グレフュール賞
グレフュール賞(Prix Greffulhe)はフランスのサンクルー競馬場で行われるG3の競走。2021年現在は2100メートルで行われ、3歳馬だけが出走できる。フランスダービーの前哨戦の一つである。
グレフュール賞 Prix Greffulhe | |
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開催国 | フランス |
競馬場 | サンクルー競馬場 |
創設 | 1882年 |
2023年の情報 | |
距離 | 芝2100メートル |
格付け | G3 |
賞金 | 賞金総額13万ユーロ[1] |
出走条件 | 3歳 |
負担重量 |
牡馬・せん馬 58kg 牝馬 56.5kg |
意義
[編集]グレフュール賞は、19世紀に馬種改良奨励協会が設けたフランスダービーのための5つの前哨戦(Poules de Produits)の1つである。この前哨戦(Poules de Produits)は、グレフュール賞、ダリュー賞、リュパン賞、オカール賞、ノアイユ賞(※すべて最近のレース名で表記)から成る。リュパン賞を除いて、これらの競走はフランスの内国産馬以外の出走は制限されている[2]。
フランスの競走馬の資質向上を目的とするため、グレフュール賞に出走できるのは、繁殖能力を有する牡馬か牝馬に限られ、さらにフランスの「母内国産馬」(つまり、母馬がフランスで生産・育成された馬だけである)以外の出走は制限されている[2]。グレフュール賞の賞金は、出走馬が生まれる前の受胎中に登録した登録金で賄われていた[3]。なお、2020年よりせん馬の出走が可能となった[4]。
グレフュール賞の優勝馬がフランスダービーを勝ったのは22回。最初の勝者は1894年のゴスポダール(Gospodar)で、最近では2003年のダラカニ(Dalakhani)がいる。このほか、2着が14回、3着が11回ある(2012年現在)[3]。1965年のシーバードと2011年のプールモワはフランスダービーには出走せずイギリスダービーに勝った。
歴史
[編集]この競走ははじめ、1882年にロンシャン競馬場の2100メートルの競走「Prix de Greffulhe」として行われた[5]。
グレフュール賞は、1915年から1919年の間、第一次世界大戦の影響で中止された。第二次世界大戦中の1943年から1945年は、ル・トランブレー競馬場(2150メートル)で代替開催された[6]。
第一次世界大戦頃までは、牝馬の出走も一般的で、6頭が優勝している。このうちウニオン(Union、1909年優勝)とフラワーショップ(Flowershop、1920年優勝)は、後に仏オークス(ディアーヌ賞)に優勝した。(フラワーショップはフランス1000ギニーも勝っている。)現在も出走は可能だが、1937年にNicaが3着になったのを最後に、入着馬すら出ていない[3]。
2005年のクラシック改編
[編集]2005年にフランスの3歳クラシック路線の再編成が行われた。クラシック競走[注 1]のうち、リュパン賞が廃止、フランスダービーが2400メートルから2100メートルに短縮、パリ大賞典が2000メートルから2400メートルとなった。
これにあわせてグレフュール賞も、右回りのロンシャン競馬場から左回りのサンクルー競馬場に移り、距離も2000メートルに短縮された[3]。
それ以来、グレフュール賞の勝馬からフランスダービーの優勝馬は出ていない。ただし、2011年のプールモワはイギリスダービーを制している。
2018年より距離が2100メートルに戻された。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で6月に順延開催される。
2023年にはG3に格下げされた。
名称の由来
[編集]グレフュール賞の名前は、馬種改良奨励協会(Société d'Encouragement)に長年貢献したアンリ・グレフュール(Henri Greffulhe、1815-1879)に由来している。グレフュール氏は、パリロンシャン競馬場の創設などに尽力した人物である。
記録
[編集]歴代勝馬
[編集]1979年以降
[編集]施行年 | 格 | 優勝馬 | 父馬 | 開催地 | 距離 | タイム | 備考 |
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1979年 | G2 | Le Marmot | Amarko | ロンシャン | 2100m | 2:25.20 | |
1980年 | G2 | Providential | Run The Gantlet | ロンシャン | 2100m | 2:13.10 | |
1981年 | G2 | The Wonder | Wittgenstein | ロンシャン | 2100m | 2:15.20 | 1997年の安田記念4着になったアマジックマンの父。 1位入線のノーリュートは禁止薬物が検出されたため失格となった。 |
1982年 | G2 | *ボアドグラース | リュティエ | ロンシャン | 2100m | 2:17.70 | 優勝馬は日本供用種牡馬。 |
1983年 | G2 | Dom Pasquini | Rheffic | ロンシャン | 2100m | 2:32.90 | |
1984年 | G2 | ダルシャーン | シャーリーハイツ | ロンシャン | 2100m | 2:19.30 | |
1985年 | G2 | *ムクター | Nishapour | ロンシャン | 2100m | 2:35.60 | |
1986年 | G2 | Arokar | Akarad | ロンシャン | 2100m | 2:28.30 | |
1987年 | G2 | Persifleur | *リファーズウィッシュ | ロンシャン | 2100m | 2:12.80 | |
1988年 | G2 | Soft Machine | フーリッシュプレジャー | ロンシャン | 2100m | 2:13.70 | |
1989年 | G2 | *アロングオール | ミルリーフ | ロンシャン | 2100m | 2:18.90 | |
