Rocket Lakeマイクロプロセッサ
Rocket Lake(ロケットレイク)とは、インテルによって開発されたマイクロプロセッサである。2021年3月16日に正式発表され[1]、第11世代Intel Coreプロセッサとして製品化された[2]。
生産時期 | 2021年3月から |
---|---|
生産者 | インテル |
プロセスルール | 14nm |
アーキテクチャ | x64 |
マイクロアーキテクチャ | Cypress Cove |
命令セット | x86-64, Intel 64 |
コア数 |
4から8 (スレッド数:4から16) |
ソケット | LGA1200 |
前世代プロセッサ | Comet Lake |
次世代プロセッサ | Alder Lake |
L1キャッシュ |
コアあたり80KB (命令32KB, データ48KB) |
L2キャッシュ | コアあたり512KB |
L3キャッシュ | コアあたり最大2MB |
GPU | UHD Graphics |
ブランド名 |
Core i9 Core i7 Core i5 Xeon |
概要
編集高い動作周波数を持つ14nmプロセスのマイクロプロセッサとして、同じ14nmプロセスのComet Lake(第10世代)の後継として用意された。当時10nmプロセスでは動作周波数を上げることが難しかった。
高い動作周波数、IPCの増強、ピンやソケットの大型化、Cypress Coveマイクロアーキテクチャ採用などによる性能増強が図られ、シングルスレッドの性能は顕著に向上した。
反面、iGPU・リングバス・ソケット形状維持のためにコア数が減りマルチスレッド性能が低下し、また製造プロセスが改善されてないため消費電力が大幅に増加した[3](11900Kなどの第11世代 Core i9シリーズと10900Kなどの10世代 Core i9シリーズとの比較)。
特徴
編集- 14nm プロセス
- 新アーキテクチャ Cypress Cove (Sunny Coveを14nm プロセスにバックポートしたもの[4])
- ソケットLGA1200
- 最大DDR4-3200メモリー
- Intel UHD Graphics 750、730
- Intel H470、Z490、500シリーズのチップセットに対応
- 全てハイパースレッディングに対応
- Intel Turbo Boost Max Technology 3.0 (i7、i9、Xeonのみ。その他は2.0に対応。)
- Adaptive Boost Technology (i9 11900K、KFのみ)
- USB 3.2 Gen2×2 (20Gbps)
プロセスルール
編集プロセスルールのみCoffee Lakeから最適化がされていない。
プロセッサのコードネーム | プロセスルールの名称 |
---|---|
Broadwell Skylake |
14nm |
Kaby Lake Kaby Lake Refresh Amber Lake |
14nm |
Coffee Lake Coffee Lake Refresh Whiskey Lake Comet Lake Rocket Lake |
14nm |
Cypress Coveマイクロアーキテクチャ
編集概要
編集Cypress CoveはSunny Coveを14nm にバックポートしたものである。先述もしたが、10nmプロセスの遅延により、14nm プロセスでの立ち上げをせざるを得なくなった。10nmプロセスの立ち上げが遅れたのはIce Lake発売時のインテルの10nmプロセスは、まだ14nmほどの動作周波数を達成できなかったからである[5][6]。 Rocket Lake-Sを10nmプロセスでローンチしようとするとIntel 7(旧称: 10nm Enhanced SuperFin[7])を使用することになるが、当時は量産されていなかった。量産を待つとロードマップにさらなる遅れが生じ、その隙にRyzenにシェアを奪われかねないため[5]、仕方なく量産体制に入っていたIce Lakeを14nmにバックポートしRocket Lakeとしてローンチすることになった[8]。
特徴
編集— 大原雄介、ASCII.jp:Rocket Lakeが14nmプロセスを採用した本当の理由 インテル CPUロードマップ
- Skylakeマイクロアーキテクチャと比べ動作クロックあたりの命令実行数(IPC)が約19%向上
- Out-of-Order実行のために必要なバッファ類を増やし、より同時に多数の命令をIn-Flight状態におけるようにした
- 命令デコード幅を4 x86命令→5 x86命令に、命令発行(microOp)を8命令/サイクルから10命令/サイクルに拡張
- AVX512命令をサポート
- AES-NI命令のピークスループットを2倍に拡大
- Rep Move Strings命令の高速化
- L1データキャッシュを32KB→48KBに拡大
- ロードの際の実効レイテンシーを削減
- Data L1へのストアの発行を1回/サイクルから2回/サイクルに強化
- データプリフェッチの機能を強化
- L2 TLBを拡大
- μOpキャッシュの容量を拡大
- 分岐予測機構を強化
- シングルスレッドモードにおけるLarge Page ITLBのサイズを倍増
- L2を大容量化(256KB→512KB)
製品一覧
編集デスクトップ向け
編集- マイクロアーキテクチャを変更しIPCを改善させたことにより、シングルスレッド性能も向上した[2]。
- B460、H410チップセットではRocket Lake-Sをサポートしない[9]。
- 全てのIntel 500 シリーズのチップセットとRocket Lake-Sの組み合わせにおいて、メモリのオーバークロックに対応。
- ソケットはLGA1200のまま据え置き。
- AVX 512に対応。
- Intel Deeplearning Boostに対応。
- Resizable BARに対応。
- CPU直結PCIeレーンはPCIe 4.0 20レーン
- Rocket Lake-S
- 対応ソケット: LGA1200
ブランド | 型番 | CPU | GPU | TDP (W) |
対応メモリ | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コア数 (スレッド数) |
クロック (GHz) | キャッシュ (MB) | 型番 | EU数 | クロック (MHz) | |||||||
定格 | ターボ | L2 | L3 | 定格 | ターボ | |||||||
Core i9 | 11900K | 8 (16) | 3.5 | 5.1 | 4 | 16 | UHD 750 | 32 | 350 | 1300 | 125 | DDR4-3200 |
