中川重徳
なかがわ しげのり 中川 重徳 | |
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生誕 |
1959年(64 - 65歳) 東京都新宿区 |
国籍 | 日本 |
出身校 | 東京大学経済学部経済学科除籍退学 |
職業 | 弁護士 |
活動期間 | 1988年 - |
公式サイト | 諏訪の森法律事務所 |
中川 重徳(なかがわ しげのり、1959年[1] - )は、日本の弁護士。同性愛と人権をめぐる日本初の裁判として知られる東京都青年の家事件[2][3]において原告代理人を務めた[4]。また、原爆症認定集団訴訟の東京弁護団事務局長、ノーモア・ヒバクシャ訴訟の全国弁護団事務局長を務めた[5][6]。
来歴
[編集]東京都新宿区出身[7][1]。東京大学経済学部経済学科を除籍退学。同年、司法試験に合格。1988年4月、弁護士登録。
1990年1月、同じ中学高校大学に通った親友で、商工中金に務めていた永野靖は中川に、司法試験を受けてみようかと思っていると相談した[8][9]。永野は「動くゲイとレズビアンの会」(現・アカー)のメンバーで、同性愛解放に寄与することをライフワークにしたいと思い始めていた。その矢先に事件が起こる[10]。
1990年2月11日、永野らアカーのメンバー18人は1泊の予定で府中青年の家を訪れた[11]。当日はアカーの他に、少年サッカークラブ、女性合唱団、日本イエス・キリスト教団青年部が利用していた[10][12][13]。宿泊4団体のリーダー会終了後、少年サッカークラブの小学生やキリスト教団体のメンバーから同性愛者を差別する嫌がらせを受けた。翌2月12日の話し合いでキリスト教団体の2名は「女と寝るように男と寝る者は必ず殺されなければならない」と旧約聖書レビ記の一節を読み上げた[12][13][14][15]。3月24日、宿泊時に不在だった青年の家の所長はアカーの今後の使用を拒絶する旨を述べた[11]。4月7日、永野は中川に連絡をとった[16][8][4][9]。4月9日、中川はアカーの代理人として都教育庁に電話をし、アカーの使用申込を認めるよう要求したが、応対に出た職員は差別的な発言を続けた。4月26日、都教育委員会は、使用に関し不承認処分を下した[15]。
1991年2月12日、アカーは東京都に対し損害賠償を求める訴訟を提起した[17]。
1994年3月、東京地裁は原告勝訴の判決を下した。1997年9月、東京高裁は都の控訴を棄却した[10]。なお、永野は事件をきっかけに司法試験のための勉強を本格的に始め、2000年に弁護士登録した[9]。
2000年2月、新宿区高田馬場に「諏訪の森法律事務所」を開設した[1]。
2015年4月1日、日本初の「パートナーシップ制度」の条例が渋谷区で施行された[18]。施行後、中川は証明書発行のための区規則の制定に関わり、軽費用でできる特例型を規則に盛り込むことに尽力した[19]。
同年7月7日、41都道府県の性的少数者455人が、日本で同性婚が法制化されていないのは人権侵害であるとして、日本弁護士連合会に対して人権救済の申立てをした[20][注 1]。申立てに当たり、中川ら「LGBT支援法律家ネットワーク」の有志の弁護士は同性婚人権救済弁護団を作り、活動の中心を担った[23][21][24]。
2018年7月9日、同性パートナーを殺害された名古屋市在住の男性は、同性を理由に国の犯罪被害給付制度に基づく遺族給付金を不支給とした愛知県公安委員会の裁定は違法として、同県を相手に取り消しを求めて名古屋地裁に提訴した[25]。中川と永野は弁護団に加わった[26]。
2019年2月14日、日本国内の複数の同性カップルが、同性同士が法律婚できないのは違憲だとして、損害賠償を求める訴訟を東京、大阪、札幌、名古屋の各地方裁判所で一斉に提訴した[27]。同年9月5日には同様の訴訟が福岡地裁にも提起された[28]。同性婚の合憲性を正面から問う国内初のこの訴訟(「結婚の自由をすべての人に」訴訟)[27][29]において、中川と永野は東京訴訟弁護団に加わった[30][31]。
