風速

風として空気が移動する速さ

風速(ふうそく、: wind speed)とは、として空気が移動する速さのことである。 測定には風速計が使用される。

世界の平均風速。白っぽいほど平均風速が高く、青色が濃いほど低い。
上:1月、下:7月

概要

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気象庁などで通常使われる単位はm/s(いわゆる秒速)、国際的にはノット (kt) が用いられる。ただし近年、英語圏テレビ気象予報ニュースでは、視聴者の理解のため便宜上、キロメートル毎時で伝えることが一般的になっている。

日本国内において単に「風速」という場合、地上気象観測では、地上約10メートルの高さにおける10間の平均風速を表し、0.25ごとに更新される3秒(12サンプル)平均を瞬間風速という[注釈 1]。また、平均風速の最大値を最大風速、瞬間風速の最大値を最大瞬間風速という[注釈 2]。都市部では高層建築物が増えて、地上付近の正確な風の流れの測定が困難になっているため、地上数十メートル以上の高さに風速計が設置されている場合も多い。

風速を計りたくても風速計がない場合は、気象庁風力階級またはビューフォート風力階級などを基に、地物または海面の状況から判断した風力により風速を推定する。

ある時間内における最大の瞬間風速を平均風速で割った値のことを突風率といい、一般には1.5から2.0くらいである。また、風圧は風速の2乗に比例して大きくなることが知られている。

一般的に、陸上より海上のほうが平均風速が速く、逆に突風率は小さい。風速は、地球的に見た大気の状態から建造物による構造的な大気の乱れまでと幅広いスケールの気圧差に影響を受ける。

地球的に見た大気の状態に影響を受け、常に偏西風が吹くヨーロッパ西部は1年を通して一定の風速が保たれているといえる。より小さな例では高気圧や低気圧があり、台風などの熱帯低気圧が接近したときに観測される風速は比較的速い。より小さなものでは竜巻によるものが顕著な例で、100m/sを超える最大瞬間風速が観測されたこともある。また、高層建築物が林立する地域ではビル風が吹く。

風速による区分

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表の最左側の色彩:風速区分が一目で認識できるように、区分毎の色彩を付することが多い。

区分

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風力 地上10mの風速(以上) 台風の区分(最大風速)
0 0.0 m/s (0 knot)
1 0.3 m/s (1 knot)
2 1.6. m/s (4 knot)
3 3.4 m/s (7 knot)
5.5 m/s (11 knot)
5 8.0 m/s (17 knot)
6 10.8 m/s (22 knot)
7 13.9 m/s (28 knot)
8 17.2 m/s (34 knot)
9 20.8 m/s (41 knot) 台風
10 24.5 m/s (48 knot)
11 28.5 m/s (56 knot)
12 32.7 m/s (64 knot) 強い台風
43.8 m/s (85 knot) 非常に強い台風
54.1 m/s (105 knot) 猛烈な台風
1 kt = 0.514 m/s = 1.852 km/h = 緯度1分/h
1 m/s = 1.944 kt = 3.6 km/h

この表では「台風(北西太平洋で発生する熱帯低気圧の、気象庁基準の区分)」についてのみ風速の区分を示している。

スケール

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大西洋や北東太平洋のハリケーンの強度区分であるサファ・シンプソン・ハリケーン・スケールは、推定される最大風速によりハリケーンをカテゴリー1からカテゴリー5の5種類に区分している。竜巻の強度区分である藤田スケール(Fスケール)、改良藤田スケール(EFスケール)、TORROスケールも、推定される最大風速ごとに区分されている。

気象庁

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また、気象庁・各気象台の発表や天気予報で用いる風の強さの表現として、以下のようなものがある。

表現 定義
静穏 風速0.3m/s 未満 の風
やや強い風 10m/s 以上 15m/s 未満 の風
強い風 15m/s 以上 20m/s 未満 の風
非常に強い風 20m/s 以上30m/s 未満 の風
猛烈な風 風速30m/s 以上 または 最大瞬間風速50m/s 以上 の風

風力階級

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また、以下の風力階級も使われている[3]

名称 風力 秒速 (m/s) 状態
無風 0 0.0-1.4 煙が真直に上る
軟風 1 1.5-3.4 風のあることを感じる
和風 2 3.5-5.9 樹木の葉を動かす
疾風 3 6.0-9.9 樹木の小枝を動かす
強風 4 10.0-14.9 樹木の大枝を動かす
烈風 5 15.0-28.9 樹木の幹を動かす
颶風 6 29.0以上 樹木や家を倒す

風速の記録

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世界

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オクラホマシティとムーアの間
 
ワシントン山
 
バロー島
 
ポートマーティン
この節に登場する場所を記した地図。 (地球)
 
風速計を用いて熱帯低気圧の外側で計測された観測史上最大瞬間風速を記録したアメリカ合衆国のワシントン山

日本国内

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外部リンク

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脚注

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注釈

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  1. ^ 世界気象機関の基準。気象庁も2007年12月4日からこれを採用している。これまでの0.25秒ごとの単独の値をとる方式と比べて6 - 10%程度小さな値になるが、突風が建築物などに加える仕事の大きさをより正確に反映することができる。
  2. ^ NHK放送文化研究所は、「瞬間最大風速」は誤用であると回答している[1]。気象庁も、「瞬間最大風速」の使用を控え、「最大瞬間風速」に言い換えることとしている[2]

出典

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  1. ^ 豊島秀雄. “「最大瞬間風速」「瞬間最大風速」どちらが正しい?”. 日本放送協会. 2024年7月27日閲覧。
  2. ^ ”. 気象庁. 2024年7月27日閲覧。
  3. ^ 紙業提要 王子製紙 1938年
  4. ^ Center for Severe Weather Research (2006). "Doppler On Wheels". 2007年2月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年2月18日閲覧
  5. ^ a b World: Maximum Surface Wind Gust (3-Second)”. World Meteorological Organization. 30 December 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。30 December 2016閲覧。
  6. ^ a b Info note No.58 – World Record Wind Gust: 408 km/h”. World Meteorological Organization. 30 December 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。30 December 2016閲覧。
  7. ^ Lyons, Walter A (1997). The Handy Weather Answer Book (2nd ed.). Detroit, Michigan: Visible Ink press. ISBN 978-0-7876-1034-0. https://archive.org/details/handyweatheransw00lyon 

関連項目

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