特異値
数学の線型代数学分野において、行列 A の特異値(とくいち、英: Singular values)とは、A の随伴行列 A* との積 AA* の固有値の非負の平方根のことである[1][2][要ページ番号]。
定義
編集以下、
- 行列 A の随伴行列を A*
- 行列 A の固有値を λi(A)
- 行列 A の特異値を σi(A)
と表記する。
冒頭部の定義を数学記号で書くと次のようになる。
特異値は m × n の行列に対して定義される(固有値は n × n の正方行列でのみ定義される)。
行列 AA* の性質
編集よって、
- すべての固有値 λ(AA*) および λ(A*A) は非負の実数 λ ≥ 0 となる。
- 半正定値平方根行列がただひとつだけ存在する。
特異値の性質
編集注意事項: 行列式やトレースなどは正方行列に対して定義されるので m × n の行列 A に直接適用してはならない。
- 特異値 σ(A) はすべて非負の実数 σ(A) ≥ 0
- [注釈 1]
- 行列 A が m = n の正規行列の場合には以下が成り立つ。
- 特異値は固有値の絶対値に等しい。
- 行列 A が m = n の半正定値対称行列の場合には以下が成り立つ。
- 特異値は固有値に等しい。
- の特異値を として、
と並べるとき、Banach代数の分野で知られた公式(Gelfand, 1941)[2][要ページ番号]:
の一般化として、
脚注
編集出典
編集注釈
編集参考文献
編集- 山本, 哲朗『数値解析入門』(増訂版)サイエンス社〈サイエンスライブラリ 現代数学への入門 14〉、2003年6月。ISBN 4-7819-1038-6。
- Grégoire Allaire, Sidi Mahmoud Kaber (Mar 1, 2007), Numerical Linear Algebra, Texts in Applied Mathematics, 55, Springer, pp. 271, doi:10.1007/978-0-387-68918-0, ISBN 978-0-387-68918-0
- Mandan Lal Mehta (Nov. 2004), Random Matrices (first edition 2004 ed.), Elsevier ltd., p. 284, ISBN 0-12-088409-7
- [CHAFAÏ] (Nov. 2009). “SINGULAR VALUES OF RANDOM MATRICES” (pdf). p. 2. 2013年3月4日閲覧。
- James Bisgard: "Analysis and Linear Algebra: The Singular Value Decomposition and Applications", AMS, ISBN 978-1-4704-6332-8 (2021).