百姓読み

偏や旁からの類推で漢字を間違った読み方をすること、憶測による誤読した読み方

百姓読み(ひゃくしょうよみ)、または慣用読み(かんようよみ)とは、漢字または(つくり)から類推して我流に読むこと[1]

概要

編集

音や訓の慣習によらず我流の読み方をすることとして、大正時代の書籍に記載があり[2]、誤読として扱われる。田舎者、また、情緒を解さない者をののしっていう語としての「百姓[3]から、漢字の読み方を知らない教養のない者が読んでしまうことによる。

例えば「垂涎(すいぜん)」を「延(えん)」の読みから類推して、「すいえん」と読んだり、「鍼」の読みは「しん」であるが、これを「感」から「かん」、「減」から「げん」などと読んでしまうこと。

百姓読みの例

編集
例語 本来の読み 百姓読み 解説
洗滌 せんでき せんじょう 百姓読みが誤りと意識されている例。
ただし、「同音の漢字による書きかえ」の「洗浄」は「せんじょう」の読み方に基づく。
矛盾 むじゅん ほことん[2] 大正時代の百姓読み例。
誤読ではなく故意だとの指摘あり。(ホコトン#誤読か故意かを参照)
絢爛 けんらん じゅんらん[2] 大正時代の百姓読み例。
口腔 こうこう[4] こうくう 百姓読みが誤りと意識されている例。
ただし、医学界では「口孔」と区別するために「こうくう」の読みを採用している[5][6]
矜持 きょうじ きんじ 百姓読みが誤りと意識されている例。
輸贏 しゅえい ゆえい 本来の読みと百姓読みが両立している例。
ただし、「運輸」「輸送」などでは「うんゆ」「ゆそう」の読みが一般化。
消耗 しょうこう しょうもう 百姓読みが慣用音として一般化した例[7]
ただし、「心神耗弱」は「しんしんこうじゃく」。
円匙 えんし えんぴ 百姓読みが専門用語として定着した例。
輸入 しゅにゅう ゆにゅう
輸出 しゅしゅつ ゆしゅつ
漏洩 ろうせつ ろうえい
捏造 でつぞう ねつぞう
稟議 ひんぎ りんぎ

引用

編集
  1. ^ 日本国語大辞典、第17巻(ひち-ほいん)、p.123、日本大辞典刊行会、小学館ISBN 978-4095220178、1976年4月15日第1版第2刷
  2. ^ a b c 松野又五郎(松野孤城)「第六章 重箱読みと湯桶読み百姓読み」『国語国文の常識』六合館、1925年、32頁。 オンライン版国立国会図書館デジタルコレクション)
    ただし、同書には「百姓」に関する差別的表現はなされていない。
  3. ^ 日本国語大辞典、第17巻(ひち-ほいん)、p.122、第4語義、日本大辞典刊行会、小学館ISBN 978-4095220178、1976年4月15日第1版第2刷
  4. ^ 公用文改善の趣旨徹底について p.3 最下段 「口腔(x)→口こう」、内閣閣甲第16号、内閣官房長官から各省庁次官宛て、1952年4月4日
  5. ^ ゆれる「腔」の読み 医学をめぐる漢字の不思議、漢字文化資料館、西嶋佑太郎、2019年12月10日、大修館書店
  6. ^ 西嶋佑太郎、「医学用語の考え方、使い方」、p.100 第4章医学用語各論 7.「腔」を「クウ」と読むのは間違いなのか、ISBN 978-4498148222中外医学社、2022-05-20
  7. ^ [1] 常用漢字表(2010年11月30日内閣告示)本表「モ-ヤ」のページ 「耗」の欄

関連項目

編集

外部リンク

編集