2021年5月28日、自民党は総務会を開き、LGBT理解増進法案の通常国会への提出見送りを決定した[32]。これを受けて、中川ら23人の弁護士とNPO法人「LGBTとアライのための法律家ネットワーク」が呼びかけ人となり、同年6月5日、法案提出を求める緊急声明が発表された。6月8日、中川、寺原真希子らは自民党本部を訪れ、3人の国会議員に声明を手渡した[33]。
2022年9月16日、れいわ新選組が、任期満了に伴う新宿区長選挙に元新宿区議会議員の依田花蓮を擁立すると発表[34]。同年11月4日、中川ら新宿在住・在勤の弁護士は有志の会を結成し、「基本的人権の尊重・国民主権・平和主義という憲法の理念を新宿から実現することを掲げるよだかれんさんを応援します」との声明を発表した[35]。投票日前日の11月12日に中川はFacebookを更新し、依田への投票を呼び掛けた[36]。11月13日、現職の吉住健一は依田との一騎打ちを制し、3選を果たした。
著書
[編集]- 北沢杏子、中川重徳、宗像恒次、山本直英、池上千寿子、川田悦子、大石敏寛ほか 著、北沢杏子 編『エイズ集中講義』アーニ出版、1999年9月20日。ISBN 978-4870011243。
- 伊藤直子、田部知江子、中川重徳『被爆者はなぜ原爆症認定を求めるのか』岩波書店〈岩波ブックレット〉、2006年9月28日。ISBN 978-4000093842。
- 中川重徳、風間孝、三橋順子、鈴木秀洋、石田京子、東由紀、石田若菜、長島佐恵子、谷口洋幸『LGBTをめぐる法と社会』日本加除出版、2019年10月。ISBN 978-4817848638。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c “弁護士プロフィール”. 諏訪の森法律事務所. 2023年6月28日閲覧。
- ^ “連続公開講座「LGBTをめぐる法と社会」第一回「LGBTと人権—府中青年の家裁判を振り返る」を開催いたしました”. 中央大学 (2018年6月27日). 2023年6月22日閲覧。
- ^ 「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟弁護団 (2021年3月31日). “原告ら第7準備書面”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年6月1日閲覧。
- ^ a b “『LIBRA』2016年3月号、P19-22。”. 東京弁護士会. 2023年5月29日閲覧。
- ^ “原爆症認定集団訴訟 東京原告団会議 「確認書」に則った対応話し合う”. 一般社団法人東友会. 2023年6月28日閲覧。
- ^ “ノーモア・ヒバクシャ東京訴訟のまとめ”. 一般社団法人東友会. 2023年6月28日閲覧。
- ^ 中川重徳 Facebook
- ^ a b 中央大学 (2018年7月2日). “中央大学 × LLAN 連続公開講座 第一回「LGBTと人権 府中青年の家事件を振り返る」(2018. 5. 12)”. YouTube. 2023年6月24日閲覧。
- ^ a b c “弁護士の永野靖さんへのインタビュー”. g-lad xx. 2023年6月24日閲覧。
- ^ a b c 君塚正臣 (2000年9月). “同性愛者に対する公共施設の宿泊拒否―東京都青年の家事件”. 有斐閣. 2023年6月20日閲覧。
- ^ a b 『井田真木子 著作撰集』, pp. 310–311.
- ^ a b 藤谷祐太 (2008年). “トラブルを起こす/トラブルになる”. 立命館大学大学院 先端総合学術研究科. 2023年6月26日閲覧。
- ^ a b 動くゲイとレズビアンの会「府中青年の家・同性愛者差別事件とは」 『インパクション』第71号、インパクト出版会、1991年、52-61頁。
- ^ 風間孝 (2017年12月29日). “「性的指向」が初めて判決文に刻まれた府中青年の家事件を振り返る【SHIPにじいろキャビン10周年記念シンポジウム】”. ウェジー. 2023年6月22日閲覧。
- ^ a b 東京地裁 1994.
