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土下座

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

土下座(どげざ)とは、土の上に直に坐り、平伏して礼(お辞儀)を行うこと。

日本の礼式のひとつで、姿勢は座礼の最敬礼に類似する。本来は極度に尊崇高貴な対象に恭儉の意を示したり、深い謝罪や請願の意を表したりする場合に行われるため、互礼ではなく、一方のみが行うが、土下座の意図に対して土下座された相手が謝絶を示すために同じ礼を行うことがある。

相手に向かい正座した上で、手のひらを地に付け、額が地に付くまで伏せ、しばらくその姿勢を保つ。現代では土の上とは限らず、本来は座礼をしないような床(洋間の床など)や舗装地などで行われるものも土下座と称される。

原則としては相手の位置以下の高さから行うべきものではあるが、多数を相手に行う際に相手の位置まで下りて行うと一部からしか見えなくなってしまう場合などで、変則的に壇上などの高い位置から行われることもある。

歴史・用途

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起源

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古代インドにおける最高の敬礼として、相手の足下にひざまずき、頭の先を地に付け、両手で相手の足先を手に取り額に接触させる方法があり、これが仏教五体投地の原型とされる[1]

魏志倭人伝』には邪馬台国の風習として、平民が貴人から話を聞くときには、「うずくまったりひざまづいたりし、両手を地に付けて、敬意を示す。」との記載があり、日本では仏教公伝以前から習慣として存在していたとされる。古墳時代埴輪の中には平伏し、土下座をしているようなものも見受けられる。近代まで庶民が貴人に面会するときも土下座をするのが通常であった。

中世

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武家社会において土下座は「そのまま斬首されても異存はない」という意味合いを与えられていた。近世の大名行列では徳川御三家尾張紀州藩の大名が乗った籠が通る際に土下座が必要だった[2]

日本人の生活意識では、土の上に座って額を地面につける動作が日常の行動から大きく逸脱しているために、それだけ並はずれた恭儉・恐縮の意を含む礼式であると解釈された。一方ではこれを大変な恥辱とする考え方もあった。

謝罪や懇願の目的で庶民に広まったのは大正後期以降であり、『大菩薩峠』などの時代小説で圧政における庶民の土下座が頻繁に登場したことが影響という考察もある[3][4]

近代

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明治時代の啓蒙思想家である杉亨二は1870年代民部省時代に民部・大蔵大輔であった大隈重信土下座の廃止などを主張した建白書を提出した[5](p57)。1871年(明治4年)の賤民制度廃止令や、明治天皇の行幸行列の警衛心得にも土下座しなくてもよいという条目があった[6]

現代

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現代でも土下座を恥とする考え方が根強く残っているが、不祥事や事故を起こした企業の経営者などが会見の場で行うこともある[7]。安易な土下座が多く行われたことで謝罪よりも「なりふり構わぬ自己保身の手段」というネガティブなイメージを抱く人が多くなった一面があり[8]、土下座の使い方や使いどころ次第でかえって世間の反感や冷笑を買ってしまい、逆効果になってしまうケースも見られる様になっている[7]

ドラマ「半沢直樹」では、土下座をして詫びることが演出として話題になった。

土下座に対する法的効果

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土下座を強要することは強要罪にあたり、店員に土下座をさせた画像をTwitter上にてアップロードした客が逮捕されており、以後刑事事件化に至る事例が増加している[9]。その事件の直前まで放映されていたテレビドラマ『半沢直樹』にて主人公が土下座を強要するシーンがあり、疑問を呈する意見も存在している[10][11][12]

土下座が問題となった事例

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土下寝

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土下寝(どげね)は、土下座の派生形。地面や床にうつ伏せになって四肢を伸ばし、いわゆる「うつ伏せ寝」の姿勢を取る。土下座以上の謝罪を込めた行為であるが、芸能人が用いた際にはユーモアを含む意味合いをもって報じられる[13][14][15]

脚注

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出典

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  1. ^ 保立道久『中世の愛と従属』<イメージリーディング叢書> 平凡社 1986年 ISBN 4582284566 pp.156-161.
  2. ^ コンスタンティン・ノミコス・ヴァポリス(メリーランド大学準教授) (2004年10月). “参勤交代と日本の文化 日文研フォーラム、第169回”. 国際日本文化研究センター. pp. 1-29. 2014年7月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月8日閲覧。
  3. ^ パオロ・マッツァリーノ『誰も調べなかった日本文化史』筑摩書房、2014年9月10日。 
  4. ^ 読売新聞、2015年4月21日夕刊2面「はじまり考」
  5. ^ 河合利安「杉先生略傳」『杉亨二自叙傳』杉八郎、1918年5月18日。doi:10.11501/980787NCID BN09528007 
  6. ^ 尾佐竹猛 (1944). 明治の行幸. 東興社. pp. 282-283 
  7. ^ a b 「知床遊覧船」社長会見に強烈な怒りが募った訳 | 災害・事件・裁判”. 東洋経済オンライン (2022年4月28日). 2022年4月28日閲覧。
  8. ^ 使い方次第で反感を買う土下座”. 産経ニュース (2011年5月8日). 2011年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月30日閲覧。
  9. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2014年8月6日). “「半沢」ではスカっとしたけど…本当は怖い「土下座」強要”. イザ!. 2022年3月29日閲覧。
  10. ^ 半沢直樹のマネ? 「しまむら」店員への「土下座強要」は法律的にどうなのか? - 弁護士ドットコムニュース”. 弁護士ドットコム (2013年10月4日). 2022年3月29日閲覧。
  11. ^ 「半沢直樹」で火がついた? 巷で広がる“土下座ブーム””. 週刊文春web (2013年10月9日). 2013年10月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月30日閲覧。
  12. ^ 「半沢直樹」、土下座シーンへの違和感”. web論座 (2013年9月27日). 2013年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月30日閲覧。
  13. ^ “ラーメンズ片桐、松潤ドラマで土下寝「狙ってます」”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2016年5月27日). https://www.nikkansports.com/entertainment/news/1653640.html 2022年5月3日閲覧。 
  14. ^ “鳥居みゆき、自身の単独ライブ延期で“お詫びの土下寝”披露! 「寝てるだけやろ(笑)」とツッコミも!?”. 耳マン (リットーミュージック). (2020年2月29日). https://33man.jp/article/008299.html 2022年5月3日閲覧。 
  15. ^ “川口春奈、「気配斬り」敗戦でまさかの“土下寝”再戦懇願に称賛の声が続々!”. アサ芸プラス (徳間書店). (2022年3月22日). https://www.asagei.com/excerpt/206210 2022年5月3日閲覧。 

関連項目

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