ジョン・D・バロウ

J.D.バローから転送)

ジョン・デイヴィッド・バロウ(John David Barrow FRS[2]1952年11月29日 - 2020年9月26日)は、イギリスの宇宙論者、理論物理学者、数学者であり、通俗科学の記事も書くサイエンスライターである。

John D. Barrow
ジョン・D・バロウ
FRS
バロウ(2012年)
生誕 (1952-11-29) 1952年11月29日
イングランドの旗 イングランド ロンドン
死没 2020年9月26日(2020-09-26)(67歳没)
研究分野
研究機関
出身校
博士論文 Non-Uniform Cosmological Models (1977年)
博士課程
指導教員
デニス・シアマ[1]
博士課程
指導学生
主な受賞歴
プロジェクト:人物伝
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若年期と教育

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バロウは1952年11月29日ロンドンで生まれた。

1964年にウェンブリーのバーハム小学校、1971年にイーリング男子グラマースクールを卒業し、1974年にダラム大学ヴァン・ミルダート・カレッジ英語版で数学と物理学の学士号を取得した[3]。1977年にオックスフォード大学モードリン・カレッジデニス・シアマの指導の下で天体物理学の博士号(DPhil)を取得した[1]

キャリア

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1977年から1981年までオックスフォード大学クライスト・チャーチの下級研究講師を務めた。また、カリフォルニア大学バークレー校ミラー研究所英語版天文学博士研究員を2年間務めた。1981年にサセックス大学の教授兼天文学センター長に就任した。1999年にケンブリッジ大学の応用数学・理論物理学科教授に就任し、クレア・ホールのフェローとなった。グレシャム大学英語版で、2003年から2007年まで天文学のグレシャム教授職を、2008年から2011年まで幾何学のグレシャム教授職を務めた。同大学において2つのグレシャム教授職を経験したのはバロウが唯一である[4]

バロウは、1999年からケンブリッジ大学のミレニアム数学プロジェクト英語版(MMP)を指揮した。これは、数学とその応用についての理解・教育・学習を向上させるためのプログラムである。2006年、バッキンガム宮殿でエリザベス2世女王から教育功労賞・女王記念賞を授与された。

500以上の学術論文を発表するほか、フランク・ティプラーとの共著"The Anthropic Cosmological Principle"では、インテリジェント・デザイン目的論などの思想の歴史について、および天体物理学について論考している。また、1983年の『宇宙はいかに創られたか』(The Left Hand of Creation)を始めとする通俗科学の本も多数執筆している。バロウの著書は、ポール・ディラックアーサー・エディントンなどの偉大な物理学者の著作から多くの事実を集めるという形で、物理学の問題の現状を要約している。

現代宇宙論によって提起される哲学的問題に対するバロウのアプローチは、一般読者にも馴染みやすいものである。例えば、バロウはラッセルのパラドックスから派生した「グルーチョ・マルクス効果」を紹介した。ここで、グルーチョ・マルクスの「私を会員として受け入れるクラブには加盟したくない」という言葉を引用し、これを宇宙論の問題に当てはめて「理解できるほど単純な宇宙は、それを理解できる心を生み出すには単純すぎる」と述べた[5]

バロウはダウニング街10番地(イギリス首相官邸)、ウィンザー城バチカンで講演を行ったほか、一般市民にも公演を行った。

バロウはアマチュアの劇作家でもある[6]。バロウが脚本を書いた"Infinities"は2002年にミラノで初演され、「イタリア演劇界のアカデミー賞」とも称されるユビュ賞イタリア語版を受賞した[7]

賞と栄誉

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バロウ・スケール

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バロウは、ある文明が操作可能な「最小の」物に基づいて、その文明の技術水準と支配力を測定するバロウ・スケールを提唱した。これは、操作可能な「最大の」物に基づいて測定するカルダシェフ・スケールを補完するものである[10][11]

タイプ 説明
I 文明の助けがなくても利用できる、巨視的な構造の操作。
II 遺伝子と高分子の操作。
III 分子と分子結合の操作。
IV ナノテクノロジーと原子レベルの精密製造へのアクセス。個々の分子の操作。
V ピコテクノロジーとフェムトテクノロジーへのアクセス。
VI アトテクノロジー以下へのアクセス。素粒子の操作。
Ω オメガ・マイナス・エンジニアリング。時空間の基本構造の操作。

私生活

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バロウは合同改革派教会英語版の信者である。その教えについて、バロウは「伝統的な神学的宇宙観」であると説明している[12]

2020年9月26日、大腸癌により67歳で死去した[13]

著書

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日本語訳における訳書の名義は、「ジョン・D・バロウ」、「ジョン・バロウ」、「J.D.バロー」など、出版社ごとに異なる。