- ^ 中川重徳 (2018年5月12日). “府中青年の家裁判を振り返る――弁護団の立場から”. 中央大学. 2023年6月24日閲覧。
- ^ “府中青年の家事件”. 立命館大学生存学研究所. 2023年6月14日閲覧。
- ^ “同性カップル条例 成立 渋谷区が「結婚相当」証明書”. 東京新聞 (2015年4月1日). 2015年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月7日閲覧。
- ^ 永易至文 (2016年11月10日). “第62話 渋谷区同性パートナー証明1周年、条例に内在する問題点?”. ヨミドクター. 読売新聞社. 2023年6月6日閲覧。
- ^ 日本弁護士連合会『同性の当事者による婚姻に関する意見書』日本弁護士連合会、2019年7月18日 。
- ^ a b “人権救済を申立てました!”. 同性婚人権救済弁護団. 2023年6月28日閲覧。
- ^ “「15年一緒に暮らしても法律上は他人...」不安な同性カップルの"願い" 大阪地裁は『同性婚は議論の過程にありただちに憲法違反とは認められない』”. MBS News (2022年6月20日). 2023年6月28日閲覧。
- ^ “弁護団の紹介”. 同性婚人権救済弁護団. 2023年6月28日閲覧。
- ^ “同性婚 人権救済申し立てへ 274人「不利益生じる」”. 西日本新聞 (2015年6月13日). 2023年6月28日閲覧。
- ^ “犯罪被害給付金:「同性パートナーも配偶者」と提訴”. 毎日新聞 (2018年7月9日). 2023年7月12日閲覧。
- ^ 堀江哲史、長谷川桂子、岡村晴美、倉知孝国、矢﨑暁子、浦野智文、進藤一樹、大畑泰次郎、中川重徳、永野靖、山下敏雅、水谷陽子 (2020年8月5日). “控訴理由書”. 2023年7月10日閲覧。
- ^ a b 北沢拓也、山下知子 (2019年2月14日). “「同性婚認めないのは違憲」 13組、国を一斉提訴”. 朝日新聞 2021年3月17日閲覧。
- ^ 角詠之 (2019年9月5日). “「同性婚認めないのは違憲」福岡の男性カップル国を提訴”. 朝日新聞. 2023年6月5日閲覧。
- ^ 藤沢美由紀 (2018年11月14日). “同性婚:「否定は違憲」 法の下の平等、来春にも一斉提訴”. 毎日新聞. 2023年5月31日閲覧。
- ^ 永野靖 (2022年5月30日). “代理人意見陳述要旨”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年6月3日閲覧。
- ^ “「死ぬまでに愛する人と結婚したい」との願いが叶わなかった原告の佐藤さんへの思いを胸に2月24日、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告や弁護団、支援者の方たちが東京地裁での口頭弁論に臨みました”. PRIDE JAPAN. アウト・ジャパン (2021年2月25日). 2023年6月17日閲覧。
- ^ “LGBT理解促進法案 今国会提出見送りへ”. NHK (2021年5月28日). 2023年6月28日閲覧。
- ^ 奥野斐 (2021年6月8日). “「LGBT法案、今国会提出を」弁護士ら緊急声明 自民の反対派の「訴訟が多発」にも反論”. 東京新聞. 2023年6月28日閲覧。
- ^ “【代表声明】「よだかれんさんについて」(2022年9月16日 れいわ新選組代表 山本太郎)”. れいわ新選組公式サイト (2022年9月16日). 2022年9月16日閲覧。
- ^ “新宿区長選(11月13日投票)、よだかれんさんを応援します!”. 東京法律事務所blog (2022年11月7日). 2023年6月28日閲覧。
- ^ 中川重徳 Faceook 2022年11月12日
参考文献
[編集]- 原田敏章、内田計一、林俊之 (1994年3月30日). “東京地方裁判所 平成6年3月30日判決 平成3年(ワ)1557号 損害賠償請求事件”. 大判例. 2023年6月8日閲覧。
- 矢崎秀一、山﨑健二、彦坂孝孔 (1997年9月16日). “東京高等裁判所 平成9年9月16日判決 平成6年(ネ)1580号 損害賠償請求控訴事件”. 大判例. 2023年6月8日閲覧。
- 動くゲイとレズビアンの会 編『ゲイ・リポート―coming out! 同性愛者は公言する』飛鳥新社、1992年8月9日。ISBN 978-4870311206。
- 井田真木子『井田真木子 著作撰集』里山社、2014年7月19日。ISBN 978-4907497019。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- SHIGENORI NAKAGAWA (@smgnk) - X(旧Twitter)
- 中川重徳 (shigenori.nakagawa.98) - Facebook
- 諏訪の森法律事務所