虫こぶ

寄生生物の寄生によって植物に生じるこぶ状の突起

虫こぶ(むしこぶ、虫瘤、: gall)は、植物組織が異常な発達を起こしてできるこぶ状の突起のこと。虫癭(ちゅうえい)ともいい、英語カナ読みのゴールが使われることもある。それらはさまざまな寄生生物寄生によって、植物体が異常な成長をすることで形成される。

イングリッシュオークQuercus robur )の先端に形成されたタマバチの一種(Andricus quercuscalicis)の虫こぶ(写真左上、塊状の部分)。
ケヤキの葉についたケヤキフシアブラムシの虫こぶ。
割った中にオレンジ色の虫体と質の綿が見える
クリの枝に発生したクリタマバチの虫こぶ(褐色の塊状の部分)。
タマバエの仲間によって形成されたハマナスの虫こぶ

菌類および細菌類によって異常発達したものは、菌癭(きんえい、菌えい)、菌瘤(きんこぶ)と呼び分ける場合がある[1]

概要

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虫こぶと呼ばれるものはに見られるほか、草類の樹木の細果実などに見られることもある。その名の通りに昆虫の寄生によって形成されるものが多いが、ダニ線虫によるものや、菌類によるもの、細菌によるものもある。それらはその原因によってダニえいや菌えい、細菌ならクラウンゴールなどと呼び分けることもあるが、すべてまとめて虫こぶという場合も多い。ゴールという語はそれらすべてに適用される。

植物以外にも適用される例もあり、たとえばパラシテラというカビは近縁のケカビに寄生するが、その際に菌糸の付着部分がふくれるのもゴールと呼ぶ。

数少ない虫こぶの図鑑として『日本原色 虫えい図鑑』がある。

その原因となった昆虫により、虫こぶ自体に「~フシ」という名前がつけられている。

でき方

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ハチ目タマバチ(Gall wasp)の仲間やハエ目タマバエの仲間、カイガラムシなどが産卵管を植物体に差し込み、内部に卵を産む。卵の状態ではそれほど目立たない虫こぶも、幼虫と成長していくうちに大きく膨れ上がり色づいて立派な虫こぶとなる。

生き物とのかかわり

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人間

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マタタビ、虫こぶ果の断面。

虫こぶは時には果樹などにもできる。害虫として作物寄生する昆虫が虫こぶを作るものの場合、表面に昆虫が露出していないので駆除がしづらい。さらに病気を持ち込むこともあり、タマバチやタマバエは厄介な害虫として君臨している。

役に立つ例もある。オークヌルデの虫こぶにはタンニンが豊富に含まれるため、それぞれ皮革のなめし剤やお歯黒の材料として用いられた。

マタタビ酒、マタタビ茶と呼ばれるものの原料(通称マタタビの実)はマタタビの生果ではなく、マタタビミタマバエによる「マタタビフクレフシ」という虫こぶとなった果実(虫えい果)である。マタタビ虫えい果は、漢方薬では木天蓼と呼ばれ、体を温め、滋養強壮、利尿などの効果があるとされる[2]

マコモの芽に黒穂菌英語版の一種であるUstilago esculenta英語版が感染すると、マコモダケという菌えいの可食部[3]やマコモズミという黒色の顔料となる[4]

ウスチラゴ属英語版の黒穂菌に感染したトウモロコシはトウモロコシ黒穂病英語版という菌えいができ、メキシコではトリュフ味のようなウイトラコチェという珍味として食された[5][6]

ギャラリー

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脚注

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  1. ^ 菌癭https://kotobank.jp/word/菌癭 
  2. ^ 荒瀬, 輝夫、熊谷, 真由子、内田, 泰三「マタタビ(Actinidia polygama)の虫えい果の採集時期について」2013年3月28日。 
  3. ^ Ustilago esculentahttps://kotobank.jp/word/Ustilago esculenta 
  4. ^ 岸本, 妙子、キシモト, タエコ、Shigenobu-Kishimoto, Taeko「わが国の食資源としてのマコモ(Zizania latifolia)」1996年。 
  5. ^ @EmbamexJP (2017年7月18日). "メキシコ大使館". X(旧Twitter)より2024年1月14日閲覧
  6. ^ Common smut on corn” (英語). extension.umn.edu(ミネソタ大学). 2024年1月14日閲覧。

参考文献

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関連項目

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