  • The Left Hand of Creation: The Origin and Evolution of the Expanding Universe, Barrow J., and Joseph Silk, Oxford UP, 1983
  • Between Inner Space and Outer Space: Essays on the Science, Art, and Philosophy of the Origin of the Universe
  • Impossibility: Limits of Science and the Science of Limits. ISBN 0-09-977211-6
  • Material Content of the Universe
  • Pi in the Sky: Counting, Thinking, and Being. Oxford University Press, 1992, ISBN 9780198539568
  • Science and Ultimate Reality: Quantum Theory, Cosmology and Complexity
  • Barrow, John D.; Tipler, Frank J. (1986). The Anthropic Cosmological Principle (1st ed.). Oxford University Press. ISBN 978-0-19-282147-8. LCCN 87-28148 [14]
  • The Artful Universe: The Cosmic Source of Human Creativity. OUP, 1995, ISBN 978-0198539964. Expanded 2005, ISBN 019280569X
  • The Book of Nothing: Vacuums, Voids, and the Latest Ideas about the Origins of the Universe, Pantheon, 2001, ISBN 0375420991
  • The Infinite Book: A Short Guide to the Boundless, Timeless and Endless, Pantheon Books, New York, 2005, ISBN 0375422277
  • The Origin of the Universe: To the Edge of Space and Time
  • The Universe That Discovered Itself
  • The Artful Universe Expanded 2005.
  • The World Within the World
  • Theories of Everything: The Quest for Ultimate Explanation
    • 日本語訳: 『万物理論―究極の説明を求めて』林一 訳、みすず書房、1999年12月 ISBN 4-622-03955-9
  • The Constants of Nature: The Numbers that Encode the Deepest Secrets of the Universe. 2003, ISBN 0375422218
  • New Theories of Everything, 2007.[15] Pantheon, ISBN 978-0192807212
  • Cosmic Imagery: Key Images in the History of Science. The Bodley Head, 2008, ISBN 978-0224075237
  • 100 Essential Things You Didn't Know You Didn't Know: Math Explains Your World. W. W. Norton, 2008, ISBN 0393070077
    • 日本語訳: 『数学でわかる100のこと いつも隣の列のほうが早く進むわけ』松浦俊輔・小野木明恵 訳、青土社、2009年7月 ISBN 978-4-7917-6489-1
  • The Book of Universes: Exploring the Limits of the Cosmos. W. W. Norton, 2011, ISBN 0393081214
    • 日本語訳: 『宇宙論大全 相対性理論から、ビッグバン、インフレーション、マルチバースへ』林一・林大 訳、青土社、2013年10月 ISBN 978-4-7917-6731-1
  • Mathletics: A Scientist Explains 100 Amazing Things About The World of Sports. W. W. Norton, 2012, ISBN 978-0393063417
  • 100 Essential Things You Didn't Know You Didn't Know About Maths and the Arts. Bodley Head, 2014, ISBN 978-1847922311
    • 日本語訳: 『数学を使えばうまくいく アート、デザインから投資まで数学でわかる100のこと』松浦俊輔・小野木明恵 訳、青土社、2016年11月 ISBN 978-4-7917-6956-8

編集・監修:

脚注

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  1. ^ a b c ジョン・D・バロウ - Mathematics Genealogy Project
  2. ^ Ellis, George F. R. (2022). “John David Barrow. 29 November 1952 – 26 September 2020”. Biographical Memoirs of Fellows of the Royal Society 73: 41–63. doi:10.1098/rsbm.2022.0007. 
  3. ^ Durham graduate wins $1M prize”. University of Durham Department of Physics (20 March 2006). 2007年11月24日閲覧。
  4. ^ Gresham College: New Gresham Chair of Geometry Archived 21 January 2009 at the Wayback Machine..
  5. ^ Barrow, John D. (1990). The World Within the World. Oxford: Oxford University Press. pp. 342–343. ISBN 0-19-286108-5. https://archive.org/details/worldwithinworld00barr/page/342 
  6. ^ Marcus de Sautoy (5 November 2003). “To infinity and beyond”. The Guardian. https://www.theguardian.com/stage/2003/nov/05/theatre.italy 
  7. ^ Premi Ubu 2002 Italian Theatre Prize
  8. ^ Lehr, Donald (2006年3月15日). “John Barrow wins 2006 Templeton Prize”. templetonprize.org. John Templeton Foundation. 2013年8月8日閲覧。
  9. ^ RAS honours leading astronomers and geophysicist”. RAS (8 January 2016). 20 July 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。9 January 2016閲覧。
  10. ^ Meinzer, Nina; Cloney, Ross (February 2018). “Life, the Universe and almost everything” (英語). Nature Physics 14 (2): 107–107. doi:10.1038/nphys4352. ISSN 1745-2481. https://www.nature.com/articles/nphys4352. 
  11. ^ SETI: Musings on the Barrow Scale | Centauri Dreams” (英語). www.centauri-dreams.org. 2024年1月29日閲覧。
  12. ^ Overbye, Dennis (16 March 2006). “Math Professor Wins a Coveted Religion Award”. The New York Times. 2007年11月24日閲覧。
  13. ^ “Morto John Barrow, cosmologo e divulgatore: aveva 67 anni” (イタリア語). ilmessaggero.it. (27 September 2020). https://www.ilmessaggero.it/scienza/addio_a_john_barrow_cosmologo_e_divulgatore_aveva_67_anni-5488614.html 27 September 2020閲覧。 
  14. ^ French edition: L'Homme et le Cosmos (in French)
  15. ^ earlier edition(1991) Theories of Everything: The Quest for Ultimate Explanation

外部リンク

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