風間孝

日本の社会学者、人権活動家

風間 孝(かざま たかし、1967年[1] - )は、日本の社会学者人権活動家中京大学教授。1990年代初め、同性愛者に対する公共施設宿泊拒否をめぐり、原告の一人として法廷闘争を行った(東京都青年の家事件)。パートナーシップ宣誓制度導入と同性婚の法整備に関する啓発活動を各地で行っている[2][3][4][5][6]

風間 孝
(かざま たかし)
人物情報
生誕 1967年(56 - 57歳)
群馬県
国籍 日本の旗 日本
出身校 中央大学文学部卒業
東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程退学
学問
研究分野 社会学クィア・スタディーズ[1]
研究機関 中京大学
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来歴

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群馬県出身[1]。両親は酒屋を営んでいた[7]。1986年、中央大学文学部に入学[8][9]。ノンセクトの学生運動に没頭する[10]

1987年3月31日、中曽根内閣エイズ予防法案を国会に提出した[11]。同年5月、風間は同法に反対する市民運動に興味を持ち、大学の友人と上野公園を訪れた。公園では複数の市民団体が集会を行い、ブースを出して散策者にパンフレットなどを配っていた。その中に前年に設立された団体「動くゲイとレズビアンの会」(現・アカー)もあった。活動を行っていたのは新美広と永田雅司であった。同性愛者であることを自覚していた風間は看板に掲げられた言葉に驚いた。そして新美と永田を見て、彼らが自分と同じ普通の風貌の男であることに感動を覚えたという[10]。しかしそこから風間は迷い続ける[12]。アカーに参加したのは1989年2月頃だった[9]

1990年2月11日、風間らアカーのメンバー18人は府中青年の家に宿泊した[13]。当時風間は大学の新聞学会に所属しており、新聞学会が府中青年の家でよく合宿をしていたことから、風間の提案でアカーも同施設で合宿をすることになった[9]。同年3月、中央大学卒業[9][8][14]。同年4月26日、都教育委員会は、アカーの2度目の宿泊利用の申し込みに対し、不承認を決定した。

1991年2月12日、府中青年の家の使用不承認をめぐり、アカーは東京都に対し損害賠償を求める訴訟を提起した[15]。訴状は風間が中心になって作られた[16]。メンバーのうち、永田雅司、風間孝、神田政典の3人が原告を務めた[17][18]。予備校教師をしながら裁判を戦う[19]。1994年3月、東京地裁は原告勝訴の判決を下し、1997年9月、東京高裁は都の控訴を棄却した[20]

2004年3月、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程を退学。同年4月、中京大学教養部の専任講師となる[21]

2010年3月、メンバーの河口和也と共著で『同性愛と異性愛』(岩波新書)を出版した。

2012年4月、中京大学国際教養学部教授に就任[21]

2020年、同性婚の合憲性を問う集団訴訟(「結婚の自由をすべての人に」訴訟)において、風間は原告側の主張を支持する立場の意見書を赤枝香奈子との連名で裁判所に提出。「同性愛を病理と見なす異性愛規範は1990年代に日本の精神医学そして府中青年の家裁判判決において明確に否定された」と述べた[5]。前述の河口も同年に意見書を提出し[22]、2021年から2024年にかけて出された複数の違憲判決に寄与した[23][24][25]

2021年2月、岐阜県は、有識者を招いてパートナーシップ宣誓制度を検討するワーキンググループを始動。風間や岐阜大学准教授の立石直子らがメンバーに加わった[2]。風間は岐阜県の「多様な性に関する懇話会」の座長を務めている[4]

同年3月から4月にかけて、当事者団体などから成る「愛知・岐阜にパートナーシップ制度を求める会」は性的少数者に対してアンケートを実施。同団体のメンバーである風間は同年6月4日、名古屋市で報告会を行った。団体は結果と要望書を愛知県に提出し、パートナーシップ制度の早期導入を訴えた[3]

