時水
時水(ときみず)とは、福井県越前市味真野(あじまの)の山中[1]にある間歇冷泉。蓑脇の時水(みのわきのときみず)とも呼ばれる。
概説
編集古来、山仕事をする人たちの間で、湧き出る水が谷を流れ下る音[2]が3回聞こえるとお昼になると言われ、時水と呼ばれてきた。1992年、福井県の文化財(記念物・名勝)に指定[3]されている。「残したい日本の音風景100選」に選ばれた[4][5]。
味真野地区の蓑脇町大平山(標高611m)の北斜面中腹[5]、標高350m付近の小さな谷の中に湧く。湧き出しの有無が麓の里からも遠望できるよう、大きな時計のような装置が設置されている。谷奥に石灰岩の露出があり、石灰岩中の小空洞に地下水が一定量溜まると、サイフォンの原理によって間隔を置いて流出すると考えられている[5]。
時水を守る会[6]の川上一馬[7]による長年の観測によれば、常時は毎秒1ℓに満たない水が岩間の小穴から流れ出ているが、徐々に流量が増え始める。湧き出し開始から約8分後に最大流量に達するが、回ごとに流量が毎秒4ℓから7ℓ程度まで変わり、湧水量はおよそ4,000ℓ[8]。まれに毎秒10ℓを越える。その後は次第に流量を減じ、約30分でもとに戻る。間隔は不規則で、最短約20分から数時間、最大8時間の例があるという[9][10]。 湧き出しのたびの湧水量は約4,000ℓで回数は1日に8回から25回ほど[8]、平均18回前後[5](2017年時点)。
雨の多い時期には湧出の間隔が短く、少ない時期には長くなる傾向がある。
なお間歇泉(狭義)は熱水あるいはガスを多量に含んだ温水が突沸的に湧く型のものを、間歇冷泉はサイフォン構造によって地下水が湧くものを呼び、両者は湧出のメカニズムが全く異なる。間歇冷泉は国内に他に岡山県新見市の潮滝、広島県庄原市の弘法の一杯水、福岡県北九州市の満干の潮、熊本県球磨村の息の水の4ヶ所があるが、弘法の一杯水は1972年の豪雨以後、間歇性を失っている。
脚注
編集- ^ 「味真野のんびりお散歩:自然探訪(14)時水」(pdf)『味真野物語観光パンフ』、越前市、中面。
- ^ “ブルーシグナル 蓑脇の時水の音”. www.westjr.co.jp. JR西日本. 2021年5月10日閲覧。
- ^ “福井の文化財「時水」- 県指定名勝”. 福井県. 2015年12月12日閲覧。
- ^ 「北陸(49)福井県/越前市 蓑脇の時水、音風景の種類:陸水」『残したい日本の音風景100選』(pdf)環境省 (当時環境庁)、1996年(平成8年)、4, 14頁 。2021年5月10日閲覧。
- ^ a b c d 秘書広報課 (2017年2月23日). “残したい日本の音風景100選 「蓑脇の時水」”. 越前市ホームページ. 越前市. 2021年5月10日閲覧。
- ^ 越前市市民自治推進課(越前市公式ホームページ)「表2-11 緑化等に取り組んでいる活動団体の一覧」(pdf)『越前市緑の基本計画』、越前市、2008年(平成20年)3月、23頁。
- ^ “エントリーNO.125 越前市蓑脇町「神秘の泉 時水の守り人」”. 福井テレビ. 2019年12月15日閲覧。
- ^ a b 「暮らしに息づく伝統文化を探る:福井県小浜市 御食国若狭」『ブルーシグナル Blue Signal』第164巻1月号、JR西日本、2016年、2021年5月10日閲覧。
- ^ 川上一馬、藤井厚志「福井県武生市の間歇冷泉「時水」 付.味真野の洞窟とケイビング」『日本洞窟学会第25回大会秋吉台大会講演要旨』1999年。
- ^ 藤井厚志、川上一馬「福井県越前市のカルスト性間欠冷泉(時水)について」『大阪経済法科大学地域総合研究所紀要』第5号、2013年。
関連項目
編集外部リンク
編集- 味真野間歇冷泉調査委員会(時水を守る会) 越前市市民自治推進課(2014年7月18日年時点のアーカイブ)
- 蓑脇の時水 越前市観光協会ウェブサイト(アーカイブ)
- 蓑脇の時水 福井県庁環境政策課(アーカイブ)