DDG(X)
DDG(X)はアメリカ海軍が計画している次世代水上戦闘艦。既存のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦やタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の後継艦として計画されている[1][2][3]。
DDG(X) | |
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DDG(X)のコンセプトイメージ | |
基本情報 | |
艦種 | ミサイル駆逐艦 |
運用者 | アメリカ海軍 |
建造期間 | 2032年 - (予定) |
前級 |
タイコンデロガ級 (CG) アーレイ・バーク級 |
次級 | (最新) |
要目 | |
満載排水量 | 13,500トン |
機関方式 | 統合電力システム(IPS) |
兵装 |
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搭載機 |
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C4ISTAR |
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レーダー |
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来歴
編集アメリカ海軍のミサイル駆逐艦として、1994年度からはアーレイ・バーク級のフライトIIAの建造が開始されていたが、後継となるズムウォルト級の建造開始に伴い、2005年度で一度終了した[4]。本来はここで打ち止めになるはずだったが、ズムウォルト級の建造数削減に伴って、2010年度よりアーレイ・バーク級フライトIIAの建造が再開されており、これ以後の建造分は「フライトIIAリスタート」と称された[4]。また同年度で次世代ミサイル巡洋艦(CG(X))計画が中止されたことから、その代替も兼ねて、2016年度からはフライトIIIの建造も開始された[4]。
しかしアーレイ・バーク級はこのように発展を重ねてきたとはいっても、元々はタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦より安価な艦隊のワークホースとして計画されたという経緯もあって、重量やスペース、発電能力などの制約から、これ以上の発展は難しい状態となっていた[1][2]。その為、アーレイ・バーク級初期建造艦に加えて、タイコンデロガ級をも代替する艦として、FSC(将来水上戦闘艦)計画が立案された[5]。これはLSC(大型水上戦闘艦)計画に発展し、2021年6月にプログラムオフィスが設立されてDDG(X)計画となった[6][7]。2022年2月にはギブス&コックスが設計とエンジニアリングサポートを契約した[8]。
設計
編集排水量としては、アーレイ・バーク級よりは大きく、ズムウォルト級よりは小さい程度という目安が示されている[1]。ただしDDG(X)では、開発リスクを低減するため、将来の要求に対応できるだけのポテンシャルを持たせた新設計の船体に、アーレイ・バーク級フライトIIIの装備を組み合わせた状態で建造を開始したのち、漸進的に、兵装の更新や追加、場合によっては船体への追加区画の挿入などといった能力強化を図っていく構想となっており[2]、後の建造艦では排水量が増大する可能性がある[1]。またズムウォルト級では陸上試験施設での試験・検証・熟成を省いたことも一因となってシステム開発が難航した反省から、DDG(X)では詳細設計に入る前に陸上試験を実施する方針となっている[1]。
機関には、ズムウォルト級と同様の統合電気推進(IPS)を導入する[1][2]。これは、DDG(X)では航続距離やオンステーション時間の延伸、効率改善による兵站支援面の負荷軽減とともに、搭載装備の消費電力増大への対応も求められたためであった[1][2]。主機については、ズムウォルト級に加えて、コロンビア級原子力潜水艦で原子力ターボ・エレクトリック方式を導入した際の経験も活用される[1][2]。
装備
編集上記の通り、DDG(X)計画艦では、当初はアーレイ・バーク級フライトIIIを元にした装備を搭載していく予定となっている[1][2]。主要な武器システムはイージスシステム(AWS)ベースライン10で、その中核となる多機能レーダーはAN/SPY-6(V)1 AMDR(Air and Missile Defense Radar)が搭載される[1][2]。ただしここで搭載されるものは、送受信モジュールの集合体であるRMA(Radar Modular Assembly)を37個組み合わせた14フィート型が予定されているが、将来的にはRMAを57個に増した18フィート型へのスケールアップを視野に入れている[1][2]。また低空警戒・対水上レーダーも、当初は現用のAN/SPQ-9Bを予定しているが、2022年より計画が開始されたFXR(Future X-band Radar)の将来装備も検討されている[1][2]。
各種ミサイルなどを収容するVLSとしては、当初は既に実績が豊富なMk.41を搭載する[1][2]。ただし将来的に、超高速の共通極超音速滑空体(C-HGB)を弾頭とする長射程の艦対艦ミサイルとして開発中のCPS(Conventional Prompt Strike)を搭載できるよう、艦首側のMk.41(32セル分)を、より大型の新型VLS(12セル)に換装することも検討されている[1][2]。ロッキード・マーティン社では、同社のMk.41とは別系統の大型VLSとしてG-VLS(Growth-VLS)を開発しており、Mk.41と同大のキャニスターであれば、1セルにつき4発分を収容できる[9]。
また近接防御用としてRAM近接防空ミサイルの21連装発射機を2基搭載する予定だが、これも将来的には出力600キロワット級のレーザー兵器への換装が検討されている[1][2]。これに加えて、上部構造物前方には出力150キロワット級のレーザー兵器も追加する案もある[1][2]。艦砲は現用の62口径5インチ単装砲(Mk.45 mod.4)を踏襲する予定で、これは後日換装の案はない[1][2]。
脚注
編集出典
編集- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 井上 2022a.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 井上 2022b.
- ^ 「米海軍 次世代イージス艦「DDG(X)」のコンセプトを発表 2028年建造開始を予定」『乗りものニュース』メディア・ヴァーグ、2022年1月13日。2022年5月15日閲覧。
- ^ a b c 泉 2012.
- ^ “Navy Makes Plans for New Destroyer for 2030s”. Military.com. (2014年4月9日) 2022年5月16日閲覧。
- ^ “Destroyers Maxed Out, Navy Looks To New Hulls: Power For Radars & Lasers”. BREAKING DEFENSE (2018年7月11日). 2022年5月15日閲覧。
- ^ “US Navy creates DDG(X) program office after years of delays for large combatant replacement”. DefenseNews (2021年6月5日). 2022年5月16日閲覧。
- ^ “USN enlists Gibbs & Cox for DDG(X) design and engineering support”. SHEPHARD (2022年2月18日). 2022年5月16日閲覧。
- ^ Lariosa, Aaron-Matthew (2023年4月14日). “Lockheed Martin Developing New, Larger VLS for DDG(X)”. NavalNews
参考文献
編集- 泉徹「注目のフライトIIIはこんなフネ!?」『世界の艦船』第769号、海人社、78-83頁、2012年11月。 NAID 40019440577。
- 井上孝司「米海軍の新型水上戦闘艦DDG(X)」『世界の艦船』第969号、海人社、110-113頁、2022年4月 (2022a)。CRID 1520291856320444544。
- 井上孝司「ミサイル駆逐艦DDG(X) (注目の米新型軍艦ラインナップ)」『世界の艦船』第975号、海人社、90-93頁、2022年7月 (2022b)。CRID 1520010997613818752。
関連項目
編集- コンステレーション級ミサイルフリゲート - 本級より前に開始された次期ミサイル・フリゲート計画