絶縁油
絶縁油(ぜつえんゆ)は、液状の絶縁体材料のひとつ。日本工業規格 (JIS C 2320) では電気絶縁油として詳細に規格化されている。
絶縁油は多くの電力機器の絶縁材料として用いられ、次のような特性を備えていることが求められる。
かつて上記要件をよく満たすPCB(ポリ塩化ビフェニル)が用いられたが、発がん性等の有毒性が指摘され近年は使用されることはない。
絶縁油の規格
編集JIS C 2320 において、絶縁油はその主成分によって大きく7種類に分類されていた。新しいJIS規格では国際電気標準会議 (IEC) 規格が取り入れられており、これまでの7種類の分類を種類A、追加されたIEC規格を種類Bとしている。
種類A
編集1種 | 鉱油を主成分とする絶縁油。油入コンデンサや油入ケーブルで用いられる1号、油入変圧器や油遮断器で用いられる2号、3号(寒冷地除く)、大容量高圧変圧器で用いられる4号がある。 |
---|---|
2種 | アルキルベンゼンを主成分とする絶縁油。油入コンデンサや油入ケーブルで用いられる。分枝鎖形の1号(低粘度)、2号(高粘度)、直鎖形の3号(低粘度)、4号(高粘度)がある。 |
3種 | ポリブテンを主成分とする絶縁油。油入コンデンサや油入ケーブルで用いられる。低粘度の1号、中粘度の2号、高粘度の3号がある。 |
4種 | アルキルナフタレンを主成分とする絶縁油。油入コンデンサで用いられる。低粘度の1号、高粘度の2号がある。 |
5種 | アルキルジフェニルアルカンを主成分とする絶縁油。油入コンデンサで用いられる。低粘度の1号、高粘度の2号がある。 |
6種 | シリコーン油を主成分とする絶縁油。油入変圧器で用いられる。 |
7種 | 1種絶縁油と2種絶縁油の混合絶縁油。油入コンデンサや油入ケーブルで用いられる1号、油入変圧器や油遮断器で用いられる2号、3号(寒冷地除く)、大容量高圧変圧器で用いられる4号がある。 |
種類B
編集1種 IEC | 鉱油を主成分とする絶縁油。油入ケーブルで用いられる1種 IEC 1号(クラス I、クラス II、クラス III、IEC60465:1988 に対応)、油入変圧器や油遮断器で用いられる1種 IEC 2号(クラス I、クラス II、クラス III、IEC60296:1982 に対応)、鉱油に酸化防止剤を添加した1種 IEC 2A号(クラス I A、クラス II A、クラス III A、IEC60296:1982 に対応)がある。 |
---|---|
2種 IEC | アルキルベンゼンを主成分とする絶縁油。油入コンデンサや油入ケーブルで用いられる。クラス I、クラス II、クラス III がある。IEC60867:1993 に対応する。 |
3種 IEC | ポリブテンを主成分とする絶縁油。油入コンデンサや油入ケーブルで用いられる。低粘度のクラス I、高粘度のクラス II(タイプ I、タイプ II)がある。IEC60963:1988 に対応する。 |
4種 IEC | アルキルナフタレンを主成分とする絶縁油。油入コンデンサで用いられる。IEC60867:1993 に対応する。 |
5種 IEC | 油入コンデンサで用いられる絶縁油。メチルポリアリルメタンを主成分とする5種 IEC 1号、アルキルジフェニルエタンを主成分とする5種 IEC 2号がある。IEC60867:1993 に対応する。 |
6種 IEC | シリコーン油を主成分とする絶縁油。油入変圧器で用いられる。IEC60836:1988 に対応する。 |
絶縁破壊
編集絶縁油中に不純物が混じっていた場合著しく絶縁能力が低下する。また、気泡が発生した場合も低下する。