著書

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共編著
  • キース・ヴィンセント、風間孝、河口和也『ゲイ・スタディーズ』青土社、1997年6月。ISBN 978-4791755554 
  • 風間孝、キース・ヴィンセント河口和也 編『実践するセクシュアリティ―同性愛・異性愛の政治学』動くゲイとレズビアンの会、1998年8月。ISBN 978-4901039024 
  • 風間孝、河口和也『同性愛と異性愛』岩波書店〈岩波新書〉、2010年3月20日。ISBN 978-4-00431235-2 
  • 風間孝、加治宏基、金敬黙、乙部由子、山口佐和子ほか 著、風間孝、加治宏基、金敬黙 編『教養としてのジェンダーと平和』法律文化社、2016年4月。ISBN 978-4589037565 
  • 風間孝、河口和也、守如子、赤枝香奈子『教養のためのセクシュアリティ・スタディーズ』法律文化社、2018年11月29日。ISBN 978-4589039705 
  • 中川重徳、風間孝、三橋順子、鈴木秀洋、石田京子、東由紀、石田若菜、長島佐恵子、谷口洋幸『LGBTをめぐる法と社会』日本加除出版、2019年10月。ISBN 978-4817848638 
  • 二宮周平、風間孝、海妻径子三成美保ほか 著、二宮周平、風間孝 編『家族の変容と法制度の再構築―ジェンダー/セクシュアリティ/子どもの視点から』法律文化社、2022年4月13日。ISBN 978-4589042002 
  • 風間孝、今野泰三、金敬黙、加治宏基、山口佐和子ほか 著、風間孝、今野泰三 編『教養としてのジェンダーと平和 Ⅱ』法律文化社、2022年4月27日。ISBN 978-4589042101 
訳書

脚注

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  1. ^ a b c 同性愛と異性愛 / 風間 孝/河口 和也【著】”. 紀伊國屋書店. 2023年6月20日閲覧。
  2. ^ a b 向川原悠吾、風間孝、立石直子 (2021年4月11日). “<美濃飛騨スペシャル>(70)パートナーシップ制度、県が検討”. 中日新聞. 2023年6月22日閲覧。
  3. ^ a b つらいのは「彼女は?」、制服、履歴書…性的少数者の声”. 朝日新聞 (2021年6月8日). 2023年6月22日閲覧。
  4. ^ a b 同性・事実婚カップル「パートナー」証交付検討、岐阜県 公営住宅や手術同意などで提示”. 朝日新聞 (2023年6月14日). 2023年6月22日閲覧。
  5. ^ a b 風間孝、赤枝香奈子 (2020年8月3日). “意見書”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年6月3日閲覧。
  6. ^ 人権講演会(LGBT講演会)を開催(7月2日)”. 各務原市 (2023年7月3日). 2023年7月3日閲覧。
  7. ^ 『井田真木子 著作撰集』, p. 257.
  8. ^ a b 連続公開講座「LGBTをめぐる法と社会」第一回「LGBTと人権—府中青年の家裁判を振り返る」を開催いたしました”. 中央大学 (2018年6月27日). 2023年6月22日閲覧。
  9. ^ a b c d 中央大学 (2018年7月2日). “中央大学 × LLAN 連続公開講座 第一回「LGBTと人権 府中青年の家事件を振り返る」(2018. 5. 12)”. YouTube. 2023年6月24日閲覧。
  10. ^ a b 『井田真木子 著作撰集』, pp. 293–294.
  11. ^ エイズ予防法を読む - 論稿集”. 諏訪の森法律事務所. 2023年6月20日閲覧。
  12. ^ 『井田真木子 著作撰集』, p. 304.
  13. ^ 『井田真木子 著作撰集』, pp. 310–311.
  14. ^ 風間孝 (2017年12月29日). “「性的指向」が初めて判決文に刻まれた府中青年の家事件を振り返る【SHIPにじいろキャビン10周年記念シンポジウム】”. ウェジー. 2023年6月22日閲覧。
  15. ^ 府中青年の家事件”. 立命館大学生存学研究所. 2023年6月14日閲覧。
  16. ^ 『井田真木子 著作撰集』, p. 324.
  17. ^ 東京地方裁判所 平成3年(ワ)1557号 判決”. 大判例. 2023年6月20日閲覧。
  18. ^ 『井田真木子 著作撰集』, p. 228.
  19. ^ 『井田真木子 著作撰集』, p. 185.
  20. ^ 君塚正臣 (2000年9月). “同性愛者に対する公共施設の宿泊拒否―東京都青年の家事件”. 有斐閣. 2023年6月20日閲覧。
  21. ^ a b 風間 孝”. researchmap. 2023年6月20日閲覧。
  22. ^ 河口和也 (2020年8月3日). “意見書”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年6月3日閲覧。
  23. ^ 遠山和宏 (2021年5月3日). “記者のこだわり:「同性愛は病気じゃない」 違憲判決の原点に30年前の「事件」”. 毎日新聞. 2023年6月26日閲覧。
  24. ^ 田中理知 (2023年5月30日). “同性婚不受理「個人の尊厳照らし、合理性欠く」 憲法24条違反指摘”. 毎日新聞. 2023年5月31日閲覧。
  25. ^ 石垣明真 (2024年3月14日). “同性婚を認めない規定は「違憲」 札幌高裁判決 初めての高裁判断:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2024年3月17日閲覧。

参考文献

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関連項目

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