11900KF | — | |||||||||||
11900 | 2.5 | 5.0 | UHD 750 | 32 | 350 | 1300 | 65 | |||||
11900F | — | |||||||||||
11900T | 1.5 | 4.8 | UHD 750 | 32 | 350 | 1300 | 35 | |||||
Core i7 | 11700K | 3.6 | 4.9 | 125 | ||||||||
11700KF | — | |||||||||||
11700 | 2.5 | 4.8 | UHD 750 | 32 | 350 | 1300 | 65 | |||||
11700F | — | |||||||||||
11700T | 1.4 | 4.5 | UHD 750 | 32 | 350 | 1300 | 35 | |||||
Core i5 | 11600K | 6 (12) | 3.9 | 4.9 | 3 | 12 | 125 | |||||
11600KF | — | |||||||||||
11600 | 2.8 | 4.8 | UHD 750 | 32 | 350 | 1300 | 65 | |||||
11600T | 1.7 | 4.1 | 35 | |||||||||
11500 | 2.7 | 4.6 | 65 | |||||||||
11500T | 1.5 | 3.9 | 1200 | 35 | ||||||||
11400 | 2.6 | 4.4 | UHD 730 | 24 | 1300 | 65 | ||||||
11400F | — | |||||||||||
11400T | 1.3 | 3.7 | UHD 730 | 24 | 350 | 1200 | 35 |
サーバー向け
編集- XeonはW580、Q570チップセットのみの対応
- Rocket Lake-S
- 対応ソケット: LGA1200
ブランド | 型番 | CPU | GPU | TDP (W) |
対応メモリ | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コア数 (スレッド数) |
クロック (GHz) | キャッシュ (MB) | 型番 | EU数 | クロック (MHz) | |||||||
定格 | ターボ | L2 | L3 | 定格 | ターボ | |||||||
Xeon | W-1390P | 8 (16) | 3.5 | 5.1 | 4 | 16 | UHD P750 | 32 | 350 | 1300 | 125 | DDR4-3200 |
W-1370P | 3.6 | |||||||||||
W-1390 | 2.8 | 5.0 | 80 | |||||||||
W-1370 | 2.9 | |||||||||||
W-1390T | 1.5 | 4.8 | 1200 | 35 | ||||||||
W-1350P | 6 (12) | 4.0 | 5.1 | 3 | 12 | 1300 | 125 | |||||
W-1350 | 3.3 | 5.0 | 80 |
ブランド | 型番 | CPU | GPU | TDP (W) |
対応メモリ | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コア数 (スレッド数) |
クロック (GHz) | キャッシュ (MB) | 型番 | EU数 | クロック (MHz) | |||||||
定格 | ターボ | L2 | L3 | 定格 | ターボ | |||||||
Xeon | E-2388G | 8 (16) | 3.2 | 5.1 | 4 | 16 | UHD P750 | 32 | 350 | 1300 | 95 | DDR4-3200 |
E-2378G | 2.8 | 80 | ||||||||||
E-2378 | 2.6 | 4.8 | — | 65 | ||||||||
E-2386G | 6 (12) | 3.5 | 5.1 | 3 | 12 | UHD P750 | 32 | 350 | 1300 | 95 | ||
E-2356G | 3.2 | 5.0 | 80 | |||||||||
E-2336 | 2.9 | 4.8 | — | 65 | ||||||||
E-2374G | 4 (8) | 3.7 | 5.0 | 2 | 8 | UHD P750 | 32 | 350 | 1300 | 80 | ||
E-2334 | 3.4 | 4.8 | — | 65 | ||||||||
E-2324G | 4 (4) | 3.1 | 4.6 | UHD P750 | 32 | 350 | 1300 | |||||
E-2314 | 2.8 | 4.5 | — |
脚注
編集- ^ Rocket Lake-Sこと第11世代Coreデスクトップ・プロセッサが正式発表 - PC Watch.2021年4月3日閲覧。
- ^ a b “アーキテクチャの刷新でライバルとの差は埋まるのか。Intel「Core i9-11900K」検証”. エルミタージュ秋葉原. 2021年4月3日閲覧。
- ^ アーキテクチャの刷新でライバルとの差は埋まるのか。Intel「Core i9-11900K」検証 9/9 - エルミタージュ秋葉原.2021年4月3日閲覧。
- ^ Intel、Rocket Lake-Sの詳細を公開 - CPUコアは14nm版のSunny Cove相当 - マイナビニュース.2021年4月3日閲覧。
- ^ a b ASCII.jp:Rocket Lakeが14nmプロセスを採用した本当の理由 インテル CPUロードマップ (2/3) - ASCII.jp.2021年4月3日閲覧。
- ^ 後藤弘茂のWeekly海外ニュース Intelが10nmプロセスの「Ice Lake」を正式発表 - PC Watch.2021年4月3日閲覧。
- ^ 井上翔 (2021年7月27日09:15). “2025年までに「1.8nm相当」に――Intelが半導体生産のロードマップを説明:Intel 7からIntel 18Aまで -”. ITmedia PC USER. 2021年8月5日閲覧。
- ^ ASCII.jp:Rocket Lakeが14nmプロセスを採用した本当の理由 インテル CPUロードマップ (1/3) - ASCII.jp.2021年4月3日閲覧。
- ^ “BIOS Updates for Intel® 400 Series Chipset and 11th Gen Intel® Core™ Desktop Processor-Based System Builds”. Intel. 2021年4月3日閲覧。