施浴(せよく)とは、寺院などにおいて、貧しい人々や病人・囚人らを対象として浴室を開放して入浴を施すこと。施湯(せゆ/ほどこしゆ)・湯施行(ゆせぎょう)とも呼ばれる。

歴史

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仏教においては病を退けて福を招来するものとして入浴が奨励され、『仏説温室洗浴衆僧経』と呼ばれる経典も存在した。そのため、仏教伝来とともに寺院には湯屋・温室などと呼ばれる入浴施設が設置され、僧侶自身の入浴は勿論のこと、人々を入浴させた。施浴は布教や勧進活動の他にも、追善法要などの仏事の一環として開かれた例がある。奈良時代光明皇后[注釈 1]平安時代東大寺再建に尽くした永観重源が施浴を行った例が知られているほか、鎌倉時代真言律宗が社会事業の一環として施浴を積極的に行ったことが知られている。また、大分県別府市鉄輪温泉にある鉄輪むし湯渋の湯熱の湯は、一遍が施浴を行うために地獄(地熱地帯)を鎮め整備した温泉とされている。

脚注

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注釈

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  1. ^ 現在では光明皇后の施湯は平安時代後期に成立した伝承と考えられているが、その背景として12世紀に東大寺のような皇后ゆかりの寺院を含めて広く施湯が行われていたことに背景があると考えられている[1]

出典

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  1. ^ 岡野浩二「光明皇后湯施行譚の成立」本郷真紹(監修)山本崇・毛利憲一(編)『日本古代の国家・王権と宗教』2024年、法蔵館、P471ー494.

参考文献

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