複合糖質または複合糖鎖(Glycoconjugates)は、タンパク質ペプチド脂質、その他の化合物と共有結合している糖質糖鎖と呼ばれる)の分類群である[1]。複合糖質は、「糖鎖付加」と呼ばれるプロセスで形成される。

複合糖質は生物学において非常に重要な化合物であり、糖タンパク質糖ペプチドペプチドグリカン糖脂質配糖体リポ多糖等、多くの異なるカテゴリーから構成されている。これらは、細胞間認識英語版を含む細胞間相互作用英語版、細胞細胞外基質間相互作用、解毒プロセス等に関与している。

一般に、糖鎖部分は複合糖質の機能に不可欠な役割を果たしている。その顕著な例は、神経細胞接着分子(NCAM)や血漿タンパク質であり、糖鎖の微細構造が細胞との結合(または不結合)や循環血中の寿命を決定している。

重要な分子種であるDNA、RNAATPcAMPcGMPNADHNADPH補酵素A等は、何れも糖質を含んでいるが、一般的には糖質複合体とは見做されない。

糖鎖抗原をタンパク質の足場に共有結合させて複合糖質とすると、生体内で長期的な免疫反応が得られる[2]。その結果、糖鎖抗原に対する長期的な免疫記憶を誘導する事に成功した。1990年代から導入された複合糖質ワクチンは、インフルエンザ髄膜炎菌に対して有効な結果を齎した[3]

2021年には、糖鎖RNA(glycoRNA)が初めて発見された[4][5][6]

出典

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  1. ^ Glycoconjugates - MeSHアメリカ国立医学図書館・生命科学用語シソーラス(英語)
  2. ^ Yanagisawa, Makoto; Yu, Robert K (2007-07-01). “The expression and functions of glycoconjugates in neural stem cells”. Glycobiology 17 (7): 57R–74R. doi:10.1093/glycob/cwm018. ISSN 0959-6658. PMID 17307762. 
  3. ^ Jaurigue, Jonnel A.; Seeberger, Peter H. (12 June 2017). “Parasite Carbohydrate Vaccines”. Frontiers in Cellular and Infection Microbiology 7: 248. doi:10.3389/fcimb.2017.00248. PMC 5467010. PMID 28660174. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5467010/. 
  4. ^ Flynn, Ryan A.; Pedram, Kayvon; Malaker, Stacy A.; Batista, Pedro J.; Smith, Benjamin A. H.; Johnson, Alex G.; George, Benson M.; Majzoub, Karim et al. (2021-06-10). “Small RNAs are modified with N-glycans and displayed on the surface of living cells” (English). Cell 184 (12): 3109–3124.e22. doi:10.1016/j.cell.2021.04.023. ISSN 0092-8674. PMID 34004145. https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(21)00503-1. 
  5. ^ University, Stanford (2021年5月17日). “Stanford study reveals new biomolecule” (英語). Stanford News. 2021年8月31日閲覧。
  6. ^ Newly Discovered Glycosylated RNA Is All Over Cells: Study” (英語). The Scientist Magazine®. 2021年8月31日閲覧。