1990年 | G2 | Epervier Bleu | Saint Cyrien | ロンシャン | 2100m | 2:19.80 | 後にリュパン賞優勝。 |
1991年 | G2 | スワーヴダンサー | グリーンダンサー | ロンシャン | 2100m | 2:16.30 | |
1992年 | G2 | *アップルツリー | Bikala | ロンシャン | 2100m | 2:14.70 | |
1993年 | G2 | *ハンティングホーク | サドラーズウェルズ | ロンシャン | 2100m | 2:18.40 | |
1994年 | G2 | *ティッカネン | コジーン | ロンシャン | 2100m | 2:14.50 | |
1995年 | G2 | Diamond Mix | Linamix | ロンシャン | 2100m | 2:21.50 | |
1996年 | G2 | Ragmar | Tropular | ロンシャン | 2100m | 2:10.60 | |
1997年 | G2 | *パントレセレブル | ヌレイエフ | ロンシャン | 2100m | 2:14.00 | 後にパリ大賞典も優勝。 |
1998年 | G2 | *クロコルージュ | レインボウクエスト | ロンシャン | 2100m | 2:25.30 | フランスダービーは2着。 |
1999年 | G2 | *モンジュー | サドラーズウェルズ | ロンシャン | 2100m | 2:20.10 | |
2000年 | G2 | Rhenium | Rainbows for Life | ロンシャン | 2100m | 2:30.00 | 1位入線のAristotleが3位Boutronの進路を妨害して3着に降着したための繰上優勝。
|
2001年 | G2 | Maille Pistol | Pistolet Bleu | ロンシャン | 2100m | 2:28.50 | |
2002年 | G2 | Act One | インザウイングス | ロンシャン | 2100m | 2:18.50 | 後にリュパン賞優勝。 |
2003年 | G2 | ダラカニ | ダルシャーン | ロンシャン | 2100m | 2:17.30 | 後にリュパン賞も優勝。 |
2004年 | G2 | Millemix | Linamix | ロンシャン | 2100m | 2:12.90 | |
2005年 | G2 | Vatori | Vettori | サンクルー | 2000m | 2:08.20 | |
2006年 | G2 | Visindar | シンダール | サンクルー | 2000m | 2:03.10 | |
2007年 | G2 | Quest for Honor | ハイエストオナー | サンクルー | 2000m | 2:09.90 | |
2008年 | G2 | Prospect Wells | サドラーズウェルズ | サンクルー | 2000m | 2:11.60 | |
2009年 | G2 | Cutlass Bay | ホーリング | サンクルー | 2000m | 2:14.50 | |
2010年 | G2 | Ice Blue | ダンシリ | サンクルー | 2000m | 2:07.80 | |
2011年 | G2 | プールモワ | *モンジュー | サンクルー | 2000m | 2:03.20 | 同馬はイギリスダービーに出走し、優勝した。 |
2012年 | G2 | Kesampour | キングズベスト | サンクルー | 2000m | 2:09.40 | |
2013年 | G2 | Ocovango | サンクルー | 2000m | 2:06.96 | ||
2014年 | G2 | Prince Gibraltar | サンクルー | 2000m | 2:13.56 | ||
2015年 | G2 | Sumbal | サンクルー | 2000m | 2:13.04 | ||
2016年 | G2 | Cloth Of Stars | サンクルー | 2000m | 2:03.70 | ||
2017年 | G2 | Recoletos | サンクルー | 2000m | 2:13.97 | ||
2018年 | G2 | Study Of Man | ディープインパクト | サンクルー | 2100m | 2:19.29 | |
2019年 | G2 | Roman Candle | Le Havre | サンクルー | 2100m | 2:12.55 | |
2020年 | G2 | Gold Trip | Outstrip | リヨン | 2200m | 2:20.09 | |
2021年 | G2 | Baby Rider | サンクルー | 2100m | 2:10.12 | ||
2022年 | G2 | Onesto | サンクルー | 2100m | 2:11.43 | ||
2023年[7] | G3 | Greenland | Saxon Warrior | サンクルー | 2100m | 2:17.86 | |
2024年 | G3 | Wootton Verni | サンクルー | 2100m | 2:14.79 |
1882年から1978年まで
[編集]- 1882: Clio
- 1883: Farfadet
- 1884: Serge
- 1885: Palamede
- 1886: Sauterelle
- 1887: Brio
- 1888: Bocage
- 1889: Chopine
- 1890: Cerbere
- 1891: Reverend
- 1892: Fra Angelico
- 1893: Arkansas
- 1894: Gospodar
- 1895: Le Sagittaire
- 1896: Montreuil
- 1897: Palmiste
- 1898: Le Roi Soleil
- 1899: Tapis Vert
- 1900: Cymbalier
- 1901: Passaro
- 1902: Maximum
