82][104]
エンドウ[9]pea
 サヤエンドウ**
 スナップエンドウ*
 グリーンピース**など
マメ科エンドウ属
Pisum sativum
豆果、種子
[スプラウト、葉][69][23][105]
和え物、炒め物、煮物、餡、豆苗など[9][105]
グラスピー[106]
grass pea
マメ科レンリソウ属
Lathyrus sativus
豆果[23] 茹でる、炒めるなど[107]
コロハ[108](フェヌグリーク)
fenugreek
マメ科コロハ属
Trigonella foenum-graecum
種子
[葉][69]
カレー、炒め物など[飼料][108][109]
ウメ[注 3][14][注 7]
Japanese apricot
バラ科スモモ属
Prunus mume
核果[25] 漬物、ジャムなど
[薬用、観賞用][110]
イチゴ[9]★**(オランダイチゴ)
strawberry
バラ科オランダイチゴ属
Fragaria x ananassa
イチゴ状果[25] 生食、ジャムなど[9]
トウモロコシmaize
 スイートコーン**[10]
イネ科トウモロコシ属
Zea mays
頴果[23]複合果 焼く、茹でる、蒸す、コーンスターチ、油など
[飼料][111]
オクラ[9]**
okra
アオイ科トロロアオイ属
Abelmoschus esculentus
蒴果[25] 和え物、酢の物、サラダ、揚げ物、煮物など[9][112]
ヒシ[9][注 8]
water chestnut
ミソハギ科ヒシ属
Trapa spp.
核果[25]堅果[113] 生食、茹でる、蒸すなど[9]
ホウキギ[9](とんぶり)
tonburi
ヒユ科ムヒョウソウ属
Bassia scoparia
胞果(種子)[23]
[葉][114]
三杯酢など[114]
リョウリバナナ[115]
cooking banana
バショウ科バショウ属
Musa × paradisiaca など
漿果[25]
[雄穂]
煮る、蒸す、焼く、酒など[115]
ワサビノキ[15]
horseradish tree
ワサビノキ科ワサビノキ属
Moringa oleifera
蒴果[25]
[葉、樹皮]
カレー、サラダ、漬物、油など[15]
[香料、石鹸、繊維など][15]
パンノキ[116]
breadfruit
クワ科パンノキ属
Artocarpus altilis
液果複合果[117][幹、樹皮] 焼く、煮る、揚げる、製粉、酒など
[木材、繊維など][116][118]
パラミツ[116][119](ジャックフルーツ)
Jackfruit
クワ科パンノキ属
Artocarpus heterophyllus
液果(複合果)[117]
[葉、幹]
生食、焼く、煮る、酒など
[飼料、木材など][116][119]

ギャラリー

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ a b c 花後に発達したで包まれる[35][36]
  2. ^ 果物ベリー)としても扱われる[37]
  3. ^ a b 日本標準商品分類では「香辛野菜およびつまもの」に分類される[16]
  4. ^ セイヨウカボチャCucurbita maxima)、ニホンカボチャCucurbita moschata)、ペポカボチャCucurbita pepo)、クロダネカボチャCucurbita ficifolia)など数種を含み、またズッキーニはペポカボチャの1品種である[9][52]
  5. ^ 南米で利用されている近縁種としてタウイ(Lupinus mutabilis)がある[68]
  6. ^ 日本食品標準成分表2020年版(八訂)では、ラッカセイは脂質含量が高いため、「野菜」や「豆類」ではなく「種実類」に分類されている[17]
  7. ^ ウメの果実は、果物として扱われることもある[14]
  8. ^ 日本食品標準成分表2020年版(八訂)では、種実類として扱われている[17]

出典

[編集]
  1. ^ 園芸学会, ed (2005). 園芸学用語集・作物名編. 養賢堂. p. 14. ISBN 978-4-8425-0376-9 
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  4. ^ a b c d e 青葉高 (2000). “果菜類”. 日本の野菜. 八坂書房. pp. 23–117. ISBN 978-4-89694-457-0 
  5. ^ a b c d e f g h i 米安晟 (1996). “日本の野菜”. 日本食生活学会誌 7 (2): 7-14. doi:10.2740/jisdh.7.2_7. 
  6. ^ 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 (2012). かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典. 成美堂出版. p. 218. ISBN 978-4-415-30997-2 
  7. ^ 金子美登 (2012). 有機・無農薬でできる野菜づくり大事典. 成美堂出版. p. 236. ISBN 978-4-415-30998-9 
  8. ^ 野菜をおいしく食べる”. 農畜産業振興機構. 2024年6月16日閲覧。
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  11. ^ 戸谷亨. “野菜ってなーに?”. 独立行政法人農畜産業振興機構. 2024年6月1日閲覧。
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  14. ^ a b c 谷野陽 (1996). “世界の野菜, 日本の野菜”. 日本調理科学会誌 29 (3): 224-233. doi:10.11402/cookeryscience1995.29.3_224. 
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関連項目

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外部リンク

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