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イノモトソウ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イノモトソウ属
オオバノイノモトソウ
分類PPG I
: 植物界 Plantae
: 維管束植物門 Tracheophyta
亜門 : 大葉植物亜門 Euphyllophytina
: 大葉シダ綱 Polypodiopsida
亜綱 : 薄嚢シダ亜綱 Polypodiidae
: ウラボシ目 Polypodiales
亜目 : イノモトソウ亜目 Pteridineae
: イノモトソウ科 Pteridaceae
学名
Pteridaceae

イノモトソウ科(イノモトソウか、学名: Pteridaceae)は、シダ植物の科の一つ。胞子嚢群が脈に沿って生じ、包膜[注 1]を持たないのが基本的な特徴である。非常に多くの属種を含み、歴史的には細分や統合が繰り返されてきた群である。

特徴

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地上生、岩上生、着生など様々な形があり、また沈水生の種もある[2]

根茎は匍匐するもの、斜めに立つもの、直立するものがあり、鱗片と毛、あるいは毛のみを生じる。管状中心柱網状中心柱を持ち、腹背の区別のあるものとないものがある[2]

には胞子葉栄養葉の区別があるものとないものがあり、葉は単葉のもの、1回羽状のもの、あるいは更に切れ込むものや偽叉状に分岐し、葉軸の上面に溝があるものが多く、また羽軸に流れ込むものが多い[2]

胞子嚢群は葉の裏面の縁沿いに着くか、あるいは縁よりやや内側の葉脈上に着き、苞膜はないが、葉の縁が裏側に反り返って胞子嚢群を包むようになる、いわゆる偽苞膜を持つものもある[2]。胞子嚢の環帯は垂直方向に着き、胞子嚢当たりの胞子数は64個、あるいは32個が多い[2]

配偶体は多くのもので緑色で心臓形であるが、シシラン亜科では不定形になるものがある[2]

分類

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本科には50属以上、100を超える種が含まれており、薄嚢シダ類(普通のシダ類全部)の多様性のおよそ10%を占めている[3]

本科は今も大きな群であるが、以前にはそれ以上に広範な群を含むものであった。田川 (1962)にはこれが『系統的にまとまった群』であることを認めつつも内容の幅が広すぎるとし、その原因を共通の起源を持つ複数の群を一纏めにしたためと評し、それについては研究不足としつつ以下の科に分ける扱いを仮説的に示している[4]

これらの群は程なくそれぞれ独立の科として分離され、岩槻編 (1994)では本科について『属の範囲の設定は研究を要する』としつつも本科の属は「熱帯を中心に5-7属」としている[5]

しかし分子系統の進歩でそれらは見直されることになった。海老原 (2016)では従来の体系から見ると11もの科に跨がるものが含まれており、逆に従来はここに含めることが多かったカラクサシダ属(学名: Pleurosoriopsis)はウラボシ科に移されたものとなっている。ホウライシダ科は吸収され、他にも幾つかの科から本科に持ち込まれた属があり、他方でホングウシダ科タカワラビ科は現在もそれぞれ別科となっており、コバノイシカグマ科については独立科とはするも本科との関係については未解決とのこと[2]

例えば以前は別科とされたものが現在は本科に組み入れられているものにシシラン科のものがある。ホウライシダ属とかつてシシラン科とされていたもの(シシラン属タキミシダ属)については、形態的にははっきりと異なり、違いの定義が可能なものではあったが、分子系統の解析ではシシラン科のものがホウライシダ属の内群になる、との結果が再三報告されてきた経緯があり、情報量を増やした近年の解析の結果、この2つのグループが内群ではなく姉妹群を成す、との結果が認められるようになった[6]

分子系統の情報によると、本群はウラボシ目の系統樹の一番基部で分化した系統に含まれ、その中で最大のものとなっている[2]

下位分類

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海老原 (2016)には以下のものが示されている。

  • Cryptogrammoideaeリシリシノブ亜科
    • Coniogramme イワガネゼンマイ属、Cryptogramma リシリシノブ属、Liavea
  • Ceratopteridoideae ミズワラビ亜科
    • Acrostichum ミミモチシダ属、Ceratopteris ミズワラビ属
  • Pteridoideae イノモトソウ亜科
    • Actiniopteris アクティニオプテリス属、Angramma ハニカラクサ属、AustrogrammeCerosoraCosentiniaJamesoniaNephopterisOnychium タチシノブ属、Pityrogramma ギンシダ属、Pteris イノモトソウ属PterozoniumSyngrammaTaenitis
  • Cheilanthoideae エビガラシダ亜科
    • AdiantopsisArgyrochosmaAspidotisAstrolepisBommeriaCalciphilopterisCassebeeraCheilanthes エビガラシダ属、CheiloplectonDorypteris フウロシダ属、GagaHemionitis、イヌアミシダ属、MildellaMyriopterisNotholaena チャイロエビガラシダ属、ParaceterachParagymnopteris ケガワシダ属、Pellaea イヌウラジロシダ属、PentagrammaTrachypterisTryonella
  • Vittarioideae シシラン亜科
    • Adiantum ホウライシダ属AnanthacorusAnetiumAntrophyum タキミシダ属、Haplopteris シシラン属Monogramma イトスゲシダ属、PolyaeniumRadiovittarinaRheopterisScoliosorusVittarina

上記のうちで日本から知られているのは以下の10属、および外来種の1属がある。それぞれ代表種とともに示す。

脚注

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注釈

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  1. ^ シダ植物の胞子嚢群を包む膜状の器官[1]

出典

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  1. ^ 包膜・胞膜(ほうまく)”. コトバンク. DIGITALIO. 2023年9月21日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h 海老原 (2016), p. 373
  3. ^ Schuettpelz et al. (2007)
  4. ^ 田川 (1962), p. 47
  5. ^ 岩槻編 (1994), p. 131
  6. ^ 海老原 (2016), p. 386

参考文献

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  • 海老原淳『日本産シダ植物標準図鑑 I』学研プラス、2016年7月。ISBN 9784054053564 
  • 岩槻邦男 編『日本の野生植物・シダ』(4刷)平凡社、1994年。doi:10.51033/jjapbot.67_4_8718ISSN 0022-2062 
  • 田川基二『原色日本羊歯植物図鑑』(4刷)保育社、1962年。 
  • 鈴木武「イノモトソウ科」『植物の世界』 12巻、朝日新聞社〈朝日百科〉、1997年、43 - 44頁。 
  • Eric Schuettpelz et al. (2007), “A molecular phylogeny of the ferm family Pteridaceae: Assessing overall relationships and the affinities of previously unsampled genera.”, Molecular Phylogenetics and Evolution 44: pp. 1172–1185