- 1903: Chatte Blanche
- 1904: Monsieur Charvet
- 1905: Genial
- 1906: Brisecoeur
- 1907: Kalisz
- 1908: Kenilworth
- 1909: Union
- 1910: Nuage
- 1911: Combourg
- 1912: Patrick
- 1913: ニンバス
- 1914: Diderot
- 1915–19: 中止
- 1920: Flowershop
- 1921: Tacite
- 1922: Kefalin
- 1923: Checkmate
- 1924: Tapin / Nethou [注 2]
- 1925: Belfonds
- 1926: Asterus
- 1927: Lusignan
- 1928: Ivanoe
- 1929: Verdi
- 1930: Veloucreme
- 1931: トウルビヨン
- 1932: Sagace
- 1933: Antenor
- 1934: Maravedis
- 1935: Mansur
- 1936: ファスネー(Fastnet)
- 1937: Samy
- 1938: Cillas
- 1939: Bacchus
- 1940: Tresor
- 1941: ルパシャ(en:Le Pacha)
- 1942: Arcot
- 1943: Pensbury
- 1944: アルダン(en:Ardan)
- 1945: Mistral
- 1946: プリンスシュヴァリエ(Prince Chevalier)
- 1947: Chesterfield
- 1948: Rigolo
- 1949: アンビオリクス(en:Ambiorix)
- 1950: Scratch
- 1951: シカンブル
- 1952: Silnet
- 1953: Marly Knowe
- 1954: Major
- 1955: en:Hafiz
- 1956: Patras
- 1957: Amber
- 1958: Upstart
- 1959: エルバジェ
- 1960: Hautain
- 1961: Devon
- 1962: Whippoorwill
- 1963: Le Mesnil
- 1964: Free Ride
- 1965: シーバード
- 1966: Hauban
- 1967: en:Roi Dagobert
- 1968: *バルダスト
- 1969: Prince Regent
- 1970: Magic Hope
- 1971: Rheffic
- 1972: *サンシー
- 1973: Roi Lear
- 1974: Dankaro
- 1975: Mariacci
- 1976: Youth
- 1977: Rex Magna
- 1978: Naasiri
騎手
[編集]3人の騎手がグレフュール賞を5回勝っている。
- Roger Poincelet – Mistral (1945), Ambiorix (1949), Silnet (1952), Hafiz (1955), Le Mesnil (1963)
- イヴ・サンマルタン– Roi Dagobert (1967), Val d'Aoste (1968), Dom Pasquini (1983), Darshaan (1984), Mouktar (1985)
- キャッシュ・アスムッセン – Arokar (1986), Along All (1989), Suave Dancer (1991), Tikkanen (1994), Montjeu (1999)
調教師
[編集]- アンドレ・ファーブル - 10勝 - Along All (1989), Apple Tree (1992), Hunting Hawk (1993), Diamond Mix (1995), Peintre Celebre (1997), Visindar (2006), Quest for Honor (2007), Prospect Wells (2008), Cutlass Bay (2009), Pour Moi (2011)
馬主
[編集]2人の馬主が7勝を挙げている。
- マルセル・ブサック – Asterus (1926), Tourbillon (1931), Cillas (1938), Ardan (1944), Ambiorix (1949), Scratch (1950), Dankaro (1974)
- アーガー・ハーン4世– Hafiz (1955), Naasiri (1978), Darshaan (1984), Mouktar (1985), Dalakhani (2003), Visindar (2006), Kesampour (2012)
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ ICSC 2014 France2014年12月12日閲覧。
- ^ a b フランス・ギャロ「ノアイユ賞の歴史」2013年2月22日閲覧。
- ^ a b c d フランス・ギャロ「グレフュール賞の歴史」(2013年2月22日閲覧)より。
- ^ “フランスギャロ、G1ムーランドロンシャン賞ら7重賞をセン馬に開放へ”. JRA-VAN (2019年7月10日). 2022年1月23日閲覧。
- ^ Courses au Bois du Boulogne(=ブローニュの森の競馬場※ロンシャン競馬場のこと) フランスの新聞La Presse誌、1882年4月22日の記事。2013年2月20日閲覧。
- ^ Résultats d'hier, au Tremblay、フランスのLe Matin誌の記事(1944年4月18日付)。2013年2月22日閲覧。
- ^ 2023年グレフュール賞レーシングポスト、2023年5月1日閲覧
参考文献
[編集]- 『凱旋門賞の歴史(第三巻)1965-1982』A・フィッツジェラルド・著、草野純・訳、競馬国際交流協会・刊、1997
- 『フランス競馬百年史』ギイ・チボー・著、真田昌彦・訳、競馬国際交流協会